第12話 ツカサvs魔王
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「カイトさん?」
前を歩いていたカイトさんの姿が消える。
「ミズキさん、カイトさんどこに……」
僕が僕の後ろを歩いていたはずのミズキさんに話しかけても声がしないし、姿がない。
急に1人になった、絶望感。
VC.も繋がらない。
他のみんなは?
僕は白い煙のようなものを払いながら歩いていた。
するとそこには悪魔が立っていた。
僕は怖かった。
1人だということ。
そして、1人だと何もできないこと。
この2つに気づいてしまったから。
今の僕のレベルで悪魔は倒せない。
倒せるはずがない。
その時、急に目の前が真っ暗になったような感じがして、怖くなってその場から逃げ出した。
僕は走った。
一心不乱に。
そしたらいつのまにか白い煙の外に出れたみたいで、上の階に続く階段を発見した。
僕は残り時間が20分だということに気づき、急いで上の階に向かった。
もしかしたらカイトさんと他のみんなはもう4階にいるのかもしれない!
僕は急いで階段を登った。
そして、到着してすぐに扉を開けた。
そこは……。
大きなコロシアムのような造りになっていて、周りには観客がいた。
観客はNPCかな?
するとその時。
「ツカサ!逃げて!」
リナさん?!
突然僕の耳に流れ込んできたリナさんの声。
もしかしたらと思い、観客の方を見るとそれは1000人くらいのプレイヤーだった。
僕を見て「助けてくれー」とか「待ってたぞー」とかの声がする。
これは石化されたプレイヤーたちだ!
僕は確信した。
僕がリナさんを探していると前方から太い低い声がした。
『遅かったじゃねぇか…レベル70ちょいのお前が一番乗りとはなぁ!』
僕はびくんと驚いてしまった。
目の前には玉座に座った頭に角を生やした悪魔がいた。
あれが魔王?!
魔王の声を聞いたプレイヤーは僕のレベルを聞いて幻滅していた。
「なんだよ、助けを頼んで損したわ〜」
「大丈夫かー?」
「誰でもいいから助けてくれー!」
そんな声が飛び交っていた。
怖い…。
僕になんて…無理だ。
目の前には僕の倍の高さの敵。
僕の武器である"弓矢"も効かないだろう。
でも、諦めたらだめだ!
僕は何のためにここに来たんだ!
僕は…リナさんを!他のプレイヤーを助けに来たんじゃないか!
他のプレイヤーに何と言われたって構わない!
僕は…戦うんだ!
僕は弓を構え、矢を放った。
[風魔法=ブロー・アロー]
魔王めがけて一直線に矢は飛んでいく。
魔王は避けることもせず、矢は直撃した。
しかし、
『なんだ?ハエでも飛んでたか?』
コロシアムの中がしーんとなる。
まるで効いていないようだ。
わかってた。
僕は無力だって。
でも諦めたくない。
その時、僕の頭の中でカイトさんの言葉が再生される。
【なんで俺に聞く?ツカサの道具だろ?自分が使いたい時に使えよ。】
自分が…使いたい時…?
僕は無力だ。
僕の攻撃は全て無効化される。
でも、もう後悔はしたくない。
僕は……ーーー。
『そろそろ終わりにするぞ?』
魔王が急に目の前に現れる。
そして右手から魔法攻撃を繰り出そうとしている。
今しかない!!
「近くに来てくれて良かった。」
僕は笑っていた。
勝った!!
【天使の怒り】発動
ドドドド!!
僕の手にあった白い水晶玉からは何百、何千という白い棘が放出され、魔王の体を突き抜けた。
画面に表示されていた魔王のHPメーターはみるみる減っていく。
が。
減ったのは数センチ。
魔王の体力の一割程度だった。
僕は魔王が近づいてきていることに気づき、絶望していた。
『うぅーん…なかなかいい攻撃だったぜ…まんまと10万ダメージ食らっちまったよ…。だがな、よく覚えておけ。俺の体力は100万だ!』
ドッ!!
僕は魔王のパンチを一撃食らった。
「うわぁぁぁ!!」
倒れ込んだ僕の足は石化した。
気絶した。
しかし、その瞬間から100秒のカウントダウン表示が始まり、うっすらとだが画面がまだ見えていた。
僕は負けたのか。
周りからは非難の声が聞こえる。
「ツカサァァ!!」
リ…ナ…さん?
ああ、僕は幸せ者だなぁ。
こんなに思ってくれる人がいるなんて。
でも、僕は何にも役に立てなかった。
ここにいるプレイヤーの、期待にも答えられなかった。
僕は…無力だ。
すると画面の視界が変動した。
誰かによって起こされている?
それはミズキさんだった。
僕を復活させようとしてくれていた。
でも魔王が近くに…。
「やめて、ミズキ…さん。ミズキさんも死んじゃうよ…」
「私なんかどうだっていい!」
あれ?
ミズキさん…声?
VC.付けてる?
「なんで、私より先に気絶するのよ?!私が…守るのに…」
ミズキさんの目からは涙が流れていた。
ミズキさん…。
『もう2人とも死んでいいよ』
魔王からの声。
ミズキさんが僕をかばって魔王の攻撃を食らって、遠くの壁に打ち付けられた。
ミズキさん!!
「う、う」
ミズキさんはまだ気絶していないようだった。
よかった。
でも、瀕死の状態だ。
体力メーターが赤くなっている。
『ほぉ、よく耐えたな。まあ、今のは半分の力だったからなぁ』
魔王は不敵に笑った。
すでに自分の勝ちを確信しているような余裕に満ちた笑いだ。
ミズキさんはフラフラになりながらも僕に近づいて来てくれた。
剣を構えて。
「ミズキ!ツカサ!」
リナさんが僕らに向かって叫んでいるのがわかる。
みんな…本当にいい人だな。
もしもデータが改ざんされたとしても、たとえ1ヶ月でも1年でもこのゲームができなくなってしまったとしても、僕らはずっとメンバーだよ。
みんなはそうは思ってないかもしれないけど、僕は思ってるよ。
僕はこのグループでよかった。
このグループに出会えて、幸せだった。
魔王が近づいてくる。
悔いは…ない。
僕が諦めて目を瞑ったその時、後ろから扉の開く音がした。
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