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The Creation of Witchcraft Online(魔術創造)-最強魔術師への道-  作者: える
第一章 魔術の深淵を覗く時
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苔ゴリラ

「私たちが向かうのはここ【王都ソフィリア】から北に進んだ先、国境都市【ベルドゥーガ】です。」


「国境都市……?」


「はい、私たちが住んでいる【知識の国“ウィズダム”】という国は、【技術の国“アースタシア”】と北で接しています。【ウィズダム】と【アースタシア】は遥か昔には敵対関係でしたが、今は友好国となり技術協力も行っています。戦時中、国境には国を隔てる大きな壁が建てられたのですが、友好国となった今その壁を中心とした都市が出来上がっています。」


「クラリネちゃん、詳しいんだね!」


「いえ、これくらいのことは【ウィズダム】に住む人なら誰でも知っている一般常識です。」


「一般常識って言ったって、まだ8歳だよ? 私は未だに都道府県すら覚えてなのにぃ……。」


「とどうふけん……?」


「フィフィはもうちょっと勉強しなさい。 都道府県っていうのは【ソフィリア】や【ベルドゥーガ】みたいな都市のようなものかな。」


「へぇ……、そういえば皆さんは別の世界から来たとエイドス様が言っていました。また色々教えてください。」


 会って間もないはずが、アクアとフィフィはすぐにクラリネと打ち解けたようだ。最初が少し険悪なムードから始まってしまったので、クラリネも楽しそうにしていて安心した。そんな3人の様子を眺めながら俺は少し後ろを勇者エクスと歩いていた。エイドスさんとの会話の後、5人で今後の予定を確認して、それぞれの現実でのことも考慮して翌日(今日)の朝からクエストを進めていくことにした。

 俺たちは【ソフィリア】の北側、裏山道フィールドをまっすぐ進んで目的地へ向かうことになった。今まで裏山道フィールドの近場でしかレベリングなどをしてこなかったので先へ進むのは初めてだ。巨大な山に挟まれた山道をまっすぐ進んでいく。


「そういえばダニエルってイベントのランキングに載ってなかったかい?」


「よく覚えているな……第1パートでランクインしたよ。」


「いや、公式サイトでダイジェスト動画がアップされていてね、君と……ディオネさんだったかな? の共闘を見させてもらったよ。いやぁ、あれは熱かった!!」


 うそ、そんな動画あがってたんだ……気づいてなかった。勇者エクスは名前に自分で「勇者」を付けるだけあって初めはキャラが濃いと思っていたが、話してみると割と常識人といった印象だった。ロールプレイというやつだろうか?


「そういえばさっきのアシタカって人も確かイベント総合のトップ2だった気がするね……掲示板の有名人スレにも挙がっていたし、かなり強い人なのだろう。」


 そうだ! アシタカって名前、どこかで見た覚えがあったが、イベントの総合ランキングでディオネを抜いて第2位だった人だ。先ほどの様子を見てると、ソロで攻略を進めている人なのかもしれないな。



 しばらく進んでいると、枯木しか生えていなかったごつごつした山肌に草木が増えてきた。岩には苔なども生えており、気候が変わってきているようだ。【ウィズダム】のほとんどは山脈地帯で、首都【ソフィリア】も標高の高い場所にある。そのため、あまり草木も生えていないらしい。緑が増えてきたということは山を降りてきたということだろう。


「前方にモンスターです!」


 アクアの声で前方に目を向けると2メートルほどの緑色のゴリラのようなモンスター(以下:苔ゴリラ)が4足歩行で近づいてきていた。数は5体。相手もこちらの存在に気づいたようで、鳴き声を上げている。


「かなりでかいな……遠くにいるうちは範囲魔法で迎撃、近づいてきたら1体ずつ対処できるか?」


「「わかった!!」」


 手短に指示を出すと、皆が一斉に返事をして動き出した。

 苔ゴリラたちが向かってくる前に動きを封じられればいいが……


《パイライトハザード》


 俺が頭の中で念じると変化はすぐに訪れた。グラグラと地震のような地響きがあった後、突如左右から苔ゴリラを挟むように金色の雪崩が迫る。5体のうち中心にいた2体は危険を察知したようで、こちらへ向かって走ることで範囲外に逃げた。何事かと残り3体の苔ゴリラたちが左右に目をやるがもう遅い。両側から挟む形で苔ゴリラを飲み込んだ。


「やったか?」


「いや、まだだ!」


 金色の雪崩に飲まれたものの、タフなモンスターなのか、怒った様子で地面を叩きならす。しかしその場からは動けない。雪崩が終わったとも金色の物質が足元に滞留し、そこに嵌っている苔ゴリラの足が結晶化して動かせなくなっている。上半身を必死に動かして抜け出そうともがく。


 《パイライトハザード》はイベントの報酬で入手したゴールドディスク。パイライト……黄鉄鉱おうてっこうと呼ばれる鉱物が雪崩のように敵へ迫り、滞留したパイライトに触れると結晶化する。範囲攻撃と相手への行動阻害のデバフを与えられる魔法だ。


「2体は俺が食い止めよう! 動けない3体を誰か頼む!」


 そう言いながら、勇者エクスがこちらへ向かってくる苔ゴリラ2体に向かっていく。さて、3体の止めは……。


「私にやらせてください!」


 そう言葉を発したのは銀髪の少女クラリネ。


 クラリネは両手を祈るように胸の前で握り、眼を瞑る。胸に抱えていた分厚い魔術書は宙に浮かび輝きだす。


「“なんじ 天より堕ちる数多の業火で 全てを焼き尽くしたまえ” 炎の豪雨フラムドロップスコール


 もがく苔ゴリラたちの頭上に突然雨が……炎の雨が降り注いだ。にわか雨のように降り注ぐ炎の雨が苔ゴリラの表面に生えている苔を燃やし、表皮を焼いて、遂には肉を焦がした。

 結晶化した足だけを残して燃え尽きた苔ゴリラは光の泡となって消え、それと同時にパイライトの残留も消えた。


「す、すごいクラリネちゃん!! 今のなに!?」


「まじやっべー……」


「驚いてるとこ悪いが、エクスの援護をするぞ!」


 クラリネの魔術に見とれている間も、勇者エクスがひとりで2体の苔ゴリラの動きを封じている。魔術師には似合わない金属製の鎧と、手には騎士が持つような直剣を握る勇者エクスはやはり前衛タイプのようだ。ただ不思議なのは、あれだけの重装備に反して動きがかなり速い。剣を振り回しながら苔ゴリラ2体の攻撃をいなし、そのうえで反撃を加えている。 


「いくよ! 《アイスピックニードル》!!」


 仲間が攻撃に加わったことに気づいた勇者エクスが剣を大きめに振るって後ろに跳躍する。大振りの剣が当たった苔ゴリラたちはノックバックでよろけ、空中から発射された鋭い氷柱つららのような氷の針が、苔ゴリラに命中する。


「ごめんごめん でっかいのいくよ~!! 」


 ウェーブがかかった赤い髪で、黒色の三角帽を被っているフィフィはいかにも“魔女”といった装いだ。そんなフィフィが両手を上にかかげ特大の火球を発生させる。


「どっかーん!!」


 そう言いながら巨大な火球を苔ゴリラへと放り投げる。直撃した火球は爆発を起こし、2体の苔ゴリラも遂には光の泡となった。


「いやぁ~、やっぱみんなで戦うの楽しいね~。特にクラリんの魔術がチョ~かっこいい! なにあれ!!」


 フィフィのべた褒めでクラリネが赤面する。「クラリん」って変なあだ名付けられていることには気づいていない様子……。


「ありがとうございます。あれも皆さんと同じ魔術です。ただ、私は詠唱を行わないと発動できないので少し時間がかかるのですが……。」


「詠唱……なんてあったんだ。」


「はい。私は生まれた時から[言霊の魔導士]という職業ジョブを創造神様から授けられており、強力なマナジーを保有する代わりに詠唱無しでは魔術が発動できないのです。」


「「言霊の魔導士??」」


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