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第22話 ランディア王都へ(4)

 

 それから5日目の朝、俺達は王都に辿り着く。


 道中、俺はハンスやリタのみならず、守備隊員全員から『エロ隊長』と呼ばれ続けた。


 ハンス曰く、『そんな大事な、危険を伴う任務の遂行中にふざけるにも程がある。そしてその為にリディアを危険な状況に巻き込んだ』との判決理由が言い渡され、『王都に着くまで、マッツ・オーウェンは「エロ隊長」と呼ばれること、並びに呼ばれたら元気よく返事をする事』なる判決がくだされた為だ。


 意味も無く、『エロ隊長』『エロ隊長』と呼ばれ続け、その度に元気よく返事をする俺。


 ……もう怖いもんは無いぜ。



 そして、ようやく……王都だ!


 俺の気持ちは、久しぶりの王都に対する感傷よりも、ようやく『エロ隊長』の罰から解放される、その一点で埋め尽くされていた。


「ついたーーーー!!」

「お勤め御苦労だったな、マッツ」


 俺の肩をポンっと叩くハンス。こいつは本当に恐ろしい奴だ。


「……もう、2度と……呼ぶなよ?」


 ハンスだけでなく、全員に念を押す。

 アデリナを筆頭に、全員ニヤニヤしながら頷く。


 ようやく、この件は一件落着だ。



 王都の人口は30万人強ほどらしい。ラシカ地区の総人口が8000人ほどであることを考えると、規模が桁違いであることがわかる。

 学校はいくつもあり教育が充実している。海鮮、山の幸、肉料理、と料理も豊富、衣服も年によって流行があったりして、俺達の生活レベルと比べて、段違いに高い。


 街は活気に溢れており、そこかしこに商店が並ぶ。美味そうな料理を出している店が立ち並び、良い匂いが溢れている。道中、ろくなものを食べてなかった俺達はすぐにでもがっつきたいところだったが、まずは王への謁見を済ませなければならない。


「まずは城に行く。王に謁見し、エッカルトを引き渡してから、少し休む事にしよう。話はその後で」


 門番に、身分と用事を簡単に告げ、開けてもらう。


 城門をくぐると、王城だ。


 城までには、大きく庭が広がっており、今も何人かの庭師が整備をしている。俺達が、かつてエッカルトと戦い、勝利した所だ。


「マッツ!」


 久しぶりに名前を呼ばれた気がするぜ。


 見ると……懐かしい顔だ。

 歳は俺より上だが、王国守備隊としては俺の2年後位に入って来た奴だ。


「アヒム!」


 ハグをした後、改めて俺達を見渡し、知った顔がいる事を喜ぶアヒム。


「ハンスにリタ! クラウスも久しぶりだなぁ。ちょこちょこ、知らない顔もいるが、まあ元気そうで何よりだ!」


 直接、砦守備隊に入隊したメンバー、リディア、ヘンリック、そしてなりたてホヤホヤのアデリナを紹介する。


「そうかそうか。頑張ってくれよ? さて、取り敢えず、懐かしむのは後にしようか。謁見に来たんだって?」


 こいつはエッカルトを知らない。事件はこいつが入隊する1年前に起こった事だからだ。

 簡単に成り行きを説明する。


「なるほどなるほど。そういうことなら……いや、王の御判断にお任せしようか。ただ、俺が思うにお前らかなり運が良いぞ。タイミングが良い。急いで、王に会うといい。案内しよう」


 ん? と思ったが、どっちにしても、王には早く会いたい。


「わかった。案内を頼む」


 そうして俺達とアヒムは連れ立って城に入り、3階の王の間に入る。


「失礼します。マッツ・オーウェン、謁見に参りま……」

「マァァァァァッツ!! 久しぶりやのう! 今か今かと待っとったぞ!!」


 相好を崩し、近寄ってきたディミトリアス王に力一杯、抱きつかれる。


 60近いが、元々はどちらかと言うと武人であったらしく、非常に良いガタイをしている。まだまだマッチョマンだ。

 髭は整えており、鼻の下と顎に綺麗な白髭がある。

 皮鎧の上に、真っ赤なガウンを羽織り、マントは金糸で装飾され、足首の辺りまである長いものだ。


 そして、この人は冠を嫌がり、昔から行事事以外ではまず、被らない。


「……ご、御健康そうで何よりです」

「いやいや、最近、肩が回らんでなッ! 四十肩という奴かのう!」


 そう言いながら、肩をグルングルン回し、玉座に戻る。


 四十じゃねぇし! 肩も機嫌良さそうだがな。

 恐らく、全員がそう思っただろう。


「さあ、積もる話もあるが…… 先に、例の件を片付けようか?」

「はい。ヘンリック、エッカルトを中へ」


 頷き、外に待たせていたエッカルトを中に入れる。後ろ手と猿履はしたままだ。


「おお。お前も懲りんやっちゃのう……」


 エッカルトはディミトリアス王を一瞥するが、特に何も態度に表さず、じっとしている。


「ハンスから貰った手紙で事情はおおよそ把握はしている」


 そこまで言って、俺の方を見る。


「要はこいつが何を企んでいたのか、どう実現しようとしていたのか、わかればいいんだろう?」

「はい。仰せの通りで」


 そう返すと、急に自慢げな顔になり、腕を組んで踏ん反り返る。


「フッフッフ。エッカルト、お前、自分に『読心』なんてムリムリっと思っとるやろ?」


 エッカルトは何も言わないが(言えないのだが)、心なしか、ニヤッとした、ように見える。


「ムハハハハ! 残念だったのう、エッカルト! たまったま! 今、この国に史上最高の魔術師が訪れていようとはの! 入れ! この世で超人に最も近しい魔術師、《放浪者》コンスタンティン・グローマン!」


 自信満々な王から出たその名前。


 その名前を聞いた瞬間、エッカルトの表情が凍りついた!


 俺も……その名は記憶にあった。



 そして、玉座の横の垂れ幕から現れたのは、王の口から出た修飾語とは不釣り合いな、1人の美少年だった。


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