表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/174

第68話 超人ヴォルドヴァルド


 遂にこの日が来た。


 ヴィハーンの近侍が近くまで案内してくれると言う。

 ドラフジャクド城の1階、最奥にある、施錠された物々しい雰囲気の扉を開ける。


 長い下り階段が見え、ひんやりと冷気が伝わってくる。

 数メートル感覚で光源は魔法と思われるランプが設置されているが、中は薄暗い。


 その中を迷いなく進む近侍の後をついて行く。


 20段程おりた所で、水平な廊下に変わる。

 ここを百メートル程歩き、最後に牢状の扉を解錠し、中へ、と誘導される。

 この扉の手前には小さな部屋が1つあり、近侍はこの中に入っていく。


「御一行様は、こちらの中の広間でお待ち下さい。私はこの小部屋で待機しております。お帰りの際はお声がけ下さい」


「わかった。有難う」


 中はかなり広い部屋となっており、床は1メートルサイズ程度の大きな絨毯がチェック柄で敷き詰められている。


 中央奥に大きなクリスタルが飾ってあり、さらに吹き抜けの為、天井が無い。


 非常に神秘的な印象を受ける。


 この高さからして、おそらくここは塔だろう。外から見える、別塔のどれかだ。



 さあ、いよいよだ。


 来い、超人め!



 ……


 さあ、来いッ!


 …………


 緊張してきた。さぁ!


 ………………





 ……来ねえ。



 あれ?


 朝8時と連絡しておく、と皇帝が言っていたが……。


 もう9時過ぎてるんだが……。



 その時!



 ズシーン……


 ズシーン……



 嫌な足音が聞こえる。

 アスラを彷彿とさせる、重量感たっぷりの足音。


 念の為……と言いながら、エルナが各種耐性と強化のバフを全員にかけてくれる。


 足音はどんどん大きくなり、やがて耳をつんざく轟音となり、ピタッと止む。


 どこだ?


 どこから来る?


 足音からして、もう見えていてもいいはずだが?




 ド――――――――――――ン!!!!




 不意に目の前に()()()()()巨人。


 フルアーマーと言っていい黒いプレートメイルからは、中身は伺い知ることは出来ない。


 手には剛槍を携え、片膝をついている。


 ……落ちて来たからだ。



 そして、ゆっくりと槍を杖代わりにし、直立する。


「お、お前が、超人ヴォルドヴァルド……か?」


 恐々、尋ねる。

 そもそも、こいつ、話出来るのか?



「デカ過ぎる……」


「何よこれ、人間なの?」



 ん?


 そんな大きいか?


 いや、大きいには大きいが、ドゥルーブより少し大きい位だと思うが。


 ふと見ると、みんなの視線が、ヴォルドヴァルドの遥か上方を見上げている。



 ピ―――ン!


 なるほど、例のヤツだな。


「おい、ヴォルドヴァルド。みんなに本当の姿を見せてくれ。俺には、ちゃんと()()()()()んだ」



「なんだとッッッ!!」



 これはまた重低音、そして無駄にデカい声。

 ボス級に相応しい。


「お前が、マッツ・オーウェンか!」


「ああ、そうだ」


「あれか、あの何とかいう特性……『遠視』?」


「それは、遠くを見る魔法だろ。もしくは、単純に近くが見えないやつ」


「違う違う。『近視』の方だったか」


「それは遠くが見えないやつだ」


 ドンッ!!


 槍の石突きで床で大きく鳴らす。



「そんな事はどうでもいい!!」



 こいつ、声量で押し切ったな……。


「俺が視えているだと!」


「ああ。俺は『神視』持ちらしいからな!」


「それだ! 俺がさっきから言っていたのは」


 言ってないじゃない……リディアの小さな呟きは幸い聞こえなかったようだ。



「よかろう。お前の(ドラゴン)を追い払ったという素晴らしい功績と、その『()()』に免じて、『変現』を解いてやろう」




 俺は近くも遠くも見えるぞ。


 一々、言わないがな。




「おお! それでも、大きいですね……」


 クラウスが感嘆する。ボヤけていた輪郭がはっきりする。


「でも、最初、5メートル位あったから……なんかねぇ……」


 リタ、煽るんじゃない。

 一応、超人だぞ!



 不意に槍を構えて、半身の姿勢になるヴォルドヴァルド。


「さて! 人間共よ、来いッッッ!!」


「え? ……あ、ごめん。いや、戦いに来たわけじゃない」


「なんだとッッッ!!」


 一々、声がデカい。


 アデリナが完全に耳を塞いでいるじゃないか。

 エルナもリディアも、しかめっ面をしている。


 また槍先を天に向けて、直立の姿勢になる。


「じゃあ、何をしに来た?」


「話をしに来たんだ」


「話だとッッッ!!!」


 なんか、おかしい事言ったか? 俺。



「何の話だ」


「要件は2件。1つ目。お前が持つ神の種(レイズアレイク)を俺達に譲ってくれ」


「ダメだッッ! 次ッッッ!」


 ……


 いや、めげるな。

 これ位は想定の範囲内だ。


「2つ目。ヴィハーンとラーヒズヤの洗脳を解いてくれ」


「ダメだッッ! 次ッッッ!!」


 ……


「……え? あ、いや……。2件だから、以上だ」


「なんだ、2つしか無いのか。欲の無い奴だ」


 ……


 ……


 1つも聞いてくれて無いだろ!!



「話は終わりか? よし、来いッッッ!!」


 槍を構えようとする目の前の巨人。

 今更ながら、ヒムニヤの言が脳裏をよぎる。


『奴は不器用』


『そもそも奴は私がここにいる事等、把握しとらん』


 ……いや、これ、不器用とかいうレベルじゃ……


 コンスタンティンが『戦闘狂』と言っていたが、まさしく、その通りだな。


 どうしよう。


 これほど話が通じないとは思っても見なかった……。


「戦ったら、俺達の要望が通ると思っていいんだな?」


 黙っていたヘンリックが、不意に大声を上げる。



「む? 違う!! 戦って、お前達が勝ったら、だッッ!!」


 ニタリ、と笑うヘンリック。

 槍をしごいて、前に出ようとする。


「おい、やめとけ!」


「……」


 慌てて、ヘンリックを制する。


 ちょっとおバカさんなだけで、ヒムニヤより強いかもしれないんだぞ!


「今はまだ……待て、ヘンリック」


 チッと舌打ちして下がる。



「何だ、何をコソコソしているッッ! やるのか、やらんのかッッッ!!」


「やら―――んッッ!!」


 負けない位の大声で答えてやる。



「何だ……じゃあ、何しに来た?」


 ……


 よし。話題を変えよう。


「ヴォルドヴァルド、今、この国でクーデターが起こっている。知っているか?」


「クーデター? そうなのか?」


「ああ。それも、お前の洗脳のせいだ」



 ワッハッハ!! と、どデカい笑い声を上げる。


「だからどうしたというのだ。今まで、クーデターなど、ドラフジャクドの歴史上、何度も起きている。俺には関係ない」


 何だと!?


 今の言い方はちょっとカチンと来たぜ。

 ……が、一旦、抑える。


「そうなのか、よくわかった。じゃあ、一旦帰る。但し、また来るぜ! そん時は相手してくれよ!」


「よかろう! いつでも来るが良いッッッ!!」


 最後に最大級の声量で怒鳴り散らすヴォルドヴァルド。




 俺達は入ってきた入り口から出て、小部屋の近侍を呼ぶ。


「終わりましたか? ご無事で何よりです。では……」



 そうして、俺達は言葉が通じない巨獣との初めての面会を終えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ