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第15話 白ピョン


さて。


俺はやるべきことが残ってる。


クエストクリアと共に石化されたプレイヤーは「ラミナ」に転送された。


俺のことを全プレイヤーに知らしめるだろう。


だが、それでも構わない。


俺以外のメンバーはリナ含め全員転送させた。


あと残るのは俺だけ、ではない。


俺はアカウント共有をして、「カイト2027」になった。


そして話しかける。


「助かったよ。あんたがいなかったら俺は今頃洞窟の中で気絶してたよ」


俺の声がこの4階のコロシアムに響く。


「あんたが俺のこと、導いてくれてたんだろ?」


依然として答えはない。


しかし、俺は知っている。


俺を陰ながらサポートしてくれていたのは…。


「なぁ、白ピョン」


俺の肩に今も乗っているカエルだ。


「あんたは俺が聖騎士だってことは知ってたな?だから初めから俺にくっついて俺がピンチになったら助けてくれた。初めから俺にあの魔王を倒させるのが目的だったんだろ?そして、俺の存在を知れるのはクロミナ運営の人だけだ。俺の名前は知られてるからカイトという名前のプレイヤーを覗けば一目瞭然だ。」


カエルはピョンと、俺の肩から飛び降りた。


そして普通に話し始めたのである。


「お見事。私の策を見破るとは。そこに付け加えるとカイトくん…君の存在をこのクロミナ界に知らしめたかった、というのもあるね」


「趣味悪いな。」


「ああ、少し悪趣味だったかもね。でも君にはどうしてもこのクロミナ界に知らしめる必要があったのだ。」


そしてそのカエルは、カッと光り、人間の姿になった。


「自己紹介が遅れたな。私は『放置対戦☆クロスラミナ』運営会社社長の澤田和俊(さわだ かずとし)だ。」


このクロミナの世界に急にスーツ姿の白髪混じりの男が出てきたものだから驚いた。


この姿は運営の権限か。


「社長さんだったのか。無礼をお許しください。」


「いやいや、いい。騙していたのはこちらだ。無礼なのはこちらだよ。」


「ところで、なんで俺の存在をこのクロミナ界に知らしめる必要があったんですか?」


澤田社長は頷いて答えた。


「最近、クロミナの世界ではある異変が起こっているんだ。」


「異変?」


「あー、君たち一般のプレイヤーにはあまり関係のない話なのだけど、」


澤田社長は少し考えてから話を再開した。


「君は約5年間、このクロミナを放置してくれた。君ほど長い時間を放置した人間はこの世界に居なかった。間違いない。だが、君まではいかないが、4年ほど放置していたプレイヤーは結構いたんだ。」


「そうでしょうね。」


「うん。そのアカウントがここ最近に跡形もなく消滅している事件が起きているんだ。」


「それは事件ですか?ただ飽きてやめただけじゃ…?」


「それはどうかな?この2日間で約2000ものアカウントが一気に消滅したとすればどうする?」


「?!それは…事実なんですか?」


「嘘をつくメリットがないよ。本当だ。しかし、我々運営としても明らかおかしいこの状況に何かあるのではないかと思ってね、1つの4年放置アカウントを見ていたんだ。そしたらそのアカウント本人のアクセス無しに、そのアカウントのデータは全て別のアカウントに移動されていたんだ。」


「アカウントを移動?!そんなことできるわけ…」


「そこなんだよ、カイトくん。それはプレイヤーが絶対に使ってはいけない"チート"を使っている可能性が高いんだ。」


「ち、チート?!」


「しかし、今そいつの足跡は途絶え、我々としてもそのチーターを捕まえないとクロミナ運営が成り立たないのだよ」


「それってもしかして、今回のデータ改ざんも…」


「察しがいいね。そのチーターによって運営の魔王軍NPCAIの権限が奪われてね。えらい騒ぎになったよ。でも、君がその権限を持つ魔王を倒してくれた。権限は一応元に戻った。感謝するよ」


「いえ、大丈夫ですが…そのチーターがいるせいでこのクロミナの世界は滅茶苦茶にされてしまうんじゃ…?」


「そう、それが今一番我々運営も恐れていることなのだよ。だから、最後にカイトくん、君に伝えておく。今後、クロミナの世界が危険に晒されるかもしれない。その時、君を運営に呼ぶかもしれないということを覚えておいてくれ。」


「な、なんで俺なんですか?」


澤田社長は当然のように答えた。



「君がこの世界で最強だからだよ。」



俺は考えた。


運営に呼ばれるのはすごいことだが、チーターには勝ち目はないんじゃないかと。


でもそれは何も知らない話。


今話を持ちかけても何も起こらない話。


「最後に、聞いてもいいですか?」


俺が澤田社長に聞く。


「もちろんいいよ。」


「そのチーターの名前はわかるんですか?」


澤田社長は思い出しているかのように手を顎に乗せると答えた。



「本名はわからないんだけど、アカウント名はわかるよ。確か、『metalia』だよ」


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