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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
幻想の星編
91/206

「きっ…………………………!!貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 デルガドは口と胸から血を吐いて叫び、倒れた。


「…………やっ………た…………倒………した……」


 レオは腕から流れ出る血の付いた剣を下ろし、肩の力を抜いた。視線の先で倒れる屍は、地を真っ赤に染め、瞳に艶を失っている。


「…………よかった…………私達…………生きてる…………」


 ネネカは口から言葉を溢し、一筋の涙を頬に流した。砂埃の消えた禍々しい空間は、瞼が重くなるほど静かだった。


「……ぁ…………なぁ…………アラン……」

「…………なんだよ…………ドーマ……」


 潤んだ目をしたドーマは血を流すアランに近寄り、震える口を開いた。


「アタシ達…………倒したんだよな…………」

「…………あぁ………………そうだ…………」

「そっか……ははっ……良かった…………」


 ドーマは下唇を震わせて、涙を流した。そんな彼女の表情に、アランは微笑み体の痛みを堪えた。レオは剣を鞘に入れ、3人の顔を見た。


「アラン……ドーマ……ネネカ…………ありが」











「………………………っ………………なん……………だ…………っ……」


 アランは目を覚ました。気付いた時にはうつ伏せに倒れていた。周辺は砂埃と目眩であまり見えない。しばらくすると、砂埃が徐々に消え、状況を知った。


「…………!!ネネカぁぁっ!!」


 目にしたのは、巨大な魔物の手で地に押さえつけられたネネカの姿だった。魔物の肌は灰色で、翼が生えている。ガーゴイルだ。


「おいっ!!……っ!!返事しろぉっ!!おいっ!!」


 アランは震える腕に力を込め、立ち上がろうとしたが、膝を付くことだけで精一杯だった。ネネカを見て大声を出しても、ネネカは動かない。


「おいネネカぁぁっ!!おいっ!!…………レ…オ……っ!!レオぉっ!!」


 次に目にしたのは、四足歩行の獣の手に押さえつけられたレオの姿だった。レオも動かない。獣の尾は蛇、背にはヤギの頭、頭部はライオン。キマイラだ。


「レオぉっ!!おいっ!!何があったんだよっ!!おいっ!!こっち見ろよぉっ!!」


 レオは動かない。ネネカも動かない。喉を痛めるアランは、2人の姿を見た後、額から流れる汗とともに決して良い事ではない何かを感じた。


「…………ドーマ…………っ!!ドーマぁっ!!」


 アランは辺りを見回した。すると、前の方から声が聞こえた。


「…………ぅ…………ぅぅ…………っ……」

「…………!!ドーマかっ!?ドーマぁっ!!ドー………………」


 目にしたのは、確かにドーマだった。地に足を付けていない。何かに首を絞められていて、苦しそうだ。


「…おい誰だぁっ!!離せよっ!!ドーマを離せよぉっっ!!」

「アンタか…………私の弟を殺したのは…………」

「…っ!!」


 ドーマの前には女が立っていた。女は悪魔のような尾をドーマの首に巻き付けていた。


「…………っ……ア……ランっ…………に……げ………………ぉ…………」

「おいっ…………おいっ…!!おいっっ!!!」


 ドーマは首に巻き付く尾を強く握っていたが、その言葉を溢すと同時に両腕を下ろした。頬から顎にかけて、涙や唾液で濡れていた。ドーマが動かない。


「ドーマぁぁっ!!動けよっ!!返事しろぉっ!!」


 女は左腕を刃に変えた。刃の奇妙な光沢が、アランの瞳と息を狂わせる。アランは力を振り絞り、震える脚でゆっくりと立ち上がった。


「…………誰だ……や………めろぉ…………!!やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 女は左腕を横に振った。女の足元には、ドーマの右腕と下半身と左腕が重たい音とともに落ち、生々しい色の内臓や溢れ出る赤い血で、女の立つ場を赤一色に染めた。その後は尾を離し、動かない上半身をゴミを捨てるように落とした。


「ぉあ゛あ゛あ゛ぁぁああ゛あぁあ゛あ゛ぁぁ゛ああああ゛ぁぁぁあぁああ゛っっっ!!!!」


 アランは右手を握りしめ、歯を食いしばり、力強く地を蹴って、女に飛び掛かった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!」


 女は右手を開いてアランに向け、気功波を放ち、アランを遠くへ飛ばした。


「っがぁっはぁぁぁっ!!!」


 アランの胸部の骨は砕け、息が出来ないほどの衝撃が重く伸し掛かった。飛ばされたアランは、地面に体を叩きつけられ、動かなくなった。


「……ぉ……ぉ………………ぁ…ぁ………」


 女はニヤけた。そして、レオとネネカとアランの倒れる各地面に魔法陣を出し、3人を消した。


「…もがき…苦しめ……人間。」





「………………これが全てっす……」

「…………そんな………酷すぎるよ………………」


 アランが言うと、クレアは涙ながらに口を開いた。夜空の下、パーニズの小屋はいつもとは違った静かさを見せている。


「どうやら、グレイス・カーリーで間違いなさそうだな。ヤツは確か、ダークネスの四天王の1人だったな。」


 エレナスが言うと、マリスは立ち上がり、リュオンを睨んだ。


「さっきグレイスに会ったんだよね?どうして倒さなかったのっ!?」

「ちょっとの時間泳がすだけだ。なぁに、俺の娯楽さ。お前らには関係ない。」

「そんな事して良いわけっ」

「やめて下さいっ!!」


 リュオンとマリスの間にネネカが入った。頬は濡れている。


「ここで争ってはいけません…………。今は……ドーマさんの事を受け入れさせて下さい…………」

「…………ネネカ…」


 ネネカの言葉を聞いて、アランは体の力が抜けた。すると、カウンター席に座っているレオが、グラスの氷の音を鳴らして口を開いた。


「……そう……だね…………受け入れよう…………ゆっくりと………………。大切な仲間…………大切な人が死ぬと………………狂ってしまうほど………………悲しくなるから……………………。」

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