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第28話 王女誘拐(3)


 2階での尋問を終え、カイ、リディアと1階に降りる。賊2人はそのままにしておき、リタ、クラウスとアデリナに見張っていてもらう。


 1階ではバルバラとヘンリックが楽しそうに会話していた。いや、楽しそうにしているのは王女だけか。ヘンリックは相変わらず無愛想だ。全く、おべっかの1つでも使えば良いものを。まあ、そこもあいつの良いところかもしれないが。


「失礼致しました、バルバラ王女。少々、賊を尋問しておりました」


 バルバラがちらりとこちらを見る。


「……して、何奴なのじゃ」

「沿海を根城にしている賊のようですね」


 ヘンリックが縄で縛り上げたらしい、床で寝転がっている2人とカイを一瞥し、キッと眉をつり上げる。


「下郎が! 父上からきっつくお叱りを受けるとよいぞ!」


 昔話によくある、世間知らずなお姫様がよく言う最低なセリフ、『父上に掛け合って死刑にしてもらうぞよ!』みたいな事は言わないんだな。少し、見直したぜ。


「表にあと1人のびている筈ですので、まとめてテオドール国王に引き渡します」

「うむ。それはそなたに任せる」


 どうやらヘンリックとの時間を邪魔して欲しくないようだ。ヘンリックはと言えば、しかし、あまり苦痛でもないらしい。大した奴だ。ワガママ姫との話題など、すぐになくなりそうなものだが。


 表で馬車の車軸に括り付けられていた賊を後ろ手に縛り直して屋内に連れ帰る。雨晒しで少しかわいそうだが、賊だから相応か。名をクヌート、と言うらしい。カイと同じ『(フリューゲル)』の奴だ。


 2階のリタ達に、賊2人を起こして連れて降りてくるように指示する。大きな返事があり、パタパタと階段を降りて来る。


 全員揃った部屋を見渡し、考えを整理しながら話す。


「さて……バルバラ王女」


 まずは、今、最もデリケートな問題であるバルバラ王女からだ。


「俺達はある目的の為、北に向かって旅をしています。我がランディアの国王ディミトリアスとお父上の親交もあり、元々、領内通過の際にテオドール王に謁見させていただく予定でございました。従って、俺達でビルマーク城まで貴女を護衛致します。まずはご安心下さい」


 バルバラ王女は深く頷き、


「よろしく頼む」


 初めて歳相応の笑みを見せた。


「次に、そこの賊共4人。お前達もビルマーク城まで連行する。捕らえたのはこのランディア領だが、事件自体はビルマークで発生しているため、処遇はビルマーク王国にお任せする。どっちにしろ、引き渡せと言われるだろうしな」


 4人とも項垂れる。


「で、俺達だが、先ほども言ったように、王女の護衛というミッションが増えたものの、やる事はあまり変わらない。だが、今、ビルマークは血眼で王女の捜索をしているだろう」


 そこでリタとクラウスに視線を移す。


「すまないが、リタとクラウスの2人は先にビルマーク城まで行き、俺達が無事、王女を保護している旨を伝えてきて欲しい」

「わかったわ」

「わかりました」


 今度はバルバラ王女に向き直る。


「バルバラ王女。もう夜ですし、雨もやみそうにないので明日の移動に致しましょう。風邪を引かぬよう、風呂に入り、お着替え下さい」

「うむうむ。妾も風呂に入りたい。そこな女子共、共に入ろう」

「「「…… え!?」」」



 ……というわけで、宿屋襲撃事件は解決した。


 バルバラの希望でリディア、アデリナ、リタと一緒に風呂に入ったのだが、意外にもワイワイ楽しそうに入浴していた。


 時々、胸のサイズがどうとか、好きな男がどうとかいうキーワードが耳に入ってくる。どうやら、女子同士、仲良くやっているようだ。


「出たよ~」

「良き風呂だった」


 バルバラはびしょ濡れの豪華な王家の部屋着を干し、アデリナに白ジャージを借りたらしい。背丈が似たようなものなのでピッタリだ。


 その後、俺達は順番に風呂に入り、翌朝を迎える ―――



 早朝、連絡係のリタとクラウスを見送る。


「馬を休ませることを忘れるなよ。それでも、急げば、2、3日ほどで着くだろう。気を付けてな」

「大丈夫よ。そっちも王女を連れてるんだから、気を付けてね」

「では、行って参ります」

「ああ、頼んだ」



 その後、俺達は少しゆっくり目に朝食を済ませ、道中の食料を老夫婦から貰い、出発する。


「どうじゃ、ヘンリック殿! 似合っておるか?」


 衣服が乾かず、結局バルバラはアデリナの普段着を借りたらしい。庶民の衣服など嫌がるかと思いきや、意外に気に入っているようだ。


 深緑のパフスリーブミニワンピースの上に皮のマントを羽織っており、手のひら幅の広いベルトを締め、軽そうな茶色のブーツを履いており、非常に可愛らしい。……やはり、その人自身に好感を持つと、外見も可愛く見えるものなんだな。


「ああ。似合っている」


 相変わらずの無愛想な返答に、もうちょっと何かないんかい、と心で突っ込む。が、王女にとっては、それでも十分なようだ。嬉しそうにしている。


「かーわいー! バルバラちゃん、ピッタリだよー!」

「うんうん。バルバラちゃん、よく似合ってるよ!」


 え!? まさかの「ちゃん」付け? よっぽど気が合ったんだな。

 てか、いいのか、それは。ま、王女本人が機嫌よくしているようだ。触れずにおこう。


「よし、じゃあ、みんな出発するぞ!」


 俺たちは馬に、バルバラ王女は馬車に乗る。もちろん、4人の賊は歩きだ。面倒だが、不満が出ないように、御者は交代制にする。


「爺さん、婆さん、世話になった。ありがとう」

「いやいや、こっちこそじゃ。助けてくれた恩は忘れんでの。気を付けて行きなされ」

「じゃあな!」

「ばいばーい!」

「さよなら!」


 ひょんなことから、ビルマーク王女、そして4人の賊と共に北に旅立つこととなった。


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