表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/174

第89話 サプライズ


「「「「「リディア、お誕生日、おめでとう~~~!!」」」」」


「ありがとう~~!!」



 俺達はまだ航海の途中だ。


 今日の夜にはエイブル島に着く予定と聞いているが、何時になるかわからないし、明日になってしまうかもしれないから、と甲板をお借りして果実水パーティー中だった。


 船長が気を利かし、薄暗い照明にしてくれた上、特別のテーブルとメニューを置いてくれる。



「んん~~海の上で誕生日を祝ってもらえるなんて、なんてロマンチックなの!」


 リディアも満足しているようでよかった。


「リディア、実は誕生日プレゼントが6つあるんだ」


「え? プレゼント? こんな海の上で?」


「ああ。海ならでは、だぜ!」


 そしてテーブルにリディアだけを残し、俺達5人、ズラっと横に並ぶ。


「リディア、お前が寝てる間にみんな、頑張ったんだぜ! 誰からいくか、指定してくれ」


「何かしら……!? なんだか、ワクワクするわねッ!! じゃあ、まずは……リタさんから!」


「おっと……いきなり私からか……ふふ。ちょっと自信あるわよ……?」


 予め協力願っていた船員さんが、リタの後ろ手にプレゼントを渡す。


 そしてリディアの前まで含み笑いをしながら歩いて行き……バッ!!と目の前に()()を出す!


「どう! 今朝の今朝に釣り上げた超新鮮品よ! 黒鯛、しかも結構、大き目!!」




「…………」




 あれ……?


 鯛はあまり好きじゃなかったか?

 リディアの笑顔がこわばり、フリーズしている。


「ありゃ……外したか……」


 リタがしょんぼりとしながら、しかし、テーブルの上に一応、黒鯛を置く。イケスに入っていた為、テーブル上でピチピチとはねる。



「…………」


「次だ、指定しろ、リディア」


「なんか……嫌な予感がするわ」


 膝の上に手を置き、恐々、背もたれに背を預けるリディア。


「さあ、誰だ? 俺か?」


「じゃあ、真面目そうなクラウスで……」


 今度はクラウスに後ろから渡す船員さん。


「私はあまり、自信が無いんですが……」


 そう言いながらもリタと同じように目の前まで歩いて行く。

 それを目の動きだけで追うリディア。


「これです! ヒラメとカレイ!! しかも、同時に釣り上げたという奇跡! 私は釣りに詳しくないのですが、ここの船員さん達から褒められました!」




「…………」



 あれれれ?

 これもダメか?


 そして、リディアが指定しなくなった為、ヘンリック、アデリナがそれぞれ、グレとフグを置いて行く。


 アデリナは釣り上げた時、初めてフグを見て『可愛い〜〜〜』と言っていた。自信があったらしく、少しリディアの反応が残念そうだ。



「しょうがない。俺が飛びっきりの奴を!」


「待って、マッツ……」


 物凄く不安げな顔で俺を見上げるリディア。


「ねぇ、あんたも……その……魚なの?」


「いや? 俺は違うぜ!!」


 そう言うと、少しホッとした顔をするリディア。


 その彼女の目の前に、俺の獲物を掲げる!!


「見ろ! 輝く10本の足!! これが『イカ』って奴だ。しかも美味中の美味、アオリイカ!!」


 リディアと俺の間でウニョウニョと器用に足を動かすアオリイカ。



「…………」



「あれ……」



 テーブルの上でピチピチ、パタパタとはね、存在をアピールする魚達をよそに、冷たく静寂な時間が流れる。



「……っていうの……」


 俯いて声を絞り出すリディア。


「え?」


「どうしろっていうのよ!! こんな鮮魚ばっかり渡されて!!! 踊り食いでもしたらいいの!?」


「あ、いや、ちが……」


 しかし、俺の声は最後まで届かなかった。



 ブッシュウウウゥゥゥゥゥゥ!!



「ヒッ……いやッッッ……」



 ヒィィィィィィィッッッッッッ!!!


 馬鹿イカ!!!

 墨、吐きやがった!!!!


 よりにもよって、リディアを真っ黒にしてしまう。


 敵意感知! 敵意感知!!


 ああ、そうだろうともさ。



 バッキィィィィ!!



「ぶぅわかマッツゥゥゥ!! だいッッッキライ!!!」



 ―


 シャワーを浴びた後、部屋に籠城するリディア。


 その部屋の前で右往左往する俺達。


 何度、呼び掛けても謝っても返事がない。

 ガン無視だ。



「いや、さすがに墨はマズかったですよね……」


 クラウスも今日のサプライズが予定通りに行かず、残念そうだ。


「全くだ……イカに罪は無いが……後で食ってやる!」


「バカ言ってないで、どうする?」


 小窓から中を覗こうとするリタ。


「うーむ。ここまで御機嫌ナナメにしてしまったら……もう、()()()()では修復不可能だろうな……」


「あ〜〜あ……折角のサプライズ、失敗かぁ」


 アデリナも残念そうだ。


 仕方ない。

 きっと部屋の中で三角座りしているであろうリディアに、扉越しに話しかける。


「リディア、最初にプレゼントは6つって言っただろ? まだ、あと1つあるんだ……」



 バンッッッッッッ



『いらないッッッ!! あっち行けッッッ!!』



 扉に向かって何か投げたな……。


 うう……


 めっちゃ怒ってるな……。

 まあ、怒るわな……。



「リディア、落ち着いて聞いて? このプレゼントの送り主は、エルナだよ?」


「うるさ…………え?」


 ……



 パタパタパタ……



 ガチャ……



 まだ濡れたままの髪にタオルをかけ、シャツとズボン、というカッコで中から現れるリディア。


「はい、これ。エルナから」


 そう言って、今日のサプライズのメインプレゼントを渡す。


 エルナからの小包。


 俺だけはプレゼントの中身を聞いていた。

 それはとてもエルナらしいものだった。



「本当に、師匠から?」


「嘘なんかつくものか」


「師匠……師匠!!」


 急いで小包を開けるリディア。

 中から1冊の本と手紙、それにもう1つ小さな小包が出てくる。


 手紙も入れてたのか。さすがだな。

 何を書いたんだろうか。



「この本……テン系統の魔術奥義書……え? 何で!? これは師匠が物凄く大事にしてた……」


 もどかしそうに手紙を開け、食い入るように見入る。


 読み進める程に、みるみる涙が溢れ出すリディア。


 最後に小さな小包を開け、中から何かを取り出して髪につける。

 白い花が2つあつらえられた髪飾りだ。

 そして指輪が2つ。


「何て書いてあったんだ? 俺達は読まない方がいいかい?」


 俺の上着で涙を拭くリディアが、かぶりを振る。


「ううん。そんな事ないよ」


 そう言って渡してくれた手紙には、こんな事が書かれていた。



 ―――


 リディア、誕生日おめでとう!!



 正直、マッツから船上でのサプライズの仕掛けを聞いた時、大丈夫かしら……と不安でいっぱいになりました。


 途中でリディアが怒ってしまわないか、物凄く心配です。


 成功したのならいいのだけれど、もし私の予想通りでも、あまり怒っちゃダメですよ?


 彼らはあなたの誕生日の為に、出航前から船員さんに根回ししたり、釣り道具を用意してもらったり、念入りに準備をするのだから。



 さて、私からのプレゼントですが、ペザで町を見回ったのですが、あまりいいものがなく……ごめんなさい、髪飾りは私の手作りです。


 これをつけたリディアは世界一、可愛いだろうな、と想像しながら作りました。

(つけなくても、世界一可愛いですよ!!)



 そして指輪を2つ、差し上げます。

 母から貰ったものだけど。

 1つは右手の中指につけて下さい。あなたの魔力が上がります。

 もう1つは左手の中指に。それだけで魔法の防御力が上がります。



 もう1つ、テン系魔術奥義書をあなたに送ります。


 但し!


 これはあげません。

 全部読み終わり、習得したなら必ず私の所まで、返しに来て下さい。



 前にマッツだけには言ったのですが、本当は、もうリディアとは会いません! 位を言おうと思っていました。


 でも、この半年間、貴女の真面目で勤勉な姿勢を見るにつけ、そんな事は何の意味もない事だと分かりました。



 また会いたい。


 その為にも、必ず、無事に、元気に帰ってきて下さい。


 あなた達の旅の無事をビルマークから祈っています。


 エルナ・グナイスト


 ―――



 シ―――ン……



 また涙が出てしまった。


 くそっ! もう泣くまいと思ってたのに……。



 ウゥムムム。


 しかし、さすがは超人の資質に目覚めているエルナだ。


 貴女の危惧通りでした!

 見事に失敗しました!


 そして、この手紙に助けられました!!



「リディア……エルナって、凄いな」


「フフ……前からそう……言ってるでしょ!」



 ―


 もう一度、甲板に上がると、大惨事の跡は綺麗に掃除されて無くなっており、その代わりに先程までピチピチパタパタ跳ねていた魚達が、豪華な魚料理となって置かれていた。


「うお―――!!」


 アデリナが目を輝かせる。


「凄い! 美味しそう!!」


 リディアも機嫌が完全に直った。良かった……。

 そして、自分達で釣った魚を食べる。


「おいひ〜〜〜!!」


「うん、美味い!!」


「本当に美味しいわ!!」


 そうして各自、舌鼓を打っている時、リディアがポツリと言った一言に、全員、グゥの音も出ず、落ち込んでしまった。



「ねぇ、さっきのサプライズなんだけどさ……。最初にこの料理を出して、実はこれ、みんなで釣ったんだ! そして、最後に師匠からのプレゼントを渡す……で、良かったんじゃない?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ