第13話 カイトの決意
ツカサの叫び声だ。
あれは確実に。
俺よりも先に四階に着いたのか?!
だとすると危険だ。
ツカサ1人だと、魔王に勝てる確率は極めて低い!
たとえ道具【天使の怒り】を使ったところでそこらへんの悪魔なら倒せると思うが相手は魔王だ。
体力が10万以下なわけがない!
俺は走った。
階段を上って第4階に到着した。
そして扉を開ける。
そこには気絶したツカサと瀕死のミズキが。
なんだこれは…。
俺は唖然としていた。
そして周りのプレイヤーを見て驚いた。
なんでこいつらは石化されていない?
まさか、石化することがデータ改ざんの一歩ではないのか?
俺はプレイヤーの声に耳を傾ける。
「おいおい、頑張れよー」
「なに倒れてんだよ…」
「助けてくれよ」
「ま、所詮レベル100だぜ?」
「時間ねぇのによぉ」
その時。
俺の頭で何かが切れた。
「テメェら…」
俺の言葉に気づき、観客席にいるプレイヤーはこちらに向く。
「カイトッ!」
リナの声だ。
だが、次々と俺らに対する不平不満を俺らにぶつける。
「なんだよ、またレベル100かよ」
「今度はもっとマシな死に方しろよ」
「ちょっと、やめろよ」
………。
俺はこいつらが嫌いだ。
俺は人を見た目だけで判断する人は嫌いだ。
それはこのクロミナの世界でも同じことが言える。
レベルが低いから雑魚だと。
レベルが低いから頼りにならないと。
「腐ってんだよ…。」
俺は声を張り上げる。
「レベルだけで人を判断する奴は…俺が許さねぇ。そして、俺の大切な仲間を罵った奴も絶対許さない。」
その声に周りのプレイヤーが声を上げる。
「だったら勝ってみろよ!」
「助けてみろよ!」
俺は2人のところに向かう。
「ごめんな、遅れて。」
俺は魔王の前に立っていた。
残り時間はあと15分。
十分だ。
『散々言われてるが、その通りだな!お前はカスだ。』
「確かにな。力があるのにそれを自分の言い訳で使わず、結局仲間を失う。カスと言われて仕方ない。」
『自覚があるならいい。』
「力?カイト。力って?」
ツカサを回復させていたミズキから始めて聞いたVC.の声に驚いた。
「ミズキ…お前、声」
「わかってる!今は仕方ないでしょ。それより、力って?何かここを乗り切れる策でもあるの?」
俺は1つ深呼吸して比較的大きな声で呼びかける。
「リナ!ツカサ!そしてミズキ。今まで隠してたことがある。俺はこの力があったのに目の前でリナを救えなかった。だから俺は、あのときから俺は俺が憎かった!」
だから。
俺は!
『さっきから何わけわかんねーこと言ってんだ?仲間への遺言か?時間も無いしもう終わらせるぞ?』
「ああ。俺も終わらせる。」
俺はアカウント設定から[アカウント共有]を選択する。
画面に表示される。
俺は震えているミズキとツカサの方を見て笑った。
「大丈夫だ。」
俺はー…
コイツを!!
「アカウント共有!!」
[アカウントが共有されました。2秒後に別アカウント、「カイト」にアカウントが変更されます。]
俺の周りには光る何かが回っていた。
まるでもう一つの俺の体を転送しているみたいだ。
そして、画面が一瞬白くなる。
それは俺から放たれる光だ。
アカウント共有の仕様がアップデートで変わったのだろうか。
キンッ!
自分の剣が地面についた。
光が収まる。
俺は"聖騎士エグバート"だ。
「聖騎士、エグバート…様?」
リナは困惑していた。
目の前でカイトが聖騎士に、自分の憧れの人になったことに。
「カイト…?カイトなの?」
ミズキが俺に声をかける。
「ああ、俺だ。ミズキ。ツカサと一緒に離れてろ」
俺が笑うとミズキも泣きそうになりながらニコッと笑った。
ミズキが始めて俺に見せた笑顔だった。
「おい、なんだあのレベル!」
「HP表示がおかしいぞ?!」
周りから声が聞こえる。
俺はこの声に怯えていたのか。
俺はこの声のために、仲間を失うところだったのか。
『お、おい、なんだそのレベルは?LV.5203だと?ふ、ふざけるな!』
「覚悟しとけよ。お前は俺の大切な仲間を傷つけた。俺はお前を許さない。」
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