プロローグ-講義-
───『魔術』。そう呼ばれる力が、この世界には存在する。
神代の残滓、幻想の行使、奇蹟の再現。まぁ、呼び方は色々とあるが、要するに、『異能を操る能力』の総称である。
いや、この言い方には語弊がある。
誰かが言った、「魔術は異能などではない」。
この言葉の通り、魔術は異能とは異なり、個人で保有するものではなく、一族で継いでいくものである。何時か、自分たちの悲願を達成するために───。
話が逸れてしまった。
魔術は、基本的な部分は数式と同様である。幾つかの過程を経て、一つの結果へと収束させる。
その過程に必要不可欠なものが、《魔力》だ。魔力は魔術に対しての燃料のようなものであり、それを生成し続ける《魔力炉》が無ければ、魔術は使用できない。
さらに、その中でも何の媒介もなしに魔術を使用出来る者は魔術回路と呼ばれる器官を持っており、そういった人間の事を《魔術師》、持っておらず、魔術礼装とよばれる触媒を用いて魔術を行使する人間を《魔導師》と呼ぶ。さらに、それら全てをまとめて我々は《魔術士》と呼称した────。
それ以外にも、魔術を行使するものは数多く存在する。
例えば妖精────ここではファンタジーに頻繁に登場するピクシーにしよう────の場合、人間の様に現実と固着する為の肉体が存在しない。その代わりに彼らは魔力によって容姿を固定している。観測方法、観測者によって姿形が異なるのはこれが原因だ。
それに加えて、彼らは心臓に相当する器官として『霊核』と呼ばれる高密度の魔術回路を保有する。以上の二つの要素を以て妖精は魔術を行使する事が出来るモノとなっている。
尚、こういった肉体を持たず魔力によって構成されたモノを『魔術存在』、我々の様な肉体を持つモノを『物理存在』と呼び、両者まとめて『存在』と呼称されている。
そんな中で魔術士というのは非常に曖昧な存在だ。精霊のように魔術回路を持ち、それでいながらも生命と同様に肉体を持つ。この世界の境界線上を立つ常識の埒外に在るモノと言うのが我々という事だ。
しかし、魔術士と言うだけでも世界中に数多く存在している。そんな中で我々【魔術学院】の目的はひどくシンプルなものだ。神秘の秘匿と保全、ただそれだけ。この惑星から神秘を消し去ってはならない。それは、方舟の灯を消すこととなるだけだ。
さて、ここまで基礎を進めて行ったが───誰か、質問はあるかね?