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第4話 始まり

4月6日、遂にこの日がやってきてしまった。


新たな生活を前に不安しかない俺はいい人に巡り会えますようにと、神頼みをしていた。


家から数分のところに位置する高校は立地条件としては悪くなかった。


でも俺の状態は悪かった。


昨日は考え詰めた結果あまり眠れなかった。


校門をくぐり、入学式を終えるとすぐさまクラス内で一人一人の自己紹介が始まる。


怖い、怖い!


それよりも気になるのは皆んなある言葉を口裏合わせて言っているのだ。


「私のクロミナのレベルは43です!」


とか、


「俺はあまり放置できてなくてレベル上がってないけどレベル50です!」


とか。


またか。


クロミナと放置?


なんだそれ。


城川(しろかわ) (かえで)。クロミナで魔王軍討伐の先鋭メンバーです!俺と一緒にクロミナしましょう!」


またでたよ新しい単語。


魔王軍だ?


普通はこういう奴は意味わかんねーこと言ってる奴いるよと避けられるものだと思っていたのだが、満場一致の大拍手だった。


マジで?


でも反応悪かった人もいたな。


黒川(くろかわ) 里奈(りな)です。私はクロミナで"聖剣"の存在を信じ、その存在を深く知らしめそれを持つ勇者の出現を心から待つ者です。」


終始何を言っているのかさっぱりだった。


あの女子はダメかな。


早速お友達作りに失敗したみたいだ。


おっと、次は俺の番だ。


普通に、いたって普通に。


「き、木下 戒斗です。全員初対面ですがよろしくお願いします。」


ちょっと言葉数少なかったかもしれないがまぁいい。


でも周りの反応が薄いな。


なんだこの学校。


全員の自己紹介が終わり、一旦休み時間になる。


先ほどの楓とかいう奴の周りには男女両方の人だかりができていた。


うわ、すげえな。


俺は目の前でグループが形成されるのを見た。


まぁその楓ってやつも顔も良くて笑顔を絶やさない系男子だからさぞモテるんでしょうねー。


まぁ興味ないけど。


すると俺の前にそいつがやって来た。


「ねぇ、木下君…だったかな?よろしく。僕は楓だ。君もクロミナをやっているかい?」


俺はとっさに返した。


「いや、やってない。」


するとその男は興味を失くしたかのようにふーん、と言うと静かに去っていった。


なんだアイツ。


まぁでも現段階ではアイツが今のこの教室の身分カーストは1位だな。


俺はまずクロミナというものを知らなければ生きていけないことを理解した。


思ってたのと高校って違うな。


俺はもっと勉強勉強な感じで自己紹介も好きな教科は〜とか、嫌いな教科は〜とかだと思っていたんだが。


時代の流れってやつだろうか。


早速、ついて行けそうになかった。




今日の日程は入学式だけだったため、午前中で学校は終わった。


帰ろうとしていると、現段階身分カースト1位の楓が教壇に立った。


「みんな、これからクロミナでみんなと繋がろうと思う。残ってくれないか?」


らしい。


ちょっと全体的に何言っているかわからないので俺の考えは抜かそう。


「さんせーい!」


女子からも声があがる。


俺は流れに身を投じた。


その際にクロミナというのはスマホのゲーム?だと知り、アプリストアでクロミナというものを調べた。


そしてすぐさまダウンロードした。


入れないと省かれそうな気までしたからだ。


もう教室全てがクロミナだった。


なんだこの学校。


インストールが終わった俺は楓に声をかけた。


「あの、楓君?これ教えてくれない?」


すると楓は一瞬酷く軽蔑したような目を見せたが、すぐさま笑顔で教えてくれた。


俺はクロミナというものを少し理解した。


クロミナが高校の自己紹介に入るのもわからないでもない気がした。


このクロミナが高校生活にとって必要なものだからだ。


俺はクロミナにログインする際に名前を「カイト」にした。


しかし、その名前はすでに使われているようでその名前ではログインできなかった。


仕方なく「カイト2026」で通った。


すると隣から声をかけられた。


「あなた…カイトっていう名前なんですね…」


急に声をかけられたものだからとても驚いた。


隣を見るとそこにはいきなり自己紹介で厨二発言をしたと思われる黒川 里奈がいた。


「あ、ああ、そうだが、?」


普通に返すと黒川はニヤリと笑って俺の耳元でヒソヒソと話した。


「実は、ここだけの話、私の父がクロミナのゲーム会社の管理人なんですよね。そこで私は父に"聖剣"をもっている人は誰なんだという話をしたんです。そして調べてもらった持っている人の名前はカイトだったんですよ…」


意味不明。


その言葉に限った。


まず聖剣って何?


でもクロミナの事をこれ以上知らないと思われたくなかったため話を繋げた。


「そうなんだ。でも俺始めたばっかでわかんない事だらけで。」


そういうと黒川はそうなんですね、と言い鞄を持って去っていった。


あれ、あの人この教室のクロミナに参加しなくていいのか?


疑問に思ったが、気にしないことにした。


その後すぐに楓率いるグループができた。


俺も入れてもらったが、クロミナのレベル=コミュ力みたいな所がある今ではレベル1のゴミは相手にされず、友達と呼べる友達も一人もできなかった。


予想外だ。


こんなはずじゃ…


帰り際に今日の6時からクロミナの中で遊ぶことになった。


もちろんクラス全員で。


黒川は除くが。


まぁ何はともあれグループに入ることはできた。


ここから広がって行けたらいいと思った。



しかし、それは幻想だった。

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