表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/56

品子の青春52

お話の続きです。

どうぞよろしくお願いします。


渡辺の父、昭雄は村の助役をしている。

なので、息子の結婚にあたって、二人が暮らす新居のことだの色々と、毎日通っている役場で上手いことスムーズにことを進めてくれた。

入籍の日取りや結婚式のこと、そして、両家で折半した二人の新居の費用やそれのリノベーションにかかる費用、それに二人が使う家具や家電製品の話など、結婚する本人達を中心にどんどんと新しい生活に向けての話は進んでいった。

特に家の修理や内装工事など、この雪深い時期、どうしたものかと悩んでいたのだが、しろやマクロ達の宇宙船の力で家の周りだけバリアに覆われたように雪が融けて、作業がとてもやりやすくなった。

宇宙の技術で内装や外装など、約一週間ほどの短い期間ですっかりリフォームし終わったのだった。

「やぁ…しろちゃん達いねがったら…」

ほぼ毎日家の改修工事に来ていた昭三を始めとして、忠助や三上と南、江上や山口のとっつあんなどの男連中は皆、気の良い宇宙人がいてくれて、そして優しい宇宙人と仲良くなっていて本当に本当に良かったと心から思うのだった。

もしも、しろ達がいなかったとしたら、自分達だけではどうにもならないだろうから、多分、どこかのリノベーションを専門でやっている工務店などのプロに頼んでいたことだろう。

そうなると、やらしい話、金も今の倍どころじゃ済まなかったのではないか?

昭三は渡辺の父達とそんな話をしては、「なっ!」なんてお互いの意思確認のおかしな相づちを打つのだった。

しろやマクロ達曰く「二人への結婚のお祝い」なんだそうで、あの「素晴らしい」と皆に絶賛されたトイレまでつけてくれたのには、品子達だけでなく集落の全員も皆驚いたし、羨ましいと思ったのだった。

すっかり完成した新居を訪れた渡辺と品子、そして渡辺の両親とまるみに美晴達は、その出来栄えにたいそう驚いた。

「うわぁ~!すご~い!素敵ぃ~!ホンドにいいのぉ~!わぁ~!」

花嫁になる品子の率直な感想は、みんなの感想でもあった。

特に渡辺の両親に至っては、家が新しくなったこともさることながら、話ではさんざん聞いていたけれどまだ会ったことがなかった「宇宙人」のしろやマクロ達に直接会ってみると、やはりみんなと同じく最初は一瞬ぎょっとしたけれど、彼らの人柄に触れ会話をすることで親しみが増し、助役の力で彼らに住民票の発行手続きまでしてくれる運びとなった。

まだ、家具も何も運び込んでいない、新しく生まれ変わった家で、集落の皆を集めて完成祝いの宴会が開かれた。

南達の結婚式の時のように、各家庭からご馳走を持ち寄り皆でわいわい食べるだけ食べて、飲むだけ飲んだ。

そして慣れた形で渡辺と品子の新しい家の敷地に持ってきていた大きな宇宙船の中で、それぞれゆっくり体を休めた。

雪が大分融けてきているとはいえ、3月の夜はまだまだ寒いので、宇宙船ホテルはとてもありがたい存在だった。

渡辺の父、昭雄も母、清子も生まれて初めて泊まる宇宙船の快適さの虜になったのは言うまでもなかった。


渡辺と品子の結婚式は、5月の連休中に決まった。

それだと渡辺だけでなく、皆長いお休みがとれるし、暑くもなく寒くもない丁度良い新緑の季節だというので新婚生活をスタートさせるにはもってこいなのではないかとなったからだった。

そうなると、暮れに行った南達の結婚式の様にこの集落で式をやり、その後違う場所でもう一度洋風の結婚式をするのではないか?

いや、絶対に違う場所でもやった方が良い!

南達の時に一度ハワイに行っているから、今度は違うところの方がいい。

だったら、品子の姉、ダフネ家族がいるイタリアなんかどうだろう?

そんな話になった。

まぁ、確かによくよく考えてみると、イタリアからダフネ達家族がこちらにやってくる渡航費用などを考えると、うかつに「おいで!」とは言えなかった。

だったら、折角宇宙人のしろ達が所有するでっかい宇宙船があるのだから、みんなタダで行けるのだからと、結婚式に招待されている集落の面々は「イタリアに行きたい!」という無言の圧力をかけてきた。

ハワイに行けなかった渡辺の両親も、イタリア行きに大賛成。

しかも、一度泊まってみて信じられないほど快適だった宇宙船に乗って行けるとなると、渡辺の両親の興奮の度合いも更に高まるのだった。

そんな訳で渡辺と品子の結婚式は、5月の連休中、イタリアでとなった。

兄妹なのだから当然出席するローリー一家とヒルダ一家には、事前に郵便でワープマシンを人数分だけ送っておいた。

きちんと説明書と注意書きを添えて送ったにもかかわらず、やっぱり美晴の母、真紀子とヒルダの末娘琴子は一緒に遊んでいた友達のあやちゃんまで連れてワープマシンで集落にある宇宙船に来てしまっていた。

そして、「ごめんね」などと何度も謝ってユーンやヨーンに小型の宇宙船で自宅まで送ってもらう失態をしたのだった。

宇宙人と初めて会った琴子と友達のあやちゃんの興奮は、相当なものだった。

「絶対に内緒だからね!」と口を酸っぱくして釘を刺しておいたけれど、やはり小4は小4。

黙って内緒にしておくことなんて、出来る訳がなかった。

琴子のクラス中にしろ達に会った話や、宇宙船に乗った話が広まったのだが、皆信じてはくれなかった。

それでも、琴子とあやちゃんは二人だけの秘密を共有している喜びでいっぱいなのだった。


「えっ!嘘っ!マジでっ!やった~っ!」

とっくに行きたい大学の合格発表があった柚鶴も、第一志望の男子校に無事合格できたヒルダの息子の一郎も、自分達の合否のせいで品子達の結婚式に行けなかったらと不安だったので、合格通知が届いた時は喜びもひとしおだった。

ただ単に結婚式にお呼ばれしてイタリアに行けるという歓びだけではなく、そのイタリアへ行く移動手段が「宇宙船」というのも、気持ちをざわざわさせる一因となっていた。

ローリー達は夏に一度しろちゃんに会っているので、宇宙人に対する免疫はいくらかできていた。

だが、話でしか聞いていないヒルダ達家族とは言っても、一度うっかりワープマシンで宇宙船に来てしまいしろやマクロ達には会っている琴子以外の家族なのだが、噂の宇宙人達に会うことも宇宙船でイタリアへ行くという話以上にドキドキ、ワクワクなのだった。

迎える側のイタリアにいるダフネ達も、「宇宙船に乗って全員で来る」というのがどういうことなのか、まるで想像がつかないのだけれど何故か小躍りするほどワクワクしていたのだった。

事前に「少し広めの、学校のグラウンドぐらいの広さの、人目につかない場所」を探してもらうことになったのだが、それはあっさり確保できた。

ダフネの旦那さんの実家の庭を貸してもらえることになったから。

ワイン用の葡萄畑が広がるそこの土地は広く、時折友人や近所の方、親戚などを集めたガーデンパーティーを行う場所。

戦争前の先々代が当主だった頃は、景気づけに移動サーカスや移動動物園やマジックショーにお芝居、それに歌手を呼んだりすることもあったそうだ。

なので、大勢のお客さんを呼べる環境はばっちり整っているらしかった。

5月の結婚式に向けて着々と準備は進行していった。

それはさながら「お祭り」の準備の様で、関わる者は皆、言葉では上手く説明できるはずもない楽しさで満ち溢れているのだった。

そんな中、みんなのテンションとは裏腹に、どんどん静まり元気がなくなっていく者もいた。

品子が、品子だけが一人祭りのノリについていけない様子。

だが、毎日やたらと楽しそうな面々は誰も品子のそんな様子には気づいていないのだった。

結婚式が押し迫ったある晴れた日の午後、品子はかごを編んでいる作業部屋から姿を消した。


「ただいまぁ~!あれぇ~!じいちゃ~ん!品子ちゃ~ん!今、帰りましたよぉ~!」

「お~!美晴がぁ?おかえりぃ~!疲れだべぇ…あんなぁ、品子達の家もなぁ…大分、さまになっできだよぉ…さっきまでよ、忠助と一緒に、ほれ、軽トラさ品子の持ってっていいって言うやづ積んでよぉ~…置いて来たんだわぁ…あれ?品子は?あんにゃろ、まんだ作業部屋さいるんだべが…全ぐ、飯の支度もろくにしねぇで…」

「ああ、じいちゃん…ご飯なら僕が作るよ!」

「そうがぁ?わりぃなぁ、美晴…おめぇだって仕事で疲れでんのに…あ、ちょっど待で…なんだ?誰だ?おい?…んあ?ヒルちゃん?何だべ?」

不意に鳴った昭三の携帯電話の相手は、玉龍市に住んでいるヒルダからだった。

「あんれ…何だべ?ヒルちゃんがぁ?父さんだども…あ、ちょっど待っでけれ…誰が来だみでぇだわ…ちょっどそんまま、電話さ切んねぇで待ってでけれよ…なっ!」

昭三は携帯電話を手にしたまま、玄関に出るとそこには青い顔をした春子と忠助、その後ろにはジェレミーとジェレミーの頭の上にちょこんと乗っかったもふもふの姿があった。

「昭三さん…あのよ…しろちゃん…来でねぇべが?どこ探しでもいねぇんだわ…どうしよう…昭三さん…マクロ君達にも聞いて探してもらってんだども…しろちゃん、通信機持ってってないみてぇで…」

「ちょっ…ちょっど待ってでけるが?今、ちょんどヒルちゃんがら電話あっでそのまんまだもんだがらよ…なっ…わりぃな…まぁ、中さ入ってけれ…美晴!何か飲みもん出してやってけれ!…ああ、ヒルちゃん、待だせでわりぃんだども…ちょっどこっぢも立て込んでて…えっ?んあっ?へっ?あ、ちょっ…ちょっどそんまま…待ってけれ…」

昭三はどたどたと大きな足音を立てながら、美晴達がいるリビングに戻って来ると驚いた様子でヒルダからの情報を伝えたのだった。

「あのよ!品子どしろちゃん…今、ヒルちゃんどこさいるんだってよ…」

「えっ!」

「詳しぐはまだわがんねぇんだども…心配すんなっでよ…そんでな…今日のとごろは遅いがら、二人共あっちゃ泊まるっでよ…」

「なしてぇ」

春子は訳がわからず涙ぐんだ。

「わがんねぇ…だども、ヒルちゃんどこさいるって言うがら…とりあえずは安心しで大丈夫だがら…はぁ…はぁ…」

昭三は腰が抜けたようにその場にへたり込むと、美晴に「わりぃ、おらさもお茶けれ。」と頼んだ。

その夜、どこの空にもまんまるいお月様が明るく光っていた。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

お話はまだ続きますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ