表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/174

第96話 リタ、リディア vs 破壊者ボルイェ


 ヘンリックが魔騎士サミュエルを戦闘不能に追い込む10分程前、リタとリディアの2人は新たな敵に遭遇していた。


 ここに来るまでの途中、自分達が通った道がトラップにより落石で塞がれ、マッツ、ヘンリックと分断されてしまう。


 仕方無く前に進んだ広い部屋で遭遇した2人の敵。



 1人は人間の子供程の小柄で、黄土色の分厚いローブを纏い、顔は骸骨さながら、ほとんど骨と皮だけだ。その為、目が爛々と光っている事が不気味さに拍車をかける。


 人呼んで『破壊者ボルイェ』。



 もう1人は、ボルイェの4、5倍の体躯をしており、獅子の顔をしている。筋骨隆々、鎧などは身につけておらず、僅かにレザーの毛皮を上下に纏い、手にはリタの身長程もある大きな長剣を持っている。


 この男が『半獣戦士ゴトフリート』。



 ―――


「……超人への()()で言えば、今の世だと『放浪者コンスタンティン』が突出しているな。続いて『破壊者ボルイェ』、オリオンの子孫の『聖騎士オレスト』辺りか」


 ―――


 ヒムニヤが言っていた言葉を思い出す。


「リディア、私があのでかい獣人を倒すまで粘れる?」


 リタが目の前の不気味な2人から目を離さず、小声でリディアに話しかける。


「リタさん、私の事は気にしないで。あのゴト何とかいう奴もかなり手強い筈だわ」


 それを聞いて、ふと、リタに笑みがこぼれる。


(リディアも成長したものだ……)


 今、目の前に立っている2人から発せられる気は、簡単に相手できるレベルではない。


 以前のリディアなら、ガタガタ震えていた筈だ。それが今では何とも頼もしい。


「……そうね、わかった。これは1対1じゃない。2対2ね」


「ええ!」


 リディアが大きく頷くと同時に、ローブの男が小さく口を開く。


「話はついたかね?」


 僅かな口の動きの割に、洞窟の全体から聞こえるような声だ。きっとこれも魔術なのだろう。


 ゴトフリートが続ける。


「こんな小娘共が俺の相手か……ま、何でもいい、かかって来い」


 こちらは獣の顎から発せられる生の声だ。低く、くぐもった声で聞き取りづらい。


「じゃあ、行かせてもらうわ!」


 言い様、ゴトフリートに向けて猛ダッシュするリタ。無論、距離を縮めている間、普段通りの戦法を展開する。つまり、弓矢での先制攻撃だ。ゴトフリートだけでなく、ボルイェに対しても放つ。


 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!


 ゴトフリートは全ての弓矢をその肉体で受ける。


 この部屋に入る前に、既にリディアがバフ魔法をかけている。当然、弓矢にも物理攻撃向上がかかっている。


 だというのに、貫通どころか刺さりもしない。


 そして、ボルイェも避けない。が、目の前にバリアが張られているらしく、矢はあっけなく粉微塵に粉砕された。


 だが、リタはお構い無しに距離を詰め、あっという間にゴトフリートの目の前だ。距離を詰めると尚更大きさが際立つ。


 ヴォルドヴァルドよりも更に大きく、背丈は3メートル近い。半獣の血が成せる巨体か。


 両目の位置に弓矢を放つ!


 放っておいて、太ももの辺りを剣で薙ぎ払うように斬る!!



 一方、リディア。


 ボルイェの手前でリタが放った矢が消え去ったのを見て、瞬時にエッカルトが唱えていた防御呪文「霊幕」を思い出す。


 ボルイェはミラー系の最高位魔術師、すぐさま見極めて魔法を発動する。


 古竜の大森林で自分がリザードマンの群れを倒した時、エルナがテン系統について、こう言っていた。


 ―――


「同等レベルのミラー系術師と1対1でやり合ったら勝ち目は薄いでしょう」


 ―――


(これは1対1じゃない! 2対2なんだ!!)


 自分に言い聞かせ、最大限、今、自分が出来る事をしようとする。


「『聖剣ハイリージュ・シェアーツ』!!」


 相手の物理耐性を弱化させる。効果は術者の魔力に依存する。

 ゴトフリート、ボルイェの2人を対象とするが、ボルイェにはかからなかった事がリディアにはわかる。


(魔法耐性が強化されている?)


 リディアが眉をひそめたと同時に、ゴトフリートの太ももをリタの剣が切り裂く!


 バシュッッ!!


 ボルイェには効かなかったが、ゴトフリートの物理耐性はかなり弱化されており、リタの腕なら軽く切り裂く筈、とリディアは見ていたが……


 ゴトフリートの太ももには、毛ほどの傷も付いていない!!


「無駄無駄。そんな優しい攻撃では無駄だ、女」


 言いながら長剣を振り回し、リタを襲う!

 ゾクリとしながら、リディアがリタを援護する。


「『豪弓(スタッレヴォーグン)』!!!」


 ボルイェ、ゴトフリートにまとめて弓の大砲を放つ!! かつてのリディアの最強攻撃スペル!

 今や、詠唱も不要となるまでに成長した。



 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!



 ガキィ――――――ン!!



 だが、魔法による攻撃にも全く動じないゴトフリートの長剣が、今しがたまでリタが居たであろう位置を打ち抜く!


 無論、いつまでもじっとしているリタではない。


(リディアの魔力で防御耐性弱化をかけても刃が通らない)


 これは自分達には、殆ど打つ手がないに等しい事実だが、リタは戦闘中に諦めた事など一度もない。


 周囲を回りながら、弱点を探し、突きや斬撃を加えてみる。リタの間合いの方が圧倒的に短いため、時々放つ攻撃も命懸けだ。長剣を振るわれるとバックステップでは避けられない。必ず左右に避けないと頭から真っ二つだ。


「娘さん達。そろそろ儂も行くぞ? 洞窟を壊すと怒られるんでの。軽くな」


 ボルイェの体にオーラが浮き出る。


(軽く……なんてオーラじゃ無いわ!!)


 リディアが恐怖を飲み込み、シールドを張る。


「『絶対障壁(アブソル・バギアン)』!!」


「『地神の極撃(ヴァルガットバール)』!!」


 ほぼ同時に、ボルイェの口から極撃シリーズとも言うべき、ミラー系統の恐怖の呪文が詠唱される。


 刹那、ボルイェのローブの中から、土色の竜が発現、リタとリディアに向けて金色の光線が放たれた!!


 ババババババババババババババババッッ!!



 が、それらは全てリディアのスペル「絶対障壁」に阻まれ、彼女達には届かない。


 この瞬間を逃しはしない!


 リタは「絶対障壁」が今の極撃の一撃で消えていない事を確認し、思い切りジャンプ!

 ゴトフリートの胸元辺りから下まで、一瞬の内に何十と斬撃を加える。


 だが、長剣の薙ぎ払いが来る!

 ジャンプ中に横方向の薙ぎ払いを避ける術はない。


(大丈夫、リディアのシールドがある!)


 薙ぎ払いを無視し、執拗に斬撃を加え続けるリタ。


 バシュバシュバシュバシュッッ!!!


 ドッッゴォォォォォォォォォン!!!!


 その一撃で、リタはボルイェの目の前まで吹っ飛ばされた。


 ダメージは無いものの、自分の背後にいるボルイェから言い知れぬ殺気を感じ取る。

 すぐさま、起き上がり、今度はボルイェに向き直るリタ。


「しかし、これだけ美しい娘達を殺すのも忍びないのう……」


 口ではそう言っているものの、その殺気は正反対の意思を示している。


「しかも、このシールドは何だ? 見たことがないが……見事なものだ」


 ペロリと舌を出して、唇を舐め回す。

 リディアが唱えた「絶対障壁」は、ヒムニヤのオリジナルスペルであり、ボルイェが知らなくて当然のものなのだ。


「どこまでそのシールドが持つか、見極めさせてもらおうか……」


 ボルイェの目が怪しく光る!!


「『破壊砲(デストラ・ガン)』!!!」


 ズッ……ドォォォォォォォォォォォォォ!!!


 さきほどと同じようにローブの辺りから白いビームが目の前のリタに向けて発射される!


 至近距離で食らったため、多少は浴びたものの、瞬時に左に身を躱し、ボルイェに振り下ろしの一撃を加えるリタ!


 だが、それも届かない!!!


「大したものだ……では、これはどうだ? 『破壊の剣(デストラ・スヴァ)』」


 マッツの剣技の1つのように、瞬時にリタの周囲に生成される剣の魔法イメージ!

 リディア、リタ、ともに背筋が凍りつく!!


 特にリディア。


(あれはやばい! 障壁が消える!!)


 しかし、魔法も物理も何も効かない二人に打つ手がない。

 だが、このままでは、リタが死んでしまう!!


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!


 魔法の剣に対しては、何の意味もないとわかっているが、思わず両腕で顔を防ぐように守るリタ。


(やばい、障壁が消えた!!)


「絶対障壁」は瞬時に何度も唱えられる呪文ではない。


 魔力が成長すれば神の一撃をも防ぐシールド魔法。それだけに連唱できず、一定の間隔が必要になる、とヒムニヤに教わった。


「そこまでか? では、トドメ、行くぞ?」


「『偉大なる盾(グラットセルデ)』!!!」


 無理だ、この程度では……。ボルイェの魔力は絶大だ。

 リディアは己の無力さを感じながら、走り出す!!


 だが、ふとその横、洞窟の壁がボコボコ、と中から攻撃を与えているような音がし、小石がパラパラと落ちているのに気付く。


 瞬間的にマッツとヘンリックが落石を避け、違う道からここに辿り着いたのだ、と都合よく解釈する。


(マッツ!! ヘンリック!!! 早く!!!)



「『死の大氷塊ストア・イースビートォ』」


 パキパキパキパキパキパキパキパキパキ……


「リタさん!! 避けて!!!!!」


「無駄だ。これは避けられない」


 ボルイェがそう呟いた時には、既にリタは氷塊に取り込まれていた。全身を凍りつかせる大きさの氷塊を発生させるのに1秒もかかっていない。


「リタさ――――――んッッ!!」


 リディアの絶叫が洞窟に響き渡る!



「やれやれ、もう終わりか? 俺、なんもしてないんだがな……」


 ゴトフリートが肩口に剣を乗せて呟く。

 獅子の表情は変わらず、伺い知ることは出来ない。



 だが……


「別のお客さんかい?」


 ボルイェも壁の異変に気付いたようだ。


(早く! マッツ!)


 そう念じるリディア。


 だが、実はこの時、マッツはようやく飛竜の相手をし始めた頃、ヘンリックはまだサミュエルと打ち合いをしている頃だったのだ。




 ボコボコ……


 ゴトッ……


 不意に土の壁が盛り上がり、岩がいくつか崩れ、小さな穴が開く。


「ささっ。先生! 予想通り、広間に出ましたですよ!」


 リディアにとっては、壁の中から、何やら聞いたことのある声と、聞いたことのない口調が耳に入って来た。


(え?? この声……でも、まさか! こんな話し方する奴じゃなかったけど……)


「何だ、誰だ?」


 ゴトフリートも知らない誰か、らしい。


「あれ? 中に誰かいるようですよ?」


「そうだろうね。さっきから戦っている音がしてただろう」


「そうでしたか!? いや! さすが、先生! 探知力、半端ありませんな!!」


 そんな事を話しながらも、穴は少しずつ大きくなり、やがて、人が通れるほどの大きさまで、削られる。


 ズドォ―――ン……パラパラ……


 中の方は暗くて広間の方からは見えず、誰なのか、サッパリ分からない。



「な、なんだと……何故、こんな所に……」


 1人、ボルイェだけは、ギュッと身を強張らせ、そのギラついた目で壁の中を凝視していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ