第12話 5周年アニバーサリー
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簡単なものだな。
俺は光り輝く魔滅剣を振り下ろし、悪魔の腕を斬り落とす。
それはそうだ。
ステータスは最高レベル。
武器も魔王軍に対抗できる武器だ。
これ以上ない好条件である。
体中から力が漲っている。
剣術スキルもスキルマである。
負ける気がしないな。
俺は悪魔が4人の大切な仲間に攻撃をくらわそうとしているのを瞬時に理解し、安全な場所へ4人を抱え、移動させる。
「聖騎士…エグバート?」
リナの声にドキンとした。
ああ、そういえばリナの憧れの人だったな、聖騎士エグバートって。
しかし、俺は方針を既に決めている。
俺はカミングアウトをしない。
自ら正体を明かすようなこともしない。
俺は正体を隠し続ける。
リナのためにも。
このグループのためにも。
俺は、俺が聖騎士エグバートだということを隠す。
それが一番いい。
リナも今のグループが好きなようだしな。
聖騎士エグバートと天秤にかけるとどっちに傾くかは知らんが、とにかく俺が聖騎士エグバートだったら嫌だろ。
だから俺は隠し続ける。
それだけだ。
「聖騎士だ…!」
「なんだあのレベル!」
まずいな…少しだが周囲の目がある…。
しかしここで引き下がることはできない。
俺は試しに悪魔の攻撃を食らってみる。
ドッ!
俺の体力(HP)は702000。
悪魔の攻撃は2000だな。
たしかにレベル100くらいの冒険者ならワンパンだろう。
だが俺は倒れない。
攻撃のため悪魔が隙を作った。
今だ!
その時、魔滅剣が七色に光り始めた。
なんだこれは…。
すると後ろから感激したような声が聞こえる。
「あぁ…あれが、魔滅剣!魔物を倒すときに真の力を発揮するという…あぁ、なんて美しい光なの?」
リナ、説明ありがとう!
俺は剣のステータスを見る。
【魔滅剣シャイリアル】LV.6042
「この剣は騎士にのみ装備可能。この世界に一本の名剣であり、魔物を切り裂く力を持つ。剣自体も時と共に成長し、時間が経つにつれてステータスも上昇していく。攻撃力68214+50000/防御力32584/耐久値30425」
なんだこの攻撃力は…。
合計攻撃力118214だぞ?!
俺は剣を握りしめ、悪魔に斜めからの攻撃を喰らわせる!
グァァァァァ!
悪魔は叫んで
ボンッ
と黒い煙幕のようなものを出して消滅した。
意外とあっけない終わりだな。
いや、俺のせいか。
待て、今が逃げるチャンスじゃないか?!
悪魔がご丁寧に俺の逃げる道を作ってくれた。
俺は近くにあった民家に隠れ、再びシャットダウンし、アカウント共有で「カイト2027」に戻った。
すると何やら冒険者が集まってきた。
どうやら悪魔が出現した緊急クエストに駆り出されたらしい。
しかし冒険者の人の前に広がるのは枯れた花々と緊急クエスト完了のお知らせ。
そのお知らせの意味を理解できれば何者かが悪魔を倒したことまで繋げられるだろう。
冒険者達は一斉に雄叫びを上げた。
初めて冒険者が悪魔に勝ったからだ。
俺は4人の元へ向かう。
「悪い、遅れた…どうしたんだ?」
と、何も知らないように。
目を輝かせたリナが飛びついてくる。
「カイト!カイトカイトカイトカイト!聞いて!私、聖騎士エグバートに会ったの!」
この興奮は当分収まらないだろうな。
ドンドンと胸ぐらを叩かれた。
リナの手を振り払い俺は翼に頭を下げて謝った。
「悪かった、翼。間に合わなくて。」
すると翼は笑って
「まあ死んでたら許さなかったな!生きてたから一発殴るだけで許してやるよ」
と言った。
ジャ◯アンかよ。
ツカサもミズキも安心していた。
[何してたんだ、カイト。遅いぞ]
「よかった、みんな無事で!」
2人の声は正常だった。
よかったよかった。
するとその時。
空から大きな音がした。
ドン!
また悪魔か?
と思ったが違う。
花火が上がったのだ。
そしてそれと同時に枯れていた花々が綺麗に再生されていく。
ツカサはとても嬉しそうにしていた。
なんだ?
悪魔初討伐記念か?
俺が主役か?
などと思っていたが、違かった。
時計を見たリナは、あー!と大きな声を上げて俺含め4人の方を向いた。
「みんな!いつのまにか0時よ!4月8日、5周年よ!」
そう、俺らは0時まで気付かずクロミナをやっていたようだ。
日付が変わり、5周年の4月8日。
俺は複雑な気分だった。
心肺停止してから、今日で5年か。
周りからも歓声が聞こえる。
花火が立て続けに上がる。
俺以外の4人は花火に目を奪われていた。
5年が経ち、俺は変わった。
学校も、容姿も、境遇も、そして友達も。
全て変わった。
よかったことも悪いこともあった。
そのなかでも、とりわけ大きく変わった事がある。
それはクロミナが俺の知らないうちに世界的に人気なSNSアプリになっていたことなどではない。
俺が、
「放置ゲーを5年間放置したら最強になってた。」
ってことだ。
第1章 ー自覚編ー 完
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