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第20話 ランディア王都へ(2)

 

 アデリナがリディアと再会を喜びあっている間、俺達は皆、ポカーンとしていた。


 そりゃそうだ。


『シシ』の連中は彼女を見たことが無いんだし、俺達だって、来るって聞いてなかったんだから!


 どうやら、リディアだけは知っていた気がするな。まあ、別にいいんだけど。


「マッツにーぃさん!」


 どうやら、リディアとの時間が終わったらしい。アデリナが俺の所まで駆け寄って来た。


「どうしたんだよ、アデリナ。何でこんなとこにいるんだ」

「へへへ。私も連れてって!」

「「「「はい?」」」」



 ー


 マルコと、俺達、王都行きメンバー、リディアとヘルマンにアデリナを加えた9人は、食堂に戻り、飯を食いながら話をすることにした。



「とりあえず、わかるように話してくれ」


 俺の左に座ったアデリナに聞く。


「わかった! えっとね。私、ツヴァリアで危ない所を助けてもらって、マッツ兄さんに一目惚れしてしまったの!」


「ブーーーーーーーーーーーッッッ」


 食ってた飯を思いっきり対面のクラウスに向けて吹き出してしまう。


「…………………… 隊長ぉ~~……」

「う……ごめんよ。クラウス」


 あまりにもはっきり言われて硬直してしまう。


「……モテモテね。マッツ」


 クラウスの横にいるリタが冷ややかな視線を送ってくる。いや、俺、悪くないだろ…… クラウスには悪い事したが。


「マッツ、お前、こんな小さい子まで……」

「ハーーーンス・シュターーール! お前、今、何か勘違いしてるぜ?」

「……で、お嬢さんは、こんなとこまで押掛け女房になりに来たのかい?」


 ヘルマンが話を戻してくれる。


「うん! それもあるんだけど」

「あるんかい!」

「私も『タカ』の兵隊さんになる! そんで『タカ』の人達に聞いたんだけど、みんな王都に行くんでしょう? 私も連れてって!」

「ワガママか!」


 頭を抱える。


 別に若くして兵隊になることはおかしくない。ヘンリックも13歳位で兵士になった筈だ。


「ちなみに……アデリナさんは、おいくつなんですか?」


 顔を拭きながらクラウスが質問する。


「17だよ!」

「うえぇ? 意外にいってるじゃないか」


 どっちかってーと、もう大人だ。歳だけは。

 ハンスが真顔で口を挟む。


「見た目が幼いからな。どうしても子供に見えてしまう。だが、歳どうこうというより、兵隊なんかになってどうするのだ? 君はラシカ村に家族や仲間がいるのだろう? 親御さんは反対してないのか?」

「ん。お母さんは今実家に帰ってていないんだけど、お父さんは、頑張ってマッツさん落として来なって応援してくれたよ?」


 もう一度、頭を抱える。

 何か言わなければ、と言葉を探す。


「あのな…… 同好会じゃないんだぞ……。そんな気軽に……」

「気軽じゃないよ! 一大決心だよ! 私にしては珍しく、数日考えたんだよ!」

「腕はどうなんだ?」


 マルコが守備隊長らしい質問を投げる。


「腕はいいです。ゴブリンロードを2発で倒してましたし、エッカルトを射抜いたのもこの子ですから」


 俺が代わりにそう答えると、マルコはヒュ~~ッと口笛を鳴らす。


「なら、別に兵隊になるのは構わんじゃないか。砦守備隊への加入は、王都への申請は必要無く、各砦長に一任されている。何に引っかかってるんだ?」

「まあ、そうなんですけど。……いや、そうなんですけどね?」


 マルコの言う事は一理ある。

 確かにあの腕なら、むしろこちらからお願いしたい位だ。


 きっと……軽い。


 いちいち、受け応えが軽いんだ、この子は。

 本当に考えて来たの?というのが、非常に分かりにくい。


「マッツ。アデリナは1人でここまで来たのよ。まさか、追い返すつもり?」


 リディアがアデリナを庇う。彼女も賛成派だな。いや、俺も反対、という訳ではない。


「わかったよ。オーケーオーケー。アデリナ、君はたった今から、『タカ』の一員だ。俺の言う事はよく聞くんだぞ?」

「ありがとう!」


 ……わかってるのか? うーむ。俺が悩んでしまう。


「よかったわね! アデリナ!」

「あのさ、リディア。アデリナが来る事、知ってたんじゃないの?」

「知ってたわ! ただ、本当に来るかどうかわからなかったの。どこに来るかわからなかったし、もう少し早く来ると思ってたし……」

「どこで知ったの?」

「ラシカ村で、みんな飲んでベロベロになってた時よ。アデリナに連れられて外に出て、兵士になりたいって相談を受けたのよ」


 ああ……あの時か。そういえば2人で外に出かけてたな。


「なるほど。で、押し掛けてきちゃいなさい、とアドバイスしたってわけか」

「まあ、そうね」

「王都行きはどうするんだ?」


 ヘンリックがもう1つのご要望について議題に上げる。


「そっちはもとより構わない。兵士じゃないんだったら王都まで一緒に行くだけ、『タカ』の兵士になったのなら、1度、王様に会ってみてもいいんじゃないか?」

「やった!! ありがと! マッツ兄さん大好き!!!」


 チュッ



 ……え?



 何か、柔らかいものが頬っぺたに……



 あれ? 今、ひょっとして……



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



 俺の敵意センサーが危険を察知する。


「ア~~~ドゥェ~~~リ~~~ナ~~~!! ンマ~~~ァ~~~ッツゥゥゥゥ~~~!!!」


 伝説のモンスター、ゴルゴンのように、蛇になった髪の毛を逆立て……というのは言い過ぎだが、ド級の殺気を漲らせているのは確かだ。


 ヘルマンとリタが一目散に食堂から逃げる。酒宴の恐怖が蘇ったのだろう。


 もし詠唱されたら、今日の『連弾』は間違いなく、発動してしまう。


 いや、これも俺、悪くないだろ!!


「待て、落ち着け! リディア。お前も王都に行ってきたらいいじゃないか。 いや、むしろ、そのまま『タカ』守備隊になっていいんだぞ」


 マルコが落ち着いて、諭すように言う。


 リディアの変身が解け、いつもの可愛いリディアに戻る。さすがはマルコ隊長だ。


「え……本当ですか?」

「本当だとも。さっきもその話、してたんだよな? マッツ」

「は、はい……本当だよ? リディア」

「……行く。私も『タカ』メンバーとして、行ってきます!」

「うん。一緒に行こう」


 リディアがつかつかと俺の所に来る。


「アデリナ! いつまでひっついてるのよ!」


 アデリナが俺の腕にくっついていた。気付かなかった……恐怖で!


「リディア姉さん、超怖いよ!」


 さらにひっつくアデリナ。


「調子乗り過ぎ!」


 そう言って、リディアは優しくアデリナの頭をコツンと叩いた。



 ―


 その夜、部屋を用意されてそれぞれ名残惜しそうに別れる。

 半年に1回位は来てもいいな、と思った。


 そんな事を考えていると、ドアの向こうに人の気配がする。


「誰だ?」

「………………マッツ……起きてた?」

「リディア!?」


 ドアを開けると神妙な面持ちのリディアが立っている。風呂上がりなのか、まだ髪の毛が少し濡れており、可愛いウールのジャージ姿に着替えている。


「どうしたの?」

「あの……マッツ……」


 どうしたんだ?

 リディアにしてはえらく歯切れが悪い。


「まあ、入れよ」

「……うん」


 とりあえず中にいれ、暖かい紅茶をいれる。

 無言で紅茶をチビチビ飲んでいる。何か、言いに来たんだと思ったが。


 ま、気が済むまでいればいいさ。


 5分ほど、そうしていただろうか。不意にリディアが口を開く。


「あの……今日はありがとう。私の事をマルコ隊長と話し合っていてくれて」

「ん? ああ。何だそんな事か。あれは……」


 マルコ隊長が言い出したんだーー と言おうとして、突然、いい匂いに包まれた。



 ーー チュッ



 え!?


 ……全身に電気が走り、体が硬直する。


 ドキドキドキドキ……


 アデリナとは反対の右頬に、薄く紅茶の香りとシャンプーのいい匂いが残る。


 おかしい。同じ(シャンプー)を使っている筈なのに。


 ドアを開け、走り去っていくのがスローモーションに見える。


 まさか、時空魔法?


 去り際、


「また明日ね! おやすみ!」


 と言われた気がするが、定かではない ーー


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