気づきと変化
結局やることは他のゲームと同じ…フィールドでレベル上げだ。
《レイ》と《アクアボール》を使いながらモンスターを倒しレベルは4になった。
そこまでゲーム廃人ではないが他の国を選択したプレイヤーが既にアドバンテージを得ている可能性を考えると焦りを感じる。無難に【グランマグナ】にしとけばよかったか?
“山”と言っても木が鬱蒼としている山ではなく、高山の岩肌が見えている山といった感じだ。けっこう遠くまで見渡せ、周りでは同じようにプレイヤーがモンスターと戦っている。
今のところであったモンスターは狼型のモンスター“マウンテンウルフ”、一見岩のように見えて実は大きな陸ガメのモンスター“ロックタートル”、ちょこまかと動き回る小さな灰色のうさぎ“ヴォルクラビット”、空から攻撃を仕掛けてくる“ハイランドイーグル”の4種類。
アノラックさんが言っていた通りそこまでレベルは高くないようで、攻撃を何発か当てれば倒すことができる。
そう…「何発か当てれば」…だ。ロックタートルは動きが鈍いからいいとして、他のモンスターは動きが素早いため当てることが難しい。このフィールドにやってきてから1時間ほど経つがまだレベル4だ…。精神的にもつかれてきたぞ。
魔法だけでは接近されたときに致命的だと思い出てくる前に短剣を購入しておいた。
〔初心者の短剣〕
攻撃力はそこまで高くない代わりに耐久値が存在しない。護身用に誰もが1本は持っている短剣。
レベルひと桁の俺にはちょうどいい武器だろう…。短剣を購入した時点で【短剣術】というスキルが生えた。
また、山地で動き回って戦っていたためか【地形戦術(山地)】というスキルも取得した。
【短剣術】LV.2
短剣を用いた攻撃に補正(微)
[アーツ]
《スピアショット》RT5秒
短剣を使った刺突。クリティカルが出やすい。
【地形戦術(山地)】LV.3 パッシブスキル
山地での行動に補正(微)
「いやぁ、しかしグラフィックと演出のクオリティは流石としか言いようがないな。」
休憩がてら、周囲に敵がいないことを確認してから丁度いい高さの岩に腰かける。右手を突き出して《レイ》を放つことを意識すると、身体全体から腕の方へ向かって光が集約していき、手のひらの前で光の弾丸が生成され、正面に放たれる。かなり精密な演出だ。光が集約する時なんて、自分の皮膚の下の血管がほのかに光って手のひらの方へ光が流れていく様子まで表現されているんだから。
…でも、攻撃する時にこれだけ派手に光ったら相手に丸わかりだよな。対モンスターならまだしも、対人戦の場合ばれないか?この光を隠すことってできないのかな…。
そう思い立って先程同様に《レイ》を放とうとするが、今度は光を抑えることを強くイメージする。すると…。
「おぉ!!さっきより光が小さくなった…って、あれ?」
イメージした通り腕に収束する光は先程より抑えられていたが、手のひらから放った光の弾丸自体が小さく、しかも放った途中で消えてしまった。
「失敗?ってわけでもないのか?だって実際放たれたし、MP だって…あれ、1しか減ってない。え、これってMP5消費固定じゃないの?」
思い立って、次は通常より多く光が出ることをイメージしてみる。するとさっきよりもはるかに強く腕が光り、通常の3倍ほどの太さの光の弾丸が放たれた。
「うわぁ…」
もう一度ステータス画面を確認してみると…。
《レイ》
線状の光を放つ攻撃
消費MP…5MP
↓
《レイ》
線状の光を放つ攻撃
基礎消費 MP5
消費MPに応じて威力が変化する。
と説明文が変化していた。
「まじか!!」
これは喜べばいいのか悲しめばいいのか…いや、これに気づいたのは大きいことだが、完全に先入観に騙されていた。「想像次第で魔術が創れる」ことは確かに知っていたが、それは新しい魔術を創ることだとばかり思っていた。初期に持っている魔術スキルは名前と説明が最初から表示されていたからてっきり完成された魔法なのかと思っていた。
そうか、魔術を創れるだけじゃなくて、既存の魔術もアレンジできるということだ。しかもこの感じだと、どこかの施設に行ったり、レベルアップをしたりしなくても、その場で魔術が創れそうな気がする。
よし、こうなったら魔術創作、そして魔術アレンジ祭りだ!!