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第3話 交差する思い


話している途中はみんな誰も俺の話に介入してこなかった。


多分気を使ってくれていたのだろう。


俺が話を終わらせると翼が話が終わるのを待っていたかのように話した。


「じゃあカイトは中学校に行ってないのか?」


「ああ。俺は行ってない。」


「でも高校生なんでしょ?中学校の知識なしでよく高校生になれたわね」


ミズキが聞いてくる。


「実は一年前に病院から出てはいけないというドクターストップはかかっていたけど動いてはいけないというドクターストップは解除されたんだ。だからその1年で俺はひたすら勉強した。その結果俺は近くの高校になんとか入学できたってわけ。」


翼とツカサは表情を変えた。


尊敬の眼差しってやつか?


「す、すごいです!カイトさん!」


「1年で全部やったのかよ…じゃあ俺も受験の1年前から勉強始めようかな」


「やめなさい!翼!カイトは勉強しかできない場所だったから勉強したのよ?!あんたに1年中勉強ができる?」


リナが反論する。


あとリナ、


高校生になりたかった、ってのもあるぞ。


翼はあと一歩のところで道を間違えそうになっていた。


「それでさ、カイト。中学校からの友達がいないわけでしょ?高校で友達できた?」


ミズキが嫌なところを突いてくる。


リナも少し萎縮している。


「いや、友達はできてない。」


俺は恥ずかしながら言った。


するとリナも同類を見つけた喜びか、急に声を張り上げて


「私も!私も!友達いないの!」


あまり大声で言うことではないと思うんだが…。


俺はリナの態度にムッときたので少し事実を誇張して話をした。


「いや、1人だけ話してる女の子がいる。名前だしていいのかわからないけど黒川さんっていう女子でね、いつも1人なんだけど俺とは気があうみたいで…」


「そうなんだ〜良かったね、同類がいて。」


「おい、同類ってなんだよ!」


その時、俺はリナの様子を見て不審に思った。


「おい、リナ?どうした?」


リナは硬直している。


携帯の電源が切れたか?


でもVC.は繋がっている。


「リナさん?」


ツカサが呼びかけても返事がない。


俺の方をじっと見て動かない。


異様に感じた俺はリナの体を揺すぶってみる。


するとリナはびくんと体が震えた。


そして、やっと声が聞こえてきた。


「や、ち、近づかない…で…」


明らかおかしいリナの声にリナ以外の4人は不審に感じていた。


「リナ?どうかした?」


ミズキからの声も通らない。


ずっと顔を手で覆い隠したポーズをとり続けている。


「も、もうお昼だからまた後でね!」


リナは1人でにそそくさとシャットダウンしてしまった。


「お、おい!」


俺らの呼びかけにも聞く耳を立たず、帰ってしまった。


「まぁ、リナもそういう時期だからさ。少しそっとしておいてあげよう、ね?」


ミズキからの女仲間としての気遣いだろうか。


俺ら男は頷くことしかできなかった。


俺は残った3人に話した。


「まだ4人に話すことがある。また1時間後に集まれるか?」


現時刻は正午。


1時に再集合が決まった。


ミズキからリナに話しておくことになった。


それにしてもリナはどうしたのだろうか。


ミズキが言っていた女の子の触れてはいけないことなのだろうか。


翼同様リナにも"そういう年頃"というものがあるのだろうか。


俺は分からなかった。


いや、分からなくてもいいのだろうか。




私はいつからか、この気持ちに気付いていた。


それは初めて彼に出会った時は感じていなかったもの。


次第にその気持ちが明らかになってきて、いつのまにか彼を何の理由もなく信じるようになっていた。


彼は別に強くなんかない。


彼は飛び抜けた才能や、能力があるわけでもない。


ただ、私の好きな聖騎士様と重ねている自分がいた。


聖騎士様もこんな人だったらいいのになといつしか考えていた。


聖騎士様は誰よりも強く、気高く、高貴なイメージ。


もちろんそれは悪くない。


でもそれだと私は近くことすらできない。


振り向いても貰えない。


だから私は彼のような人柄であればいいのにと根拠のない妄想を考えていた。


でも、魔王迷宮のクエストの時。


私を助けるためにメンバーが来てくれた。


そして彼も…。


彼は私たちを助けるために私たちのことまで配慮して戦っていた。


それを全て曝け出し、姿を現した聖騎士様。


その時、私の妄想は全て実現した。


彼の正体を知ってから彼のことを直視できなくなっていた。


自分でも分かっていた。


私は彼が好きだった。


そしていつしかこんな人にゲームの中だけでなく、現実世界でも会ってみたいと思っていた。


そんな時、彼の口から"黒川さん"の名前が。


私はとても驚いた。


彼が通っている高校と同じ高校に通っていたからだ。


結論を言う。


私の名前は黒川里奈。


私は、同じクラスの同級生でクロミナ界最強の聖騎士、私の大切な仲間であるカイトのことが好きだ。


でも、この気持ちはどうすればいいのだろうか。


クロミナでの私は黒川里奈ではない。


カイトの仲間のリナだ。


でも学校では?


カイトのなかではリナ=黒川里奈ではない。


私が黒川里奈だってことは…


隠しておいた方がいいな。


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