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第1話 事実

第3章もお付き合いください


2026年4月9日11時。


俺はクエストを終え「ラミナ」に転送された。


「ラミナ」のプレイヤーが転送されるポイントには大きな人だかりができていた。


俺の正体が全プレイヤーに認知された。


この事実はどうしたって覆せない。


俺が今から嘘でしたー!なんて言ったところで約1000人以上の証言は覆らない。


俺が「カイト」の姿で現れたためか、周りからは大きな歓声が起こっていた。


どうやら運営はまだ仕事をしていないようだ。


まだこの「ラミナ」がバトルフィールドとされている。


周りの人の声が聞こえる。


今はこの歓声を耳に「ラミ=cafes」に向かわなければいけないみたいだ。


「助かったぞー!」


「ありがとう!」


「勇者様ー!」


コロシアムの中での歓声とは真逆だ。


俺は少しだけこの世界に失望した。


だが、それがこの世界のみならず、現実世界でも変わらないことなのだ。


「力が強い奴が一番強いんだな」


それは権力や金だけではない。


暴力も含まれる。


たとえ俺がこの世界で最高レベルだったとしても、魔王軍には効果は抜群だが、ほかの敵NPCなら他のプレイヤーが俺よりも優れていた可能性がだいぶある。


つまり、今回俺が勇者として奉られているのは単純な力だけではないということなのだ。


それを充分承知してもらいたいものなのだが、俺の周りで歓声を上げているプレイヤーには到底通らないだろうな。




誰にも見られずアカウント共有した俺は「ラミ=cafes」の扉の前に立っていた。


俺はどんな顔でみんなに話せばいい?


俺はどうやってみんなに謝ればいい?


俺は…どうすれば今まで通りみんなと話せる?


初めて俺とプレイしてくれた初めてできた仲間。


この人達のためなら俺は自分の本当の姿を見せても良かった。


初めからそのことに気づけていたら良かったのに…。


リナも言っていた。


みんなも…俺が最強でも振り向いてくれるのかな……。


俺は結論を出せないまま扉を開けた。




扉を開けると奥の方で4人が座っていた。


みんなで笑いながら話している。


俺はみんなと凄い遠くにいるように感じた。


こんな近くにいるのに…。


俺は心が押しつぶされそうになっていた。


その時、リナが俺の存在に気づいて手招きをしてくれた。


その姿に気づいたミズキとツカサと翼は俺の方を向いた。


俺はみんなの顔が見れなかった。


でも。


もう決めたんだ。


全てを話すと。


全て、ありのままを話すと。


俺はみんなの前に立った。


「みんな…ごめん!」


俺は深く頭を下げた。


「俺はみんなを騙していた…俺は…」


「頭あげろよ」


その声は翼だった。


「確かにお前が最強って知った時は裏切られたって気持ちも出たさ。」


そしてツカサも続いた。


「でも、僕はカイトさんがどんな姿をしていたとしても、どんな立場であったとしても、仲間のままです。」


ミズキも続いた。


「カイトは悪くないよ。私たちとの関係が崩れるかも、って思って隠していたんでしょ?それは確かに私たちは結果的には裏切られたって思うかもしれない。でも、それはカイトの優しさだよ。それに気づいた私たちは怒りも感じてないよ」


俺は一番言って欲しかった言葉を一番言って欲しかった人の口から言ってもらった…。


俺は今まで何を無駄な事を考えていたんだ。


「俺は、お前たちにありのままを話す。それでも俺と仲間でいてくれるか?」


その答えは即答だった。


「あたりまえだ!」


「もちろんです!」


「うん。」


リナも頷く。


俺は一度目を瞑り、全てを話し始めた。


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