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第97話 放浪者 vs 破壊者


 ゴトゴトゴトッッ


 パラパラパラ……



 壁の中から2人の男が、体についた土を払いながら出てくる。



「あれは!」


 リディアが思わず、手を口の前に持ってくる。


 ゴトフリートは無表情のまま、2人の男の挙動を見守っている。


 だが、ボルイェは明らかに狼狽している。

 手が震え、後ずさりし始める。



「ふぅ〜〜〜やれやれですな、先生。先生の言う通り、ここから脱出できそうですぞ!」


 そう言った男はおよそ百歳にはなろうかという風貌、だが、それに似つかわしく無い真っ赤なローブを羽織り、楽しそうにもう1人の少年に話しかける。


「そうみたいだけど……取り込み中の邪魔しちゃったかな?」


 一方、『先生』と呼ばれている黒髪の美少年。とんがり帽子をかぶって青いローブを羽織っている。身長はリディアとほぼ変わらない。


「お、お前……何故……ここに!?」


 ボルイェが少年に向かい、恐々、声をかける。


「おや、誰かと思えば、ボルイェじゃないか。君こそこんな所で何をしてるんだ。また、悪だくみかい?」


「い……いや……」


 少年の視線がボルイェから、ボルイェの前にある氷塊に移る。


「む……彼女は、見た事があるぞ。どこだったか……」


「あれは! 先生! ランディアの小娘ですね! マッツ・オーウェンの仲間です!」


 その名前が出た事で、ようやくリディアの呪縛が解ける。


「あんた! エッカルト!!」


 そう、壁から出てきた2人、少年の風貌を持つ1人は齢200歳を超える『放浪者コンスタンティン』、そしてもう1人の老人は、昔、ランディアで自分達を散々苦しめ、コンスタンティンが旅の共にと連れて行った、エッカルトだった。


「何……?」


 視線をリディアに向け、驚愕の表情を見せるエッカルト。


「ゲェェェェェェェェェ!! お前、あの時の小娘!」


 だが、すぐにキリッと取り繕い、悪そうな笑みを浮かべるエッカルト。


「クックック……ほう。あの時の小娘ではないか。何か私に用かね?」


「あんたになんか用は無いわ。しかも、今更、格好つけたって無駄よ! 『先生! 先生!』って、もう聞いちゃったもの」


「何だとぅ〜〜〜ええい、相変わらず小生意気な女め!!」


 すると、それまで黙っていたコンスタンティンがリディアに気付く。


「君は……君もランディアの王都で会った女の子だね! リディア、だったか……ちょっと見ない間に、素晴らしい力を身に付けたようだ。エッカルト、君、圧倒的に負けてるよ? もっと精進しなきゃね」


「えええ! 何ですってぇぇ!!」


 ガックリと項垂れるエッカルト。


 その時!


 ボルイェの方向から、ブハァッッッと、声がする。


 リディアが視線を向けると、氷塊から解き放たれたリタが地面に転がっていた。


「リタさん!!」


 駆け寄るリディア。



「放浪者……手を出すのかい?」


 少し顎を引きながら、牽制するようにボルイェが言う。


 コンスタンティンはリディアと話しながら、それと同時にリタにかけられた『死の大氷塊』の魔法を解いていた。


 ボルイェは、目の前にリタとリディアがいるにも関わらず、手が出せない。コンスタンティンの立ち位置がはっきりわからないからだ。


『放浪者』と呼ばれた美しい()()は、微笑を浮かべてボルイェに視線を移す。


「彼らと君が戦っていて、君が正義な訳はないと判断した。偏見だけどね。見た所、彼らの形勢が悪いようだし、嫌でなければ手助けしようと思うがどうだろう?」


 最後はリディアに向けて発せられた言葉だ。


「嫌なんてとんでもない! コンスタンティンさん! 是非! やっちゃって下さい!!」


 リディアにとっては、今、マッツと同じ位に頼れる助っ人の登場だ。


「あはは! 明るい子だね!!」



「じゃあ、あれは俺達の敵なんだな?」


 ゴトフリートは事情を掴めていないが、話の流れからそう判断、ボルイェに確認を取る。


「残念ながら、そのようだ。油断するな。あいつの力は私より……上だ」


 ボルイェがジリジリと後ずさりしながらも、言葉を返す。


「あんたは……私達が相手よ!!」


 復活から大して時間が経っていないが、リタが飛び出す。どうやら、コンスタンティンにヒールをかけてもらったらしい。


 だが、相変わらず、刃が通らない。


「彼女はリタというのか。そして珍しい双剣使い、ひょっとすると……。エッカルト、彼女にこの迷宮で見つけた剣を投げてやってくれ」


「えええ〜〜〜本気ですか、先生! あれはアスガルドの将軍に頼まれた剣なのでは? それに、売れば相当な値になりますよ!?」


 目を剥いて驚くエッカルト。


「いいさ。剣が彼女を選ばなければ後で返してもらうし、そうでなければ、彼女が持っていても良いものさ」


「……先生は欲が無さすぎですよ、ブツブツ……それ! リタとやら! 受け取るがいい!!」


 エッカルトが大きな荷物袋の中から一本の剣を取り出し、リタの方向に投げる。


 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!


 交戦中のリタだが、サミュエルの長剣をかいくぐり、まるで吸い寄せられるように、それはリタの左手に収まる。


「やっぱり……そんな気がしたんだ!」


 嬉しそうにコンスタンティンが叫ぶ。


「『雷神の極撃(シュラガットパール)』!!」


 コンスタンティンがリタに気を取られている隙を狙い、最強の雷撃魔法を出すボルイェ。


 もはや、洞窟を壊しては……などは考えていないのだろう。次々と魔法を繰り出すボルイェ。


「『水神の極撃(アーキュガットパール)』!!」


「『炎神の極撃(フラムガットパール)』!!」


 それぞれの属性の竜神イメージがコンスタンティンを襲う!


「ひぃええぇぇぇ!!」


 エッカルトがコソコソとコンスタンティンの背中に隠れる。


 ボルイェが唱えた呪文の余波で、リディアやリタ、ゴトフリートにまで影響が及ぶ。


「落ち着け、ボルイェ! 何やってんだ、俺まで食らうじゃねぇかよ!」


 ボルイェは極撃を撃ち尽くし、肩でハァハァと息をしていた。


「ふぅぅぅ……うううう……うわ……わわわわわ!」


 ボルイェの顔にみるみる恐怖の色が浮かぶ。


 リディアとリタは強力な結界により守られており、一切のダメージを受けていない。


「やれやれ。まだそんなレベルかい? 悪い事ばっかりしてるから成長しないんじゃないのか?」


 そして、コンスタンティン。

 彼もまた、平然と元居た場所に立っている。


 やや童顔ながらも美しい顔の造形を持つ彼が、少し顔を歪めて手をボルイェの方に差し出す……!


「ハッ!!」


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 ボルイェは衝撃波で吹っ飛ばされる。

 そして、それだけではない。ボルイェは口から血を吐いて吹っ飛んでいく。つまり、届いている、という事だ。


(ヒムニヤ様の完全無詠唱魔法と同じ!!)


 リディアがそう思ったと同時に、ウガァァァァ!! という悲鳴がリタの方から聞こえてくる。


「ウグ……ア……て……めぇ……」


 ポタポタ……


 ゴトフリートの首筋から左横腹にかけて、明らかに剣で切られた傷が一筋、そしてそこから夥しい出血!


「凄いわ、この剣……! あれだけ斬っても効かなかったのに……」


 リタも呆然として左手に持った、素晴らしく綺麗な青色に輝く剣を見ている。


「くそっ……たれがぁぁ!!!」


 振り下ろす怒りの一撃!


 一瞬、出足が遅れるリタ!


「!!」


「『絶対障壁(アブソル・バギアン)』!!」


 リディアの、いや、この世において最強の防御スペルが復活した!


「おお! 凄い!!!」


「何だってぇ〜〜〜!!」


 コンスタンティンとエッカルトが共に声を上げる。


 リディアの『絶対障壁』に感嘆の目を向けながらも、この時、既にコンスタンティンは左腕一本でボルイェを始末してしまっていた。


 実は、最初の一撃で完全に戦意を喪失していたボルイェ。


 元々、突然、コンスタンティンが現れて愕然としていた所に、改めて圧倒的な力の差を見せつけられたのだ。


 コンスタンティンが離れた場所から手をグッと握る度に、首が締め付けられ、もはや完全に諦めたボルイェは、いとも簡単に失神してしまった。



 リディアがリタを魔法で守った瞬間、ゴトフリートの打ち下ろしの剣を左の肩口に受けてしまったリタ。


 ダメージは無いが、体勢を崩してしまう。コンスタンティンから渡された剣を右手に持ち替え、下段から横に斬り払う。


 斬った先はゴトフリートの獅子の顔の付け根、喉元のあたりだ。打ち下ろし、そこに体重を乗せたため、上半身がリタの手に届く位置まで降りてきていた。


 ゴトフリートは声にならない奇声を発し、辺りに鮮血が飛び散る!


 ズ―――ン……


 半獣戦士は遂に片膝をつき、そして、うつ伏せに倒れた。



 不意に背後で爆発音。

 リタ達が通ってきた道の方向だ。


「マッツ!」


 リディアがへたり込みながら、笑顔で待ち受ける。

 塞がれた通路を『爆』で破壊したのに違いない、と今度は確信を持つ。


「リディア! 遅くなってすまん!!」


「大丈夫か!!」


 マッツとヘンリックが走り寄ってくる。


「マッツ!! ようやく会えたね!」


「ん? コ……コンスタンティンじゃないか!!」


 マッツが驚き、そして、喜色満面の表情を見せる。

 すぐにヘンリックが、側にいた老人の姿を見つけた。


「おい、あれは……エッカルトじゃないのか?」


「え? ……ああ。そうだろうな。一緒に旅してたからな。派手なローブ、着やがって」


 へたり込んだリディアを無理に起こそうとせず、屈んだマッツが、驚きもせずに言葉を返す。


 そのマッツだけには何とか虚勢を張ろうというのか、エッカルトは胸を張り、言葉を投げる。


「クックック……マッツ・オーウェン……久しぶりだな……」


 それを聞いて、チラッとエッカルトを見やるが、一切動じないマッツ。そして、その腕の中のリディアが、噴き出してしまう。



「プッ……だからさ。もう無理だってエッカルト。あんたの今のキャラは、そんなのじゃないでしょ?」




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