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第75話 vs ヘルドゥーソ

 第75話 vs ヘルドゥーソ


「これはまた、深い所に落とされとるのぅ……。ヘルドゥーソも相手がヒムニヤだからと極限まで魔力を使いおったな……こりゃ……厄介じゃ」


 ゴクッ……


 喉の奥で音が鳴る。


「これは、儂もお主も相当、気合い入れないといかんぞ」


「サイエン、実は俺は今朝までヘルドゥーソの世界に落とされていたんだ。その時、奴が言っていた。『ヒムニヤはこれより三層下の闇に落ちている、お前達に助け出す事は不可能』と」


 すると何やら考え出すサイエン。


「三層下のう……奴の世界はミラー系魔法を応用した奴のオリジナルの魔術『闇の波動』で構成されている。七層あると聞いたことがあるが……本人からの。では四層目からヒムニヤの気を探りながら行こうか」


「頼む!!」


 俺にはなんのこっちゃわからないが……ここはサイエンを信じよう。


 そして、必ずヒムニヤを救い出す!


「そうだ。……マッツ、お主の持つ、その恐ろしい魔剣、鞘から外していけ。役に立つかも知れん」


 ん? シュタークスの事か?


「魔剣は鞘に居る間、その魔力を封印されるように作られておる。抜いていけば解放された状態で奴の世界に潜り込めよう。お主の魔剣は破邪の魔剣。まさにヘルドゥーソ相手にはうってつけじゃ。あいつは……お主らからすると、邪悪じゃからな」


「俺達からすると?」


「正邪はモノの見方による、と言う事じゃ。だが、そんな事はどうでもよい。その魔剣はお主に懐き、お主が奴を『悪』と捉えている以上、その魔剣はお主に力を貸す」


 成る程……そんなものなのか。


 そして、シュタークスは『破邪の魔剣』だそうだ。よかったな、シュタークス! お前もカッコいい称号がついたぞ!!


「サイエン様! ヒムニヤ様とマッツを、よろしくお願い致します! ……隊長、頑張って! ヒムニヤ様を……頼みます!」


 クラウスが頭を下げながら叫ぶ。恐らく、本当は自分が助けたいのだろう。


「マッツ……絶対に、帰ってきてね?」


 リディアが心配そうに声を掛けてくれる。

 任せろ、絶対に助け出す。


「うむうむ。では行くとしようか」


 サイエンが再び、ヒムニヤの顔に手を当て、そして俺の手を掴む。



 その瞬間 ―――



 世界が捻れる。


 空間が回る。


 立っていられない。が、踏ん張る。


 ギュルルルルルルルル……




 ―――


 そして、辿り着く。


 真っ暗な世界。


 俺は今、四つん這いか?


 取り敢えず、立つ。

 床、というものの感覚も曖昧だ。


 ひとつだけ、サイエンが俺の腕を掴んでいる事は認識できた。


「ここにはおらん。次じゃ」


 ギュルルルル……


 これが数度、繰り返された。


「着いたぞ。最下層じゃ」


 最下層……


 む。



 ……いる!


 ヒムニヤ!!


 相変わらずの真っ暗な世界だが、感じる!


「サイエン!」


「うむ」


 サイエンに導かれ、闇を進む。

 風景が変わらない、俺も歩を進めているわけではない。が、進んでいる不思議な感覚がある。


 不意に闇の中に、色が見える。


 透き通るような白、いや、銀か ―――



 ヒムニヤだ!


 見つけたッッッ!



「サイエンッッッ!!」


「うむ。じゃが注意するがよいぞ? 奴が……来たぞ?」


「何!?」



 黒の中の銀。



 フッ―――と、銀が消える。



「ヒムニヤ!!」


 手を伸ばす、が、空を掴む。



 そして、闇に浮かぶ、あの嫌な顔 ―――



(ようこそようこそ……)



(マッツ・オーウェン ―――)



(む…… ク……クックク……これはこれは……)



(人間如きがどうやってここまで来たのかと思えば……)



(サイエンではないか!)



「うむうむ。久しいの」



(中立だ何だとほざいておきながら)



(貴様もマッツ・オーウェンに肩入れか?)



「儂は中立じゃよ。ただ借りを返しとるだけじゃ。これもまた、中立にバランスさせる為」



(ふん……抜け抜けと……)



(マッツ……貴様、私の邪魔ばかりするのは何故だ?)



「そもそも、最初にお前が言っていた『俺が邪魔した』という件について、俺は全く身に覚えが無い。今回は……テメェがヒムニヤに手を出したからだよッッッ!!」



(ヒムニヤに惚れたか……? 怖いぞ? こいつは……)



「アホかッッッ! そういうんじゃねえ! ヒムニヤは仲間なんだよ。俺達の事もすごく考えてくれている。放っとく訳ないだろうが!」



 楽しそうに口を歪めて笑うヘルドゥーソ。



「やれやれ。マッツ、此奴と論じていても平行線じゃぞ。お主とはベクトルが真逆じゃ。さっさとヒムニヤを取り戻すが良い」



 うん、と頷き、前に進む。


 だんだんと顔が大きくなってくる。


 なんだ? 実際の距離があるというのか?



(マアアアアァァァッッッツ!!)



 不意に口が大きく開き、大音響の叫びが直接、脳に入り込んで来たかと思うと、まぶたのない目から、水が鉄砲の様に撃ち放たれた!!



水神の極撃(アーキュガットパール))



 水神の極撃!!


 不死の王『リッチ』が使った、防御不能な水系魔法!


 やばい!! これは食らうと死ぬ ―――


 そう直感し、反射的に横に逃げようとする!



 が、サイエンの腕を掴む力が急激に強くなり、ビクともしない。


「……儂から離れるんじゃない。ここを彷徨いたいのか? やれやれ」


 見ると、サイエンの腕は全く力がこもっていない。むしろ、添えているだけだ。一体、どうなっているんだ。



 そして水神の形がはっきりと見える激流が俺達を襲う!!



 ――― 何ともない……



「当たり前じゃろ? 誰と一緒に来とると思っとるんじゃ」


 サイエン……


 すげえ……ただのエロジジイじゃないんだな!

 やはり、お前を選んで……正解だった!!


「エロジジイは余計じゃ。否定はせんがな。さて、全てはここから脱出してからよ。いくぞ、ヒムニヤのもとへ」



(行かさんわッッッ!!)



「ホッホッホ。無理じゃ無理じゃ。7層の闇の波動を維持して儂とやろうなどと……実体同士だったら別じゃがの」



闇騎士(デュンクル・リッター)!!)



 闇の中でも識別できる。


 黒騎士共が溢れるように湧いてくる。



「ほれ、いくぞ、マッツ!」


「ああ!」



 ヒュン!!!



 段々と識別できる領域が増えてきた。これも闇に目が慣れた、というのだろうか。


 そして目の前には、目を閉じて横たわるヒムニヤがいた。



「ヒムニヤ!!」


「マッツ! ヒムニヤに触れよ! その上で呼び戻せ!」


「わかった!」


 左手をサイエンに掴まれたまま、身体を屈め、ヒムニヤの肩に触れる。



 ギュゥゥゥゥゥ―――


 シュゥィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!



 触れている肩から光が蘇る。


 彼女の慈愛溢れる光。


 俺を闇の波動から救ってくれた光。



「ヒムニヤァァァァァァッッッ!!!」


 眩いばかりの光が辺りを煌々と照らし始める!!



 スッ……



 ヒムニヤの……目が…………


 少しづつ、開いていく。


 自らの光が眩しいかのように、目をしかめる。


 なかなか目の焦点が合わない。

 辺りをキョロキョロと見渡し…………



「…………ア……」


 ヒムニヤの目が、俺の姿を、捉えたようだ。

 だが、かがんだ俺の足下を見ている。


 少しずつ、少しずつ。


 長い眠りから不意に目覚めたように。


 少しずつ、少しずつ。


 視線を上げる。



「マ……マッツ!!」



 そして、俺と目が……合った!


 意識を取り戻した!!!



「マッ……ツ!! すまん、私は……」


「いいさ! 何でも許してやる! よく……帰ってきた!!」


 力一杯、抱き締め、彼女の神の如き美しさを見せる見事な銀髪を撫でる。


「ヒムニヤ!! よかった……!!」


 ヒムニヤも、俺の体に巻き付いている腕に力を込めて返してくる。


「マッツ……すまなかった……」


 ひとしきり、ヒムニヤの身体の温もりを感じ、安心して少し、身体を離す。


 ……ヒムニヤの綺麗な顔が真っ赤だ……。

 そして、目から涙がポロポロと溢れていた。


 なんて……可愛いんだ。破壊力が凄まじい。


 超人でも泣いたり、照れたりするんだな……そんな事をふと思う。


「……フフフ。私は泣いているか。そうか……それは……久しぶりだな。だが、顔が真っ赤で泣いているのは……お前も同じだ、マッツ」


「え!?」


 慌てて目に手をやると……成る程。


 たしかに。


 気付くと、サイエンの持つ俺の腕への圧力が極端に弱まっている。いや、いつの間にやら、手は離れていた。


「……全く……ラブラブなのは構わんが……ここまで来れたのは儂のお陰じゃぞ? そこんとこ、忘れんようにな?」


 そう言いながら、どうやらサイエンは黒騎士を片っ端から葬ってくれていたようだ。


 そうか。


 手を離したのは、俺がヒムニヤを掴んでいるからか。彼女の意識が戻れば、自分の代わりになる、という事か。


「!! サイエンではないか! 成る程、マッツがここまで来れる訳だ……」


「ああ。あの爺さんがいなければとてもこんな所までは来れなかった」


「よし、では帰りは私が力を振るわせてもらおうか」



(貴様らぁぁぁぁぁぁ!!)



(このまま、おめおめと逃すものかッッッ!!)



「やれやれ。しつこい事じゃ……」


 不意に、サイエンが左手に持つ酒壺から、大量の……何だあれは? 酒?


 何かわからん液体が、闇に浮かぶヘルドゥーソの顔にかかる。


 瞬間!! バチバチバチバチッッッ!!!

 凄まじい火花を飛ばして顔が砕け散る!!!


 やった!



雷神の極撃(シュラガットパール)!!)



 ……!?


 まだ、存在している??


 そして、この魔法もリッチが放った辺り一面、雷の雨を降らす極撃魔法!


「ハァァァ―――!!」


 俺と手を繋いだ状態のヒムニヤが左手で、バリアを張る! 神の一撃を防ぐバリアだッ!


 闇の空間、先程までとはまた違う場所に浮かぶ、歪んだ顔。


 しかし、魔力が切れかけているのか、その表情は色褪せ、そして()()()()()


「消えよッ! ヘルドゥーソ!!」


 返す刀で無形の攻撃を繰り出すヒムニヤ。 死古竜エンシェントボーンドラゴンに見せた、過程が見えない攻撃!!


 ドォォォォォォォォォォォォォンッ!!!


 霧散する顔。



(ヒムニヤァァ……サイエンンン……)



 そして、俺とヒムニヤの前に三度現れる、ヘルドゥーソ!



(マァァァァッッッツ〜〜〜!!)



(貴様ら……決して……ゆる……)



 やかましいッッッ!!


 絶対に、ヒムニヤは助け出すと。


 言っただろうがぁぁぁぁ!!!



 ヒムニヤ、サイエンの尋常ならざる魔力が俺に流れ込んでくる。


 わかる。今、ここでは詠唱など、一切不要だ。



 行くぞ! 最大奥義!


魔竜剣技ダヴィドラフシェアーツ!!!!」


 破邪の魔剣だってよ! シュタークス!!


 その力を見せてみろ!!!



 天魔を滅殺する最強の光撃!!!!



「『天魔滅殺(ヴァルティマ・レイ)』!!」



 ドッッッッッッッッッッシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!



(グァガァァァァァァァァァァァァァ……)



 ヘルドゥーソの顔が最後の悲鳴をあげながら、四散する。



 消えたッッッ!!


 闇の気配!



 ヒュィィィィィ―――ン!!



 不意に明るくなる。


 目が開けられないほど―――





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