孤独と恐怖
ライトニングの青い空に昇る太陽が青い海を輝かせる。レオ達4人が乗っている4頭のペガサスは、純白の翼を大きく広げ、綺麗な空を駆ける。
「……」
レオは隣のネネカを見た。ネネカの瞳には海の輝きが映っている。
「……ネネカ…」
「はっ…はい……何でしょうか………?」
ネネカはレオの声を聞いてすぐに振り向いた。ネネカの黒く長い髪が風で靡いている。
「…あの…さ……、謝っておきたくて………。前に、パーニズの病院で約束したよね…。」
「………約束…………っ!」
ネネカの頬が赤くなり、目に潤いが増した。レオは真剣な顔でネネカを見つめるが、ネネカは恥ずかしさのあまりレオの視線から逃れようとしていた。
「デルガドと戦った後、僕はその約束を破ってしまった……ネネカを1人にしてしまった………だから」
「あっ、あれは仕方がないですよっ…!!ぁっ、あと、その約束は忘れて下さいっ…!!………恥ずかしぃ…ですから……」
レオはネネカに向けて強く目を瞑り、その後前を向いた。ネネカはしばらく真下の海を見つめて黙っていた。その頃、レオの後ろでアランとスフィルが小さい声で話していた。
「……そうか………ドーマが…やられたのか……」
「………あぁ。」
「俺も前にパーティメンバーのエルアを失ったから、お前の気持ちは分からんでもない。まぁ1つ言えるとすれば、あまり抱え込むなって事だ。別にお前が悪い訳じゃねぇし。」
スフィルはその言葉を残して空を見上げた。しかし、ある事に気付いて再びアランの方を向いた。
「…あれっ………お前ってドーマと仲悪かったよなぁ…?………そんなに落ち込………。フゥ……だよな……目の前で人が殺されるとこ見たらそうはなるよな。」
「…………」
アランは目を閉じてしばらく黙っていた。ドーマの喜怒哀楽の表情が瞼の真っ暗なスクリーンに映る。その後アランは目をゆっくりと開けて口を開いた。
「俺……ドーマの事が好きだったのかもな。」
「何言ってんだコイツ。」
「見えてきたよ。ケルベリアンだ。」
4人は下に広がる大地の上にポツリとある村を見つめた。村は荒野に囲まれていて、寂しげな雰囲気だ。4人の乗るペガサスはケルベリアンに向かって一直線に駆け出した。
4頭のペガサスはケルベリアンの村の前に着地し、レオ達は荒野に足を着けた。空から見て感じたように、村は静かだ。4人は石畳の上を歩き始めた。
「………静かだな……」
「気を付けて、敵はいつどこから来るか分からないよ。」
石で建てられた家々は苔が生えていて、中には壁が崩れて内部の埃だらけの家具が見える家もあった。家と家の隙間は影で暗くなっており、村の静かさがより恐怖心を引き立てる。気付けば吐息は熱くなり、早くなっていた。
「…チィッ……出るなら出てこいよ……」
「…………!!」
スフィルがマシンガンを強く握ったその時、ネネカが落ちていた枝を踏み、音を立てるとともに多くの足音が迫ってきた。
「…っ!!来るっ!!」
「何だ何だ何だ何だっ!?」
『ギキィィィィィィッ!!』
『バァァギィィィィィィィッ!!』
4人を囲むように大勢の魔物が現れた。両手には斧、鍛え上げられた肉体、頭には牛や鹿のような頭蓋骨を被っている。ワイルドオークだ。
「おいおい、ケルベロスじゃねぇのかよ。」
「レオさん、どうしますか…?」
ネネカの言葉でレオは剣を握り、鞘から引き抜いて構えた。
「全部倒す。アラン、スフィル。行くよっ!!」
「あぁ!!“銀の拳”っ!!」
アランは両腕を銀色に変え、レオと共に飛び掛かった。
「皆殺しだぁぁっ!!」
スフィルはマシンガンを両手で持ち、方向転換とともに無数の弾丸をワイルドオークの胴体に撃ち込んだ。
「オラオラオラオラオラオラァァッ!!」
『ヴホォァァァッ!!』
『ギィィギィィィィッ!!』
アランは重い拳をワイルドオークの腹部に打ち込み、胸部に蹴りを入れて飛ばした。
「こんなモンかよぉっ!!“スクリュー・ストレート”ぉっ!!」
アランは右腕に竜巻きを纏わせて前に突き出し、5体のワイルドオークを吹き飛ばした。
「“回転斬り”っ!!」
レオは群れの真ん中で回転し、周辺のワイルドオークの腹部に鋭い刃を走らせた。
『ヴホォァァァッ!!』
『ヴァウアァァァッ!!』
3体のワイルドオークがレオに飛び掛かってきた。レオは後転をして間合いを取り、右膝を着いた状態で剣の軌跡を放った。
「“ソードテンペスト”っ!!」
軌跡は3体のワイルドオークの首に直撃し、血を噴き出した頭が石畳に転がった。
『ギィィギィィィィッ!!』
1体のワイルドオークがスフィルに斧を振ると、スフィルはマシンガンを横に持ち、斧を受け止めた。
「ウゼェんだよっ…オラァッ!!」
スフィルはワイルドオークの腹を蹴り、間合いを取ってそのワイルドオークの顔面に弾丸を数発撃ち込んだ。
「ハッハァッ!!蜂の巣みてぇだなぁっ!!」
「ふっ!!はぁっ!!どりゃぁっ!!」
アランは複数のワイルドオークの胴体を殴り、1体のワイルドオークの顎に拳を入れて突き上げるとともに高く跳んだ。
「“ライジングアッパー”ぁっ!!」
そしてそのワイルドオークの腹部に右足を置き、勢いよく地面に叩き付けた。
「“ギガ・クラッシャー”ぁぁっ!!」
石畳に大きな亀裂が入り、周辺のワイルドオークを打ち上げて地面に叩き付けた。
『ヴヴォォォォッ………!!』
血を流して倒れる多くのワイルドオークを見て、他のワイルドオークは一足下がり、斧を構えて動揺した。その時。
『ヴァウアァァァッ!!!』
「っ!!何だっ!?」
獣の大きな雄叫びが聞こえた。4人の心臓が一瞬締まり、体中の毛穴が震えた。
「あっ!!あれっ!!」
ネネカは指をさした。3人がその方向を見ると、そこには家と家の屋根からこちらを覗く、3つの頭の巨大な犬がいた。
「っ…出たか。」
ケルベロスだ。6つの黄色い目は鋭く、噛み締める牙の隙間からは大粒のよだれが流れ垂れる。その姿を見たワイルドオーク達は再び斧を強く握り、赤く染まる石畳を踏み締めた。
『グォォォォォォォォォォッ!!!』
「来るよっ!!」




