ノンフィクション
「……ぁ…………なぁ…………アラン……」
「…………なんだよ…………ドーマ……」
「アタシ達…………倒したんだよな…………」
「…………あぁ………………そうだ…………」
「そっか……ははっ……良かった…………」
「…おい……ドーマ……何で……泣いてんだよ……」
「…えっ…何でって……みんなとはお別れだから…」
「…………そうだな……エレナス兵長、エルドさん、シルバさん、リュオンさん、クレアさん、ライラさん、マリスさん、ココ…………みんな良い人だったもんな。人じゃないのいるけど……………お…おい、どこ行くんだよ……ドーマ……」
「……え?…………どこって………ふっ…大丈夫だ……アンタに渡しただろ……指輪………それ持ってるだけで、アタシとアンタはいつも一緒さ…………」
「ちょ……待てよ………待てって……………!!ドーマぁぁっ!!」
「ドーマっ!!」
アランは目を覚ました。ぼやける視線の先には、天井が見える。背中は濡れてて冷たい。汗だろうか。すると、横から声が聞こえた。
「お、起きた起きた。大丈夫か?」
シルバの声だ。声を聞いた時にアランは今いる場所がすぐに分かった。ギルド小屋だ。するとアランは夢の事を思い出し、上半身を起こした。その時だった。
「うっ!!……いっ……てぇ…………!!」
アランは急に現れた痛みに耐えきれず、すぐに仰向けになった。
「あっ、アラン君っ!!ダメだよぉ急に動いちゃぁ……」
マリスの声だ。しかし、いつもよりか元気が無い声だ。…いや、そもそも、“いつも”がどうだったかさえ、体の痛みは考えさせてくれない。そしてアランは体中に包帯が巻かれていることに気が付いた。
「あ、安心して。アラン君の傷は、私が見たから。胸の骨が砕けてて、大変だったけど。ゆっくりしていれば回復していくからね。」
「ぅ……くっ…………そう……っすか…………」
アランはそう言って記憶を辿り始めた。
まず、先ほどまでレオとドーマとネネカと共に魔王と戦っていた……その時に頬と手の平を斬られて……腹を蹴られ……雷を受け……巨大な波動で全身を包まれ…………
「………………胸の…………骨…………俺っ……胸なんか…………やられて…………」
「アランさん、何があったのです…?レオさんとドーマさんとネネカさんは…………?」
エルドがカウンター越しに声を掛けてきた。いつもとは違い、皿やワイングラスを持っていない。アランはゆっくりとエルドの方を向いた。
「……そ……そうだ…………レオ……ネネカ…………ドーマ………………………」
アランは上半身を起こし、エルドの顔を見た。白い髪、鼻の下のひげ、紫色の瞳、尖った耳。
「…………………………………………………!!!」
その時、アランは胸を押さえ、過呼吸になった。呼吸をするたび、全身に激しい痛みが響く。目からは熱い涙が溢れ落ちた。
「かぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!」
「ど……どうされましたかっアランさんっ!」
「アラン君っ、しっかりっ!!どうしたのっ…?」
アランは胸を強く押さえ、落ち着こうとしたが、体は思うようにならず、ただ喉が渇く。そして、アランはマリスの方を見た。
空色のポニーテールの髪、白衣姿に赤いマフラー、紫色の瞳、尖った耳。
「かはぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!」
「ゆっくり呼吸をしてください。アランさん。」
そしてアランは、再びエルドの耳を見た。そして体中の痛みを噛み殺して、エルドに飛び掛かった。
「テメェもあの野郎の仲間かぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「…!!アランさんっ!!」
その時、アランは頭上から降り掛かった足に押さえつけられ、頬を床に強く打った。目を開けると、目の前には黄金のハンドガンの銃口があった。リュオンだ。
「おい、こっちは何があったのかを聞いてんだ。答えねぇのなら殺すぞ?」
「ちょっとリュオンっ!!何考えてるの!?銃を下ろしてっ!!」
クレアはアランとリュオンの行動に驚きながらも口を開いた。
「うるせぇ。今のコイツは危険だ。理由は知らんがなぁ。」
「やめなさい。彼は私達の味方で…」
「おいエルド、そもそもその考えが間違いだったんじゃねぇのか?この世界の連中は全員馬鹿だ。人間にわざわざ優しくして軍人にするっていう行動が特に。」
リュオンに頭を踏み付けられたアランは、熱い涙を流しながら、激痛の走る体を揺らすことしか出来なかった。そして、血を吐きながら口を開いた。
「……エルドっ……マリスっ…耳がぁっ……!!尖ってんじゃ…ねぇかぁっ……!!仲間なんだろっ……!!魔王のぉっ……!!」
「フッ、“仲間”だってよ。何年ぶりに聞いた、エルド?お前も言ったらどうだ?耳の事。」
リュオンはタバコを咥えてニヤけた。エルドはその言葉を聞いて、目を閉じた。
「…………エルド……」
「ココさん、良いのです。この事は、アランさん達に出会った時に言えば良かったのです。…………アランさん……騙すつもりは無かったのですが…………実は、私とマリスは…………ダークネスなのです。……それでも、私とマリスは、ライトニングやアランさん達の味方です。信じて下さい。」
その言葉を聞いて、アランはやっと気付いた。先ほどまでの過呼吸は、恐怖心だったということに。そしてアランは体の力を抜き、震えながら泣いた。
「……す……すみませんっ………でしたっ…………」
リュオンは銃を内ポケットに入れ、アランの頭から足を離した。
「アランさん……少しだけでも良いです。……話してくれませんか……何があったのかを……。」
「はっ………………はぃっ…………」
アランは、弱った体を起こし、エルドの優しい顔を見た。
「ダークネスの奴らと戦ってる時に…頭痛がきて……気付いたら……レオとドーマとネネカと一緒に異空間にいて………そこにっ………魔王がいてっ………倒したんですっ…………その後は……何も……覚えてませんっ…………」
「魔王…?」
アランの言葉を聞いて、シルバは一瞬アランを疑った。その後、シルバ達は小さい声で話し始めた。
「……魔王に……会ったのですか…………ちなみに、どんな姿でしたか……?教えて下さい。」
エルドはカウンターから出て、アランの前で片膝をついて問いかけた。
「男でした……。紫色の瞳で……白髪で……小柄で……ちょっと…レオに似てた…………両手に剣を持ってて……左の剣からは……魔法が出た…………」
「…………」
リュオンは腕を組んで話を聞くと、エルドに首を振り、その後はアランを見ることはなかった。エルドはゆっくりと口を開いた。
「…アランさん……討伐、お疲れ様でした。…………良い知らせと、悪い知らせがあります。」
アランは頭を上げた。シルバもココもマリスもクレアもアランの顔に目を向けなくなった。
「……なん……すかっ…………」
「まずは良い知らせから……今、ここで、アランさんは生きています。この様子ならば、レオさんもドーマさんもネネカさんも、どこかで生きている可能性が高いです。我々パーニズ・ギルダーズが協力して探しましょう。」
アランは3人の名前を聞いただけで、少し落ち着いた。その後降りかかる悪い知らせの事など、あまり聞く気にはならなかった。エルドはそんな事も知らず、続けて口を開いた。
「そして……悪い知らせです。………アランさん……あなた達が倒したその男は…………………」
“魔王ではありません”




