知識の国
お久しぶりです。
【知識の国“ウィズダム”】
ここは全ての魔術の知識が集まる国。
そして降り立ったのは【ウィズダム】の王都【ソフィリア】。広大な街並みの奥に巨大な“樹”がそびえ立っている。
「あれが【英知の樹】…、とそれもそうだがほとんど現実世界にいる感覚と変わらないな…」
そう呟きながら手のひらを何度か握って感触を確かめる。
“完全没入型のVRMMO”が開発され10年以上。技術の進歩はここまで来たか…。
見渡す景色は現実そのものだが、目に入ってくる人々の服装や道具などまさにファンタジーといったものを感じさせる。
立っているのはどうやら街の一角にある広場で、後ろを振り返ると直径5メートルはあるだろう巨大な円盤(鏡のようで中は煙のようなものが揺らいでいる)が立っており、そこから自分と同じプレイヤーらしき人達がどんどん出現してきている。ワープホールのようなものだろうか。
ずっと立っていることが邪魔になると気づき急いで広場の端に移動する。
そうだステータスを確認してみよう。
【ダニエル】LV.1 所持金10000z
【適性魔術属性】[光][水]
【魔術スキル】属性表示ON
[光]
《ライト》
発光体を出現させる
消費MP…1MPで5秒間発光する
《レイ》
線状の光を放つ攻撃
消費MP…5MP
[水]
《ウォッシュ》
継続的に水を出す
消費MP…2秒で1MP
《アクアボール》
水でできた球体を投げつける
消費MP…5MP
[無]
《イベントリ》
アイテムボックス
容量…レベルに依存
【スキル】
【魔術スキル】【スキル】という風に表示されるのか…。
選んだ属性の初歩的な魔法は使えるのと…[無]ってのは属性が無い魔法ということか?普通のアイテムボックスだから別枠にしてあるのかな。
そしてだいたい初期のキャラクタークリエイトで選択できる【スキル】だが…。最初は何も無い…の?
まあいいや。まずは街をぶらぶらしながら情報収集かな。
このゲームにはチュートリアルもなければ、ストーリーの導入も無い。一応大きなストーリーはあるらしいが、どうすればストーリーが進行するのかは分からない。初心者にはなかなかハードな設定だ。
CWOの公式掲示板があるらしく、そこで早速情報共有は行われているらしいが、はじまって早々そんな大きな情報は転がっていないだろうからログアウトした時にでも見てみよう。
初めに降り立つ国の選択があったが、もしかしなくてもどの国に降り立つかでアドバンテージが変わってくる。
【原初の国“グランマグナ”】は実戦的魔術。攻撃魔法に特化したビルディングができる。
【技術の国“アースタシア”】は魔法工学。ゴーレム錬成や魔道具。
【自然の国“フィアール”】は精霊魔法。
【太古の国“万桜”】は他とは異なる珍しい魔術。
【おまかせ】だとランダムになる変わりに、確率で全然違う場所に降り立つことができる。
じゃあ【知識の国“ウィズダム”】は何がアドバンテージなのかというと…。
俺は遠くの巨木を見つめた。
…情報量だ。
あそこに行けばおそらく今までたくさんの魔術師が創り上げてきた魔術を知ることができる。
街で情報収集しながら【英知の樹】を目指すことにした。