スキル選択
既に不安になってきました。
「うぅ」
どどど、という音が聞こえ目を覚ました。
目を覚ますと先ほどまでの路地ではなく、目の前に草原が広がっていた。
「は?」
理解が追い付かない。
いったい何故僕はこんなところにいる。僕が気を失っている間に運ばれたのだろうか?
しかしそんなことをする意味が分からない。
もしかしてドッキリだろうか。
だとすればカラーボールを投げられたのにも、警察官においかけられたのにも納得がいく。
しかし、今日の僕はおかしかった。いきなり逃げたり、挑発するような言葉を言ったりするのは僕らしくない。
「いったいどうなってんだろうな」
思わず独り言を漏らしてしまった。
気が緩んだのか、それとも途方に暮れたせいか。どちらにしても答えを期待していたわけじゃなかった。
「それは、私がお教えいたしましょう」
「うわっ」
その声が聞こえたときに軽く跳んでしまった。期待していない答えを返されるのは色々心臓に悪いらしい。
「誰?」
目の前に金髪のボインな女の子がいた。うん、かなりなボインだ。
「?」
おっと、怪しまれたらしい。流石にじっと見るのはいけない。こういうのはチラ見をするからいいのだ。
……これで混乱が収まった僕はどうかと思う。
「あなたにこの世界のことを教えて差し上げましょう」
「この世界?」
まるで世界がもう一つあるような言い方だ。
すると金髪ボインな女の子はあっさりと言った。
「はい、ここはアレンティアと呼ばれる異世界です」
「異世界!?」
異世界とはネット小説とかによくあるあの異世界だろうか?魔法とかが存在するあの異世界だろうか?
だとしたらそれはすごいことだ。
「魔法とか使えるんですか」
「才能にもよりますが」
使えるらしい。
内心でかなり喜んだ。このまま目の前のものを掴んでしまいたくなる。もちろん目の前のものと言えば……。
はっ!いかん、思考がどんどん腐っている。
「あの~」
金髪ボインの女の子はこちらを上目づかいで見てきた。
変質者丸出しだったのだろうか。だとしたらやばいな。
「続きを言ってもよろしいでしょうか?」
「えっ、ああ、どうぞどうぞ」
「?」
慌てて先を促すと疑問に思われながらも先を続けてくれた。
「まずはこの世界でのあなたのステータスを確認してください」
おお、異世界らしい。
「ステータスと唱えれば確認できま」
「ステータス」
金髪ボインの女の子が言い終わるよりも早く唱えた。自分のステータスがどれほどのものか期待で胸がいっぱいになっていた。
樫本 光紀
種族:人間
Lv 1
HP 100/100
MP 50/50
筋力 40
頑丈 30
敏捷 35
器用 3
知力 50
運 100
スキル
鑑定 異世界語 日本語 英語(義務教育) 努力 痛み分け 未定
SP 0
……何だろうか。この世界でどれくらいか分からないがかなり酷い気がする。
それに突っ込みどころが多すぎる。
「ねえ、この世界の基準でどれくらいになるの?」
「そうですね。一般人より少し強いくらいでしょうか。知力と運を除いて」
うん、そこは分かっていた。
まず器用が低すぎる。そして運が高すぎる。
運が高いというのも普通に疑問だ。僕ここに来るまで運が悪かったと思うんだ。
「このスキルって」
努力ってなんだよ!?見るからに使えないだろ。
日本語はまだ分かるが、英語はいらないだろ。しかも義務教育って……。
「痛み分け?」
どんなスキルだ?
「それは受けたダメージの半分を誰かに移すことができます」
おお、使えそうなスキルじゃないか。
もしかしたら何も使えないスキルで終わるのかと思った。
「ただ、ランダムで働くので敵味方は関係ありません」
使い勝手が悪そうなスキルだが、何もないよりもマシだろう。
「この未定って言うのは」
「ああ、それはあなたがスキルを一つだけ好きに選ぶことができる枠です」
なるほど、それはいい。良いスキルを一つ取ることにしよう。
「どうやって選べばいいの?」
「未定のところを押せばスキル表が出てきます」
早速未定を押してスキル表を見る。
そこで絶句した。
「お、多すぎる」
軽く見ても五千は超えているだろう。これは長丁場になりそうだ。
画面をじっくりと見ながらスクロールする。
そこに金髪ボインの女の子が付け足してきた。
「ちなみに未定を押してから5分を超えると無効になりますのでご注意ください」
「5分!?」
短すぎる!
5分でこんな数の中から選べるか!
「後、2分です」
もう3分も経っていたか。
剣術、槍術、火魔法、水魔法、料理、掃除。
様々なスキルがある中で何をとるか迷う。もちろん料理、掃除をとる気はないが。
「後、1分です」
ええい、鬱陶しい。
そう言えば気になることが一つできた。
「スキルってのは後でも取れるもんですか?」
「ええ、練度を増していけば」
そうか、じゃあこれでいい。
武器を使おうにも今は手元にない。
魔法かと迷ったが詠唱とかが必要になるかもしれない。
だから今はこれでいい。
「終わりました」
「何にしたんですか?」
「痛覚軽減です」
「……」
沈黙が痛い。
「……なんでそんなの取ったんですか」
「痛いのが嫌だからです」
即答したら可哀そうな目で見られた。
「だったらもう少しましなのがあったでしょうに」
しょうがないじゃないか時間が無かったんだから。
良いのも見つけていたのだがそこまでまたスクロールしないといけないとなると時間がかかりすぎるんだ。
「ステータスに関してはこれで終わりです」
もう一度ステータスを確認した。
樫本 光紀
種族:人間
Lv 1
HP 100/100
MP 50/50
筋力 40
頑丈 30
敏捷 35
器用 3
知力 50
運 100
スキル
鑑定 異世界語 日本語 英語(義務教育) 努力 痛み分け 痛覚軽減
SP 0
……うん、頑張ろう。
スキル例
体術、乗馬、飼育、洗濯、浄化、沸騰、我慢、睡眠、反射、光魔法、裁縫、韋駄天、弱腰、不眠、挑発、長髪、威嚇、天邪鬼、薄い。