第10話 お花畑の悲劇
最後まで見てくださると嬉しいです。
8時。
俺は再び4人がいる森林地帯「ガイア」のお花畑付近へ向かった。
するとすでに4人集まっており、俺を待っていてくれたようだ。
「悪い、遅れたな」
ほんとは8時ぴったりなんだけどな。
こいつらどんだけ楽しみにしてたんだ?
まぁいいが。
「遅いわよーカイト!」
「何してたんだよ!カイト!」
「今来たところなので、その、大丈夫です…」
[遅いぞ、カイト。]
4人からの一斉返信が来た。
みんな楽しそうで何よりだ。
「じゃあ!全員揃ったので、レッツゴー!」
リナの掛け声に俺と翼以外が答える。
「お、おー」
弱いが、可愛い声だ。
[おおおおおおおおおW(`0`)W]
ショタコンお姉さんは別の意味で声をあげてるみたいだ。
「ミズキさん、元気いいね」
急なツカサからの言葉にミズキは一瞬フリーズ。
その後なんとか態勢を立て直し、チャットを打った。
[元気よ]
いや、それだけかよ。
そう思ってたら俺に個人チャットが来る。
[ご馳走さまでした。]
何が?!
まったく、そういうことはグループチャットで言えって…
なんで俺に言うんだよ。
低レベルなクエストを早く終わらせたい気持ちが強い翼を先頭に俺らのグループはお花畑へと進む。
歩きながら俺ら5人は少し個人的な話をしていた。
「なぁリナ、じゃあお前はどういう男がタイプなんだよ」
翼からの質問。
「え、私?そんなの決まってるじゃない!最強の勇者様よ!」
翼とツカサの頭の上にははてなマークが乗っていた。
ミズキは小耳に挟んだことはあるようだ。
「聖剣を使いしクロミナ界最強の騎士!魔王軍を打ち倒し、この世界に光をもたらす指導者!ああ、私、彼になら抱かれてもいいわ…」
ここまでくるとキモいな。
翼は言った。
「お前、キモいな。」
ド直球だな、まったく。
だが、なぜか俺と翼はこういう時だけ話しが合う。
「はぁぁぁ?!あんた!厨二のくせに私の彼を侮辱するの?!」
いや、いつお前のものになったんだその彼は。
てか、そういえばその彼は俺なんだよ。
どうしよ。
ツカサはミズキに質問していた。
「ミズキさん…その"抱く"ってなに?」
流石に高校並みの知識は知らないよな。
さぁ、どうするミズキ。
あたふたと動揺していたが、チャットを打つためか動かなくなり、その後すぐにグループチャットに文字が表示された。
[抱きしめることよ。]
誤魔化した。
大学生だよな、アイツ。
いい歳こいてなにやってんだか。
まぁいいか。
すると今度はリナが話を振る。
「じゃあさ!ミズキはどういう男が好きなのよ?!」
まずい。
ミズキお姉さんのショタコンがバレる!
どう誤魔化すんだ?
それともいっそ告るか?
するとチャットが届く。
[可愛い人かな?]
なんだそのクエスチョンマークは!
語尾が違うぞ語尾が。
文を肯定文で作れ!
俺は心の中で全力でつっこんでいた。
全く…ある意味怖いグループだな、ここは。
そうこうしているうちにお花畑に着いた。
「うわぁ!きれいだなぁ!」
ツカサが珍しく声を上げる。
広大な土地に数100万本もの花々が咲き誇っている。
たしかにこれは美しい。
今回のクエストの内容は「黄色い花を50本採取せよ」というものだ。
簡単そうに聞こえるが、先程言った通りこの土地には数100万もの花が咲いている。
色も様々なのである。
そのため見つけることは簡単ではないのだ。
翼が渋々お花畑を歩いていると前方不注意、他のプレイヤーに当たってしまった。
ドンッ。
「あ、悪い、俺の…」
翼が謝ろうとして上げた声は遮られてしまう。
「なんだこのガキは?」
「偉そうだなぁ!ああ?!」
「レベル20ちょいのカス共が!」
お花畑が似合わない3人組のチンピラが翼に寄ってきた。
まずいな。
完全に喧嘩を売られている。
俺は知っている。
翼は口も悪いし、態度もでかい。
でもそれなりに周りを見て言葉を選んでいることを。
しかし、目の前の輩はそんなことは微塵も感じられなかった。
ただ、相手を罵倒するためだけに発された言葉だ。
まるでクラスの奴らみたいだな。
俺は1人でにそう思った。
相手のことを理解せず、理解している、自分より弱いと決めつけ、思い上がり、差別する。
俺はこのままではいけないと思った。
「ああ、たしかに今のは俺のメンバーが悪かった、それでいいだろ?」
俺はあくまでこちらが悪いことを認めた上で話をしようとした。
これで少しはまとまってくれると思ったんだが…。
「はあ?だったら謝れよ!土下座しろ!お前がやんねーならお前がやるか?」
そう言い俺の方を指差してくる。
コイツらのレベルは40。
俺らよりも強い。
俺はちらりと後ろを見た。
ツカサとリナが怖がっている。
ミズキは震えながらも剣を握ろうとしていた。
やはりこの世は強い奴が、1番強いんだな。
当たり前のことを考えていた。
三人衆からの土下座コールを耳に俺は土下座をしようとしていた。
翼のプライドが高いことは知っている。
だからここは俺がー…
膝を地面につけようとした、
次の瞬間!
ドーン!!
横から隕石でも落ちてきたんじゃないかと思われるほどの爆発音がした。
そしてその音の方向から咲き乱れていた花々が次々と枯れていく。
ツカサはあまりの音の大きさに泣いてしまった。
ミズキがそっと抱きしめていた。
爆音がした先を見る。
そこには…
頭に角を生やした"悪魔"がいた。
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