はじめてのフレンド
[レベル6になりました。]
《クイックレイ》を使うようになってから面白いほどモンスターに当たりだした。
“ハイランドイーグル”は空を飛びまわり依然として当たりにくいが、他のモンスターには問題なく当たるようになった。おかげでレベルアップするスピードも上がっている。
「どうやったらそんなに攻撃が当たるんですか?」
突然声をかけられてびっくりしてしまった。振り返ると興味津々といった表情でこちらを見つめている少年がいた。
「あぁ、突然すみません。僕はタリィズと言います。さっきログインしたばかりで早速レベル上げに来たんですが、どうにも攻撃が当たらなくて…。」
そう困った表情を見せるカフェの名前みたいな少年は150cmくらいの小柄な身長で、黄緑の髪の毛に深緑の瞳、きれいな顔立ちだがどこかまだ幼さが残っている。まだ学生なのだろうか。
なんだかんだ他のプレイヤ-と話すのはこれが初めてなため少し緊張する。
「俺はダニエル。よろしくな。実は俺もさっきまで全然当たらなかったんだ。」
そう挨拶を交わしながらさっき自分が見つけた発見を説明しながら実際にモンスターに攻撃を当てて見せてみた。
「ほんとだ、初期の魔法よりも速い!イメージで速度も変わるなんて気づきませんでした。」
タリィズは目をキラキラと輝かせながら俺の方をじっと見つめてくる。なんだか居心地が悪い…。
「そんなすごいことじゃないと思うんだが…、きっとこれくらいのこと他のプレイヤ-だって思いついているだろ。掲示板とかにはもう上がってると思うし。」
「別にいいじゃないですか、僕は教えてもらって初めて気づいたし、それを教えてくれたのがダニエルさんだった。大事なのはこの2点です。それにドヤ顔で言いまわるのではなく、謙虚な態度でいるダニエルさんがとても好印象なんです。もしよろしければフレンド登録もお願いします。」
なんかすごい過大評価だな…。
自己肯定感が低いから単にそこまですごいと思えないだけなんだが、でも、こんな風に素直に自分の気持ちを言えるタリィズに俺も好印象を覚えた。
「そんな持ち上げなくていいから…。それとこちらこそフレンドよろしく。」
そう言ってフレンド申請を送った。
「わぁ!ありがとうございます。」
こうして俺にフレンド第1号ができた。タリィズは友だちと一緒にプレイする予定だが、夕方からしか時間が合わないらしく、それまでレベリングをすることにしたらしい。
「そういえば、タリィズは何の属性を取得してるんだ?」
「僕は“火”と“草”ですね。火は《ファイアボール》草は《リーフ》という初期の攻撃魔法があります。そのあたりはどの属性も同じようですね。」
「攻撃魔法は全属性にあるんだな。補助系のもあるのか?俺は光が《ライト》、水が《ウォッシュ》なんだが。」
「ありますよ。火が《ウォーム》、草が《グロウ》ですね。」
「そうなのか。また使う機会があったら見せてほしいな。」
「もちろんです!定期的に会って情報交換できたらいいですね。」
ステータスやスキルを人に教えること、聞くことは基本的にマナー違反となっている。初期で覚えるものは全員一緒だから問題ないとは思うがまだ初対面だしあまり深くは聞かないようにした。
「それと、俺だけ勝手にタメ口を使ってしまっているが、タリィズ君もタメ口にしてほしい。」
「全然気にしていませんでした。すみませんクセで敬語になっちゃって…でも、タメ口にするよ!改めてよろしく!…そう言えば“魔術教会”に入った?」
「魔術教会?なんだそれ?」
「“他のゲームでいうところのギルド”と近くのプレイヤ-さんが言ってた。プレイヤーが降り立った広場の一角にあったんだけど…。」
気づいていなかった…。
最初の広場にあるということは、まずそこに行けってことじゃないか。
「魔術師として登録を行うと【白の魔術書】というアイテムがもらえるよ。あとはクエストを受けたり、パーティの募集ができたりするんだって。」
「なんてこった。全く気付いていなかったよ。ありがとう、早速いってみる。」
と言ってもどうせならレベルを10まであげてしまいたい。
その後、タリィズと別れてから再度レベル上げを行うことにした。