表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
95/206

暗黒界の番犬

『グオォォォォォォォォ!!』


 ケルベロスは太い右腕を挙げ、石でできた屋根を大きい音を立てて殴った。砕かれた石はレオ達を目掛けて銃弾のように飛んできた。


「っ!!危ねぇぞっ!!」


 4人は家と家の間の影に隠れ、降り注ぐ重い石を回避した。石が地に落ちるたびに石畳を砕く音が立ち、砂埃が舞い始めた。砂埃の中でワイルドオークの低い悲鳴も聞こえる。


「仲間を無視して攻撃っ!?」

「チィッ、とんでもねぇ野郎だ。」

「たっ…倒せますかね……」


 しばらくすると石の雨は止んだ。4人は影から飛び出し、砂埃の中に立った。先ほどまで踏んでいた石畳は砕かれ、踏み締めるたびに液体のような感触が感じられる。血だ。前後をよく見ると、無数のワイルドオークが血を流して倒れている。


「こいつはひでぇ…」


 中には背中や腹部を抉られ、骨や内臓が見えるのもあった。辺りに血の臭いが漂う。4人は背中合わせになった。


「どこへ行ったのでしょうか…?砂埃でよく見えません……」

「みんな、どこから来るか分からな…っ!!」


 その時、レオの目の前の砂埃が一瞬で晴れ、目の前からケルベロスが突進してきた。


「ぅおあっ!!」

「ネネカっ!!」


 レオは即座にネネカを押して家の影に飛ばし、アランとスフィルは真上に跳んで屋根の上に立った。


「っ!“ガードファントム”!…ぅっ!!」


 ネネカはレオの前に透明な薄い壁をつくり、流れるように背中で着地した。レオは剣を横に構え、ケルベロスの突進を受け止めるように迎えた。


『グルルルルッ!!』

「ぅくっ…!!………っ!!」


 ケルベロスは物凄い力でレオを押し出す。レオは歯を食い縛り、脚に力を込めて耐えるものの、なかなか止まらない。すると、


「“ギガ・クラッシャー”っ!!」

「オラオラオラオラオラァッ!!」


 アランは屋根から飛び掛かり、ケルベロスの背中に重い右足を突き出して蹴った。スフィルは屋根の上からマシンガンの弾丸の雨を降らせた。


『ッ!!グオォォォォォォォォ!!』

「ぅっあぁっ!!」


 ケルベロスは突進をやめ、雄叫びとともに3つの頭を勢いよく上げると、レオは真っ直ぐ飛ばされ、奥の家の壁を破壊して暗い家の中に転がった。


「ハッ…!!レオさんっ!!」

「“スクリュー・ストレート”っ!!」


 ケルベロスの背の上に乗ったアランが、真下を目掛けて右腕に竜巻を纏わせて構えた。すると、ケルベロスは体を右に傾け、家の壁に勢いよく背中を叩き付けた。


「ぉぁああああっ!!」

「アランさんっ!!」

「チッ!!」


 スフィルは体勢を低くし、マシンガンのマガジンを取り替えた。そして再び屋根の上から下を覗くと、そこにケルベロスは居なかった。


「っ!?なにっ!?」


 見えるのは、破壊された石の壁の下でうつ伏せに倒れるアランと、それに回復魔法をかけるネネカの姿だけだ。


「おいっ!!ヤツはどこ行ったぁっ!?」

「わっ、分かりませんっ……!ただ、もの凄く早かったですっ……!」

「………んだと……」


 スフィルはそう言って後ろを向くと、鋭い6つの目でこちらを見つめるケルベロスが居た。前足で屋根を掴み、後ろ足で立っている。


「ぉわぁっ!!」

『グオォォォォォ!!』


 スフィルは突然の光景に怯み、一歩後ろに下がると、足を踏み外して落下した。落下の直前にケルベロスは爪を立てた左手を横に振り、スフィルの肩から少量の血を掻き出した。


「うぐっ!!」

「スフィルさんっ!!大丈夫ですかっ!?」


 スフィルは着地し、左の肩を右手で強く押さえた。右手はすぐに赤く染まり、亀裂が入った石畳に血を1滴ずつ垂らした。


「大丈夫…なわけ……ねぇだろ…っ。いってぇ…なぁ…」

「……ぅぐっ……」


 アランは起き上がり、スフィルの赤い肩を見た。


「……あ〜…それ痛いヤツだ。」

「アランさんっ!気を取り戻しましたか、良かったです。」

「あぁ、すまねぇな。スフィルの怪我を治したらレオの所へ行ってくれ。良いな?」

「ぁ…はいっ。分かりました。」


 アランはネネカの顔を見て頷き、屋根へ跳び乗った。


「さぁ〜てと、どこ行きやがった……」


 アランは屋根と屋根の間をなぞるように見た。すると、左の方にケルベロスの動く大きな背中が見えた。動きが鈍い。


「ふっ、そこかっ!!」


 アランがケルベロス目掛けて飛び出したその時、ケルベロスは走り出し、アランの視界から姿を消した。


「…っ、なにっ!?」


 アランは背後に気配を感じ、すぐに振り返った。そこには唸り声をあげ、よだれを垂らすケルベロスが居た。


「”スクリュー・ストレート“っ!!」

『グオォォォッ!!』


 アランはケルベロスの1つの頭に竜巻を放ち、距離をとった。


「危ねぇっ…背中裂かれるところだった……」

『グオォォォォォォ……』


 するとケルベロスの3つの口から禍々しい色の煙が溢れるように出始めた。


「……何だ?」

『グオォォォォォォォォ!!!』


 ケルベロスが大きく口を開けると、3つの口から禍々しい色の波動が発射され、アランを吹き飛ばした。


「がはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 飛ばされたアランは石の屋根を滑るように転がった。


「………っ…ビーム出すとか……っ…聞いてねぇ……ぞ……」


 アランは硬い石に両手をつけ、跪いた。すると、アランの右にスフィルが着地し、マシンガンを握り締めた。


「とんでもねぇ野郎だな。」

「…肩は…大丈夫なのか……?」

「傷口が塞がっただけだ。痛みは多少残ってる。んでよぉ、1つ考えがある。」


 スフィルは銃口をケルベロスに向けて構えた。


「……考え…?」

「こうすんだよぉっ!!」

『グオォォォォォォォォ!!』


 ケルベロスは2人の方へ走り始めた。するとスフィルは屋根を強く踏み、無数の弾丸を放った。


「あたれぇぇぇぇっ!!」


 弾丸はケルベロスの6つの目を次々と撃ち抜き、ケルベロスの視界を塞いだ。


『グオッ…!!グォォォォォォッ!!』

「ちょっ…おいおいおいおいっ!!」


 ケルベロスは足を止めることなく、2人の方へ突進して来た。アランは横に転がって屋根から降りたが、スフィルは真っ直ぐケルベロスの方へ走り、足と足の間をスライディングしつつ、腹部に無数の弾丸を撃ち込んだ。


『グオォォォォォォォォ!!』


 スフィルは立ち上がり、ケルベロスを見下すようにして見た。


「後はこっちのモンだ。」




「…………っく……」

「レオさんっ。大丈夫ですか…?」


 暗い家の中でレオは目を開けた。目の前には心配そうな顔でこちらを見つめるネネカが居た。


「……アランは……スフィルは……?」

「今、戦ってます。あの、1つ聞きたいのですが……」

「…何?」


 レオはネネカに優しく首を傾げた。家の中は土や埃っぽい臭いがして、あまり良い気分にはなれない。


「レオさんが手に持っているのって……何ですか……?」

「……え?」


 レオの手の下には筒のような細長い物が3本あった。レオはそれを掴み、見つめた。


「………これは………巻物……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ