レジェンドディスク
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島の中心部には大きな山がそびえ立っており、その周りを森が囲っている。その山には飛竜の巣があるという。その山の麓をめざしながら、先程出くわした純白の髪の剣士と歩く。
「でも、ドラゴンを倒すって本気で言ってんの?」
「当たり前じゃない。本当にいるのよ?信じられない?」
「いや、ゲームだし存在はしてるんだろうけど、倒せない設定の場合もあるだろ。」
「あぁ、そういう心配なら大丈夫よ。飛竜を倒すっていうクエストもあるらしいし……飛竜のお腹が妙な膨らみ方をしてるの。」
「なんか、やけに詳しいな。それで……妙な膨らみ方?」
「そう、なにやら宝箱を飲み込んだみたいな四角い膨らみがあるの。もうちょっとデザインどうにかならなかったの?って言いたいけど、おそらく倒したら宝箱が出てくる。アイテムか、大量のトレジャーメダル。」
なるほど……たしかにありそうな設定だ。しかし、わざわざボスモンスターみたいな奴と闘うそこまでのメリットはあるのだろうか。コイツならプレイヤー狩ってる方が稼げそうだけど……。
「俺を連れていく必要あるか?そもそもお前は対モンスターより対プレイヤーの方が好きだろ?」
「まぁまぁ、落ち着いて話を聴きなさい。飛竜関連のクエストは色々あるそうなの、“飛竜を倒せ”とか“飛竜の鱗を持ってこい”とか……その飛竜関連のクエストのひとつに“飛竜の卵を持ち帰る”ってのもあるのよ。ダニエルのクエストって確か食材を持って行くクエストで、食材によって報酬が変わるって言ってたわよね?」
「……飛竜の卵をゲットして届ければ、レアな報酬が期待できると?」
「その通り。このクエスト、チャレンジしている人を何人か見てたけど、おそらく未だに誰も成功していない。かなり難易度が高いクエストだから、そのぶん卵の希少性もかなり高い。その原因は、卵を手に入れると必ず現れる飛竜の存在よ。飛竜に倒されると卵の位置もリセットされる鬼畜仕様。だからこそ、先に飛竜を倒す。」
「それだけでもかなり無茶な作戦だと思うんだけど……で、結局お前の旨みはなんだ?」
「飛竜を倒すだけでもまあ楽しいんだけど……卵を守る飛竜を倒せば、必然的に巣へ卵を取りに行くプレイヤーの数は増えると思わない?」
そう言いながらディオネはニヤリと笑った。そうか、こいつは飛竜を倒した後、それに釣られてやってくるプレイヤーを一網打尽にしようとしているのか……。そのためにどれだけ強いか分からない飛竜を倒すということか。リアルではこんな猟奇的な性格じゃないんだけどな。
「相変わらずゲームになると性格ひん曲がってんな。あと、一番重要な確認なんだけど、俺らで飛竜を倒せる算段はあるのか?」
俺の問いかけに、いっそう笑みを深めて、そっと何かを差し出した。
「こ、これって…」
彼女の手では虹色のディスクが光り輝いている。
「レジェンドディスク…」
「イケメンなおじさんをキルしたら落ちた。ねぇ、今回のイベントのMMディスクのインストールの説明覚えてる?」
「インストールの説明? 1枚のディスクでプレイヤーは1回しかインストールできない……でも、違うプレイヤーがそれを手にしたらインストールできるんだっけ? だからプレイヤーを倒して1枚奪えるようになってるんだろ?」
「よく覚えてるわね。でも、運営が公開したルールでは、プレイヤーが変わるって別に“奪う”には限定してないのよね。」
「それって……つまり……」
[プレイヤー“ディオネ”からアイテム取引の申請が届いています。]
ログの表示によってディオネがやらんとしていることを確信する。
「私が拾ったディスクを全部渡すから、ダニエルのディスクも全部ちょーだい。」
既に誰かがインストールしたディスクでも、別のプレイヤ-であれば新たにインストールすることができる。それは“譲り受けたモノ”でももちろん可能ということだ。もしかしたら気づいているプレイヤーは他にもいるかもしれないが、そんな抜け道があったのか……。というか、完全にソロ用のイベントだと思っていたし、万が一この可能性に気づいたとしても、相手のことを信用できなければ近づいてアイテム取引することすらできない。
こうして、俺とディオネは2人分の魔法をそれぞれインストールした。
《ボルカニックシャークバイト》
レジェンドディスク
遍く《あまねく》を溶かす高温の溶岩が降り注ぐとき、人々は鮫の幻影を見たと云う。
いやいや、なんかブロンズとかシルバーと説明文のスタイルが違うんだが……。
「それ、一回使ったけど……かなりえげつないよ? ゴールドも1枚あるけど、レジェンドは次元が違う。」
レジェンド級の魔法は“ぶっ壊れ”のようだ。ディオネの言葉を聞いてもう一度受け取ったディスクを見返すと確かにゴールドのディスクも1枚あった。
《ブラッドレイン》
ゴールドディスク
広範囲にわたって圧縮した水の針を降らせる。雨が上がったその地面は血の色に染まる。
うん、なんかゴールドディスクもちょっと詩的な表現になっている。運営はブロンズとシルバーに関しては手を抜いているようだ。
「着いたよ。」
ディオネの声で目的地に到着したことを知る。鬱蒼とした木々の間から明るい光が射している。
木の陰に隠れながらそっと覗くと、目の前には大きな山がそびえ立っていた。
「これ……のぼるの?」
「さすがにそれは時間が足りない……安心して、山のふもとに大きな洞穴があって、その中に飛竜の巣がある。……お、噂をすれば。」
轟々と強風が吹いたと思うと、地面に巨大な影が浮かび上がった。その陰の出どころを見ようと空を見上げると灰色の大きな竜がいた。
「すげぇ……本物の竜だ。」
「私も初めて見たときは鳥肌立ったわ。……また犠牲者が出るわ。」
「ん?」
竜が飛んで向かう先に目をやると、ひとりのプレイヤーが焦りながら麓の斜面を走り下りている。手にはスイカのような大きな卵が抱えられていた。
「ご愁傷様。」
よたよたと走りながら下るプレイヤーの頭上に影が近づく。プレイヤーも飛竜の存在には気づいているが、両手が塞がっている今、どうすることもできない。
飛竜が大きな口を開け、何かを放つ。
岩だ。
ひとつひとつがラグビーボールくらいの形と大きさをした岩が散弾のようにまき散らされる。
なす術もなく、数多の岩に貫かれてプレイヤーは光の泡となった。
「あれが今から私たちが倒す【岩核の飛竜】……“ローカ・ルグラ”よ」
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