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第32話 暗殺者(2)


 ――― マッツ vs 侵入者 ―――


 それから王都見物、テオドール城の見学、魔法兵団や守備隊との顔合わせ、夜はバルバラがどうしても、というのでうちの女子達と風呂に入り、何故か俺達も5人の王子達と一緒に入ることになったり、で、あっという間に2日がたった。


 その夜のこと。



 今朝から続いた腹痛もようやく落ち着いてきた。一体、何を食ったんだろうか……。


 先程まで、ヘンリックとクラウスが、マルクス王子と一緒に飲んでいたはずだ。調子が悪くて誘いを断っちまったが、もう今は寝てるだろうな。

 辺りは寝静まっており、起きているのは外を見回る守衛さん位だろう時刻。



 ……キーーン



 敵意センサーに極小の反応があり、ムクリと起きる。


 こんな城の中でか?

 まさか、あの4人が逃げ出したか? いや、奴らなら、不意打ちだろうがなんだろうが、俺達をどうこうできない位は理解しているだろう。俺に敵意は向けない筈だ。


 この反応の小ささは、俺にだけ向いているものではなく、明確な何かに敵意を持ち、周囲を『警戒』をしている奴が発する反応だ。


 寝室から廊下に出る。

 非常に長い廊下だが、今、奥の方で何かが動いた。


 城の者か?


「おい、そこにいるのは誰だ!?」


 返事がない。


 キィィィィィィィンッ!!


 その代わりに敵意センサーが鳴り響く。間違いない。侵入者だ。


 帯剣していない。取りに戻るか? いや、一旦、部屋に戻るようなタイミングは無い。


 だが、そいつは俺の予想を上回る、いや、まったく予想だにしない敵だったのだ ―――



 そいつは一瞬で俺の目の前まで移動してきた。


 身を低くし、すべるように走ってくる。あと数メートル、という所で姿が消える。


「え?」


 ドスッッ!!


 1、2秒後、俺は真上からの突きを転がって避けた。間一髪だった。


 消えたのではなく、廊下のところどころにある出っ張りに隠れ、天井まで上り、高速移動し、そこからジャンプしてきたのだ。


 なんだこいつ!!


 一瞬の攻撃で、相当やばい奴だという事がわかる。


「ほう……? なかなか、身軽だな……貴様」

「身軽はお前だろうが。おい、なにもんだ。ここをどこだと思ってんだ?」


 以前の暗殺者達のような黒装束ではない。むしろ、盗賊のような黒皮の鎧、ブーツなどで身を固めている。だが、こいつは明らかに盗賊ではない。剣士だ。

 最近、よく見る金色ヘアーに青い目をしている。諸島からこっちにくるのが流行っているのか?


 床に刺さった剣を抜きながら、かすかに、クク……と口元を歪めた気がする。


「笑いやがったな、お前。よし、ひっ捕らえてやる」

「フッフフ。やってみろ」


 床に手をついた体勢から低く地面を蹴り、奴の左前に飛び出す。こいつは右手に剣を持っている。従って、一番攻撃しにくい位置になるはずだ。


 だが、剣の刃を上に向け、スッと、音もなく俺の目の前に剣先を持ってくる。


「うっ!」


 片刃の剣! このタイプの剣は、少なくともこの付近では作られていない。


 俺は移動速度を倍以上に上げ、剣先を右方向に流し、敵の右手の外側に一気に低く跳ねる。跳ねながら同時に右腕を自分の腰の位置まで引く。


「む!?」


 一瞬、驚いた表情をする剣士。


 いや、このスピードを見切られた俺もびっくりだ。くそっ。だが、このまま右手でこいつの脇腹をめがけて撃ち抜く。


 ガツン!!!


「あ、痛っっっった!!!」


 相手の脇腹を目指した俺の拳は、剣士の右手の肘でガードされてしまった。


 うお~~。いってぇ。ちくしょう。


「そうか……」


 ドォォォン!!


 剣士が俺に何か言いかけた時、廊下の中央を挟んで反対側から派手な音がする。ひょっとすると他にも侵入者がいるのか。誰かが俺と同じように戦っているかも知れない。


 剣士は、チッ、と舌打ちしながら、


「……馬鹿が」


 と呟いている。


「馬鹿はてめぇだよ!」


 一度、大きく後ろにジャンプ、今度は両腕を引き、気を溜める。


「ネイ・マ・チリ……『聖拳(ハイファウスト)』!!」


 拳のエネルギーを魔力で実体化、両腕から一発ずつ、正拳突きの要領で絞り上げるように発射する。更にこの攻撃には聖属性の追加ダメージが乗る。


 大丈夫だ。こいつはこれでも死なんだろう。


「やはり……なッッ!!」

「!?」

地竜剣技(エアドラフシェアーツ)!『丸土(クライスボーデン)』!!」



 !!! なんだとッッ!



 俺の『聖拳』は、剣士が作り出した丸い土の塊を破壊し、消えてしまった。


「ククク。会いたかったぞ。お前が剣聖(シェルド・ハイ)、マッツ・オーウェンだな?」

「お前……修羅剣技をッ!!」

「不思議か? フフ……ノゥトラスで何千人、修行していると思ってんだ? 確かに『モノ』になるのは、ほんの一握りだけど……よ!!」


 そう言いながら、一瞬で間合いを詰め、剣を横に振り抜く。

 何とか鼻先で剣筋を見切り、避ける。


 ……こいつぁ、やばい。やばすぎるぞ。


 修羅剣技使いを相手に、素手で挑むなんて何の罰ゲームだ。あり得ない。


「お、お前も剣士なら、剣を持った俺と戦いたいんじゃ……ないか?」


 一旦、距離を置き、少しプライドをくすぐってみる。


「フハハハ! 面白い奴だなお前。 確かにそうしたいとこだが、今日の目的はお前じゃないんでな……」


 あー。だめだ。

 こいつは剣の道に生きてない奴だ。

 剣は金稼ぎの道具ってタイプだな?


 こういうタイプはダメだ。

 自分の有利は手放さない。


「うろちょろするな、剣聖(シェルド・ハイ)。今なら俺にやられても言い訳できるだろう。さっさと……死ね!!」

「死んだら、言い訳もできんだろがっ!」


 あまり周囲を破壊したくないのか、音を出したくないのか、剣技を使わず、剣を振り回しながら間合いを詰めてくる。


 しかし、スペルを伴う剣技だけが修羅剣技ではない。剣法でも最強を謳うのが修羅剣技なのだ。


 一撃でやられないにしても、腱でも切られたら終わりだ。体に傷をつけられないよう、逆に俺は、なるべく、こいつに周囲を破壊させながら、転げまわり、皮膚を切られながらも、何とか避けている。


 だが、時間の問題だ。いつまでも逃げ切れるものではない。むしろ、反撃しないとやられる。数秒凌ぐのに神経が擦り切れる。何とか隙を見つけなければ……、いや、無理やりにでも作らなければ……やられる。


 その時、さっき大きな物音がした方向からまた、何かが大きく壊れるようなでかい音が鳴り響いた。


 ドッゴォーーーン!!


「ん?」


 し、しまったぁ!


 こいつを油断させないといけないのに、俺が隙を見せてしまった!


「終わりだ、剣聖(シェルド・ハイ)


 言うより早く、片刄の一閃が俺の心臓目掛けて飛んで来る。


 これは無理だ。避けきれない。



 ドスッッッ ……


「ぐっ……」

「クク……」



 メキメキ……


「む? …… 何?」



 避けきれないなら……防ぐ。


 心臓への一撃、盾で防がせてもらったぜ……?



「貴様、どこから……」


 この一撃を、待っていた。

 確実に心臓を狙ってくる一撃を。



青竜剣技ブリュドラフシェアーツ!!」

「何だとッッッ!!!」


 驚きの表情のまま、剣士が仰け反って逃げようとする。

 逃がすかっ!!


「『(フリィ)』!!!」


 必殺の斬撃!

 苦労したんだ。至近距離で喰らいやがれ!!


 ズドドド!!


「『捨呪(リ・ィーマ)』 !!」


 何だ。聞いたことの無いスペル。


 しかし『(フリィ)』はもう、てめえの全身に突き刺さった。俺の勝ちだッッ!


 しかし……。


 こいつの身体に斬撃の跡が無い。身体にヒットする前に掻き消えた?


 さっきの呪文で?



「貴様、どこから盾と剣を…………ハッ、なるほどな」


 そうだ。


 こいつを誘導し、廊下に飾ってあるビルマーク王の御先祖様達を壊させ、手元に落ちてきた盾と剣を使わせてもらった。テオドール王に怒られるかな……。


「ちっ。素直に殺されてりゃいいものを……。これで負けの言い訳は出来なくなったな」

「さぁて……もう簡単には行かねぇよ?」


 しかし、剣士はぐっと剣を握り、不敵な笑みを浮かべてにじり寄ってくる。


「ふん。そんなお飾りの剣でどこまで戦えるかな。さっきの『(フリィ)』程度の威力では、俺に傷もつけられねえぜ」


 ちっ。やっぱり見抜いていたな。

 これは面倒な奴と当たっちまった。


「マッツ!」


 リディア! 無事だったか!

 声で判断する。


 一瞬、剣士の注意が向く。俺は今度は見てやらねえ。さっきのはわざとだからな。


「一体、何が起きてるんだ」

「おい、誰かいるぞ」

「どうした! 侵入者か!」

「灯りを灯せ!」


 ガヤガヤと、近衛兵らしき兵士達が起き出してくる。


「ええいッッ! くそッッ! この俺が任務を失敗するだとッッ!?」


 歯嚙みをして悔しがる剣士。

 ルーペルトは逃してしまったが、てめえは逃がさねえ。


火竜剣技フラムドラフシェアーツ!」


 ケネトの言う、お飾りの剣が炎を纏う。こもる魔力はシュタークスの10分の1にも満たないが……


「…… 火竜剣技フラムドラフシェアーツ!!」


 げ。


 無理。


 火竜同士、こんなチャチい剣で勝てる気がしない……。


 ええいッ! 大人気ない奴め!!


「『(アンタブレア)』!!」

「『(アネヴォム)』!!!」


 俺の『断』は、『爆』のポイントビームに吸い込まれ、俺の胸に恐怖のレーザーポインタがセットされる。


「ヒッ!!」


 情けない声を出してしまう。だが、その時!


「『大いなる盾(バルカッドセルデ)』!」


 金色のオーラ。リディアだ!


「『物理耐性向上(フィジーヴァベッサ)』!!」


 助かった! リディアの平行詠唱!


 ドォォォオオオオオーーーン!!!


 俺は後方に思いっきり、吹っ飛ばされる。


「『連弾(コントブライト)』 !!!」

地竜剣技(エアドラフシェアーツ)!!」

「……え???」


 リディアの困惑した声が聞こえる。

 やばい、リディアがやられる。


「『岩砕(フェルセヴェルグナ)』!!!」


 リディアの『連弾』は、やつの作った岩を砕き、消失する。


「ぐぬぅ……。許せん……。このケネトが失敗するだとッ! ルーペルト如きと同じ結果になるだと!! くそッ!! くそッッ!!!」


 わなわな震えているが、そんな所で反省していていいのかな? お前の『爆』は、俺に毛ほどの傷も与えていないんだぜ!(丸っきり、リディアのおかげだがな!!)


 ほれ、向こうから兵士達がガヤガヤ来ているぜ?


「マァァッッツ! この借りは、必ず、返す。 忘れるんじゃないぞ。俺の名は焔剣士ケネト。次は殺す。こんな他の仕事のついでではなく、全力でお前を殺す。覚悟しておけ!!」

「………… 嫌だ。何も貸してない。俺の事はもう忘れてくれ」

「ハァァーハッハ! また、だ。また会おう、剣聖(シェルド・ハイ) !!」


 叫びながら、窓を蹴破って外に飛び出す、ケネトとかいう奴。


 ええぇ。ここ、6階だぜ?


 急いで窓に寄り、下を見る。が、どこにもいない。

 リディアも走り寄ってくる。


「マッツ! あれ!」


 空を指差すリディア。なるほど……。


 あれが、飛竜(ワイバーン)ってやつか……。



 その時、廊下の反対側から、アデリナの大きな声が響いた。


『ヘンリック!! 大丈夫!?』


 そして、それは悲鳴に変わる。


『いやーーーー!! クラウス!!!』


 俺達はすぐさま、駆け出した ―――


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