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第14話 再会


4月17日午前8時。


朝食を済ませた俺はスマホを握る。


今日は一日中クロミナをやる気でいた。


家にも誰もいないし、勉強も昨日の時点で終わっている。

終わっていると言うか、今日の為に終わらせたと言った方がいいか。


とにかく、この日を待ち望んでいたのだ。


少し早いが俺はクロミナにログインする。


その状態のまま、別のチャットアプリで美咲に呼びかける。

今から出来ないか、と。


二つ返事で了承を受けると、すぐにクロミナにログインするとのことだった。

やはり美咲も昨日はクロミナをやっていたらしく、眠そうだった。


さて、美咲はどんな姿、レベルなのか。

俺は少しドキドキしていた。


中心都市「ラミナ」の中心街の噴水広場で集合とのことだったが、初めての場所なので少し迷った。


先にログインしていたのに待たせることになってしまった。


俺が着くと美咲はVC.を繋げた。

俺も了承した。


「戒斗〜!おはよ!」


俺も普通に挨拶をする。


姿は髪の毛は現実世界とあまり変わらない方までの黒髪ストレートで、聖職者のような格好をしていた。


格好からして回復系の魔法を使うのか?


レベルは120。

これなら問題無さそうだ。


俺がジロジロと格好を見ていたのに気づいたのか、

「えへへ〜可愛いでしょ!」

と、調子に乗ってきた。


「聖職者みたいな格好だな。回復系の魔法を使うのか?」


俺は先程考えていたことをそのまま言った。


「もぉー!可愛いって言ってくれてもいいんだぞ!」


美咲は少し怒ったような口調で話したがすぐに俺の質問に答えた。


「そうだよ。回復系の魔法使い!みんなの傷を癒すの!」


俺のメンバーにはなかったスキルを使うな。

美咲が入ってくれたらメンバーが助かる部分もあるな。


「レベルは比較的低いんだな」

「うん。だって高いとメンバーに入れてもらえなそうで。」


え?


「ど、どういうことだ?」

「つまり。このアカウントは二個目なの。もう1つのアカウントはレベルはとうに1000を超えてるよ。」

「まじかよ…」

「驚いた?」

「いや、納得はしたが、わざわざ気を使ってくれたのか?」

「まぁね。仲間外れは嫌だし。」


美咲は相当俺含めメンバーのことを考えているようだ。


考えているというか、ここまで行くと研究だな。

言い方からして俺のメンバー全員を調べ上げたような感じがするな。


ミズキのような感じではないな。

それよりももっと恐ろしい感じがするぞ。


「じゃあ話は早いな。」


俺は話をパーティメンバーの話に移した。


「知っての通り、俺のメンバーはあまり強くはない。戦闘系のクエストも未知の世界だ。だから、美咲、お前が俺らに教えてほしい。」

「案内役として働けってことね。」

「言い方悪いが、そうだな。働くというかお前なら心配ないと思うが気配りを頼みたい。」

「私の得意分野だよ。了解!」


よし、これで心配はないはずだ。


それにしてもレベル1000か。


「話はそれるが、美咲はいつからクロミナをやっているんだ?」

「えっとね。実装された日から、かな?」

「本当に?」

「うん。嘘じゃないよ。」


同じか…。


それでもレベル1000ということは、超上級者ってことだ。


レベル1000まで自力でいったんだもんな。


俺のような経験が少ないにも関わらずレベル、ステータスだけが高い人はある特定の時にしか役に立たない者としてクロミナ上級者からは敬遠されている。

そして上級者からは"放置民"と呼ばれているようだ。

つまり俺は放置民であり、美咲は上級者ということだ。

どうりで、上級者には今まであっていなかったわけだ、と最近になって気付いたのであった。



約束の時間である9時の5分前になった。


俺と美咲はログインしたまま待っていた。

するとメンバーがログインしたことを知らせる通知が届いた。


「わ、早いね」

「アイツらはいつも早いんだ。時間ぴったりに来てもいつも俺が遅刻扱いされる。」

「みんな楽しみなんだね」

「どうかな」


俺と美咲が話していると目の前に姿を現わす。


ツカサだ。

すぐさまVC.を繋げる。


「久しぶりです!カイトさん!」

「久しぶり、ツカサ。」


何日振りかに聞いたツカサのまだ声変わりの来ていない幼い可愛い声。


間違えなくツカサ本人だな。


「はじめまして。ツカサくん」


俺の隣で美咲がツカサに挨拶をする。


ツカサももじもじしながら負けじと声を出す。


「は、はじめまして!えっと…あの、美咲…さん」


裏でミズキが動いてくれたようだ。

状況の把握はできているようだ。


「うん!よろしくね」


美咲は笑顔で話す。


それを見てか、ツカサも少し明るい表情を見せた。


すると次に翼が入ってきた。

さて、翼は上手く動いてくれるか。


「久しぶりだな!カイト!ツカサ!」


俺とツカサは返事をする。


そして翼も美咲の存在に気付き、声をかける。


「お前が新メンバー?レベルも俺よりも低いじゃねぇか!」


美咲は笑顔のまま動かない。

俺とツカサに緊張が走った。


やはりアイツは人とまともなコミュニケーションができないのか!?


コミュ力の塊と中二病。


美咲は大丈夫か…?


「うん。レベルは低いけど経験値は高いから案内はできると思うよ。よろしくね」


美咲は平常心のようだ。

さすが人との会話に慣れてるな。


しかし、この中二は止まらなかった。


「ふん。新しく入るんだから敬語だ。俺の方が強いんだから下のお前は…」

「調子に乗るな、翼」

「カイト…い、いいじゃんかよ!」

「ダメだ。お前にはコミュニケーション能力が欠乏している。」

「そうだよ翼くん!初対面の人に敬語で話せなんて…失礼だよ!」


俺とツカサからのバッシングを受けた翼は小さくなった。


そして再び美咲の方を見る。

その視線に気づいた美咲は失礼発言を連発した翼に声をかける。


「今日から一緒によろしくね!私のことは美咲でいいから」


「あ、ああ。俺が悪かった。俺のことも翼でいいぜ…。」


一件落着だな。


翼もそういう年頃だから初対面の女子には少し大きく見られたい気持ちも生まれると思うが、我慢も必要だ。


ツカサ、翼はクリアだな。


ミズキは誰構わず話せると思うが、アレな一面があるからな…。


まぁ一番の問題はリナだな。

リナとはいつも通りの関係に戻ることができたが、彼女の感情を読み取ることができない。

まだ俺に対して絶望や裏切りを感じているかもしれない。

もう流石に無いとは思うが。


その後はミズキが合流して普通に打ち解けあっていた。


時刻は9時2分。


少し遅刻か。

遅れてリナがログインする。


初めは美咲とあまり話せていなかったが、ミズキの仲介もあって普通に打ち解けることができた。

その間全く俺に見向きをしなかった。



全員メンバーが揃った俺らは中心都市の街並みに沿って共通ギルドを目指して歩いていた。


よく考えたら男子3人女子3人の男女比1:1のグループができていた。

別にそれで変わることも無かったが、少しガールズトークが多くなった気がした。


「美咲ってカイトと付き合ってるの?」


ミズキからの唐突な話に一同揺れる。


「そうなんですか?!カイトさん!」


ツカサが俺の方を向く。

俺は無言のままでいた。


「うん。付き合ってるよ。」


ミズキとツカサと翼から声が上がる。


リナは足が止まった。

後ろを歩いていた俺はそれに気づく。


「リナ?どうした?」


俺の声に気づき、話し出す。


「カイト…久しぶり」

「今更かよ…なんでさっき話してくれなかった?」

「美咲と初めて会うから緊張してて…」

「そうか?本当にそれだけか?」

「うん…それよりもさ、カイト、美咲と付き合ってるの?」


すごい目でこちらを見てくる。


俺は真実を伝える。

学校では恋人のフリをしろといわれたがクロミナのなかで恋人のフリをしろとは言われてない。


「付き合ってないよ。美咲が勝手に言ってるだけだ。」

「本当に?」

「本当だよ。意外と話し合うんじゃないか?告白されたのも俺が強いのを知ったからだし。」

「え?そ、それって現実世界でカイトの正体を知ってるってこと?」

「そ、そうだね。って、よく俺と美咲が現実世界で知り合いって知ってるな」

「え、えあの…その…彼女って言うから現実世界の知り合いなのかなって思っただけだから!!」

「そうか。まぁいいけど。」


そんなこんなで俺らは共通ギルドに到着した。


今回実装された氷雪地帯に行ってみるそうだ。


そして、俺らの長い戦いが始まろうとしていた。


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