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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
75/206

戦線

 兵士と魔物達の雄叫びとともに戦いが始まった。前衛部隊の人々は武器を構え、一直線に走り出した。奇妙に曇りがかった空を騎馬隊のペガサスや火の玉、素早い矢などが大きな音を立てて魔物達の方へ飛んで行く。


『ウオォォォォッ!!』


 前方に3m程の緑の肌をした鬼の群れが現れた。両手に斧を持ち、肉体はゴツゴツしている。オークだ。


「敵の前衛はオークだっ!!怯まず蹴散らせぇっ!!」

「「ぅおおおおぉぉぉぉっ!!」」


 先頭を走るエレナスが言うと、味方の兵士達は大声を出して攻撃を開始した。レオとアランも兵士達に紛れながら、オークに飛び掛かった。


「“スクリュー・ストレート”っ!!」

「“連続斬り”っ!!はぁぁぁぁっ!!」


 オークの赤い血飛沫が顔や鎧に降りかかる。しかし、兵士達はオークの獣臭さなど気にせず、バタバタと倒していく。


「うわぁぁっ!!」

「しまっ……あぁぁっ!!」


2人の兵士の叫び声が聞こえた。斧で裂かれた痛みが声となって、生々しく感じられる。


「どうしたぁっ!?」

「兵長っ!!ネビィとカーダロイがやられましたっ!!」

「チィッ!!やるじゃねぇか……全兵、俺から離れろっ!!」


 エレナスが身の丈程の黒い大剣を構えると、兵士達はエレナスから離れつつ、周りのオークを攻撃した。


「2人分……いや、100人分の痛みをくれてやるっ!!」


 そうエレナスが言うと、黒い鎧と大剣の複数の筋を炎のように赤く光らせ、火炎と共に大剣の刃を回るように走らせた。


「燃えろっ!!“炎王っ大っ回転斬り”ぃっ!!!」


 エレナスの周辺にいたオーク達は叩き斬られた胴体を地に落とし、灰になるまで燃えた。


「全兵っ!!進めぇぇっ!!」

「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」


 エレナスの大剣と鎧の光が消えると、兵士達と共に再び走り出した。町の門の前に立つクレアは周辺にギターの音を響かせた。


「“フォルティッシモ”!!私たちの力、見せてやりなさいっ!!」


 ギターの音を聞いた兵士達の攻撃力は膨れ上がった。


「せりゃぁぁっ!!」

『ウボォォッ!!』


 ペガサスに乗った兵士達は、空から敵に攻撃を放っていた。すると闇の渦から、大勢の空飛ぶ馬のような魔物が現れた。漆黒の肌に竜のような翼、額には二本の角。バイコーンだ。背には肌に血を塗ったゴブリンを乗せている。


『ヒィィィィンッ!!』

「かかって来いっ!!」


 1頭のバイコーンが兵士のペガサスを目掛けて矢のように飛んで来た。兵士達は弓や銃を構え、バイコーンの翼や喉に攻撃した。


「よしっ!!1頭撃破っ!!」

「トネスっ!!避けろぉぉっ!!」

「!?」


 その兵士が気付いた頃には、自分のペガサスの喉は他のバイコーンの角で串刺しにされており、純白の翼は動かなくなっていた。


「そっ……そんなっ…………嘘っ………」


 ペガサスは兵士を下にして真っ逆さまに落ちていった。


「うわぁぁぁぁぁっ!!…………うっ!!」


 兵士は首の骨を折り、ペガサスの下で動かなくなった。


「トネスっ!!………テメェェッ!!」


 兵士は剣を強く握り、角を赤く染めたバイコーンを目掛けて飛んだ。


「仇ぃぃぃぃっ!!……うっ!!がはぁぁっ!!」


 兵士の胸にゴブリンの放った矢が潜るように刺さり、彼は血を吐きながらゆっくりと地に落ちた。


「おいっ!!レオっ!!どこだっ!!」


 血飛沫が舞い狂う戦場の中、アランは魔物を重い拳で殴りながら、レオを大声で呼んだ。


「ここだよアランっ!!大丈夫っ!?」

「俺は平気だっ!!でもやべぇぞっ!!こっちの兵士がもう何人もやられちまっているっ!!」


 その時、1頭の巨大なロックエイプがアランを踏み潰そうと足を上げた。


「アランっ!!危ないっ!!」

「やべぇっ!!」

「沈め。」


 聞き覚えのある声の後に、大きな銃声が響き、ロックエイプが倒れた。


「フゥッ………何してんだ。戦闘中にお喋りとは、かなり自信のある賭けじゃねぇか。え?」

「リュオンさんっ!すみません。」


 リュオンは銃口から出る一筋の煙に息を吹き、ゾロマスク越しに2人を見た。シルクハットに付いた青い羽が揺れている。


「まぁ、そんな勝負師、嫌いじゃぁねぇけどな。」


 リュオンは2人にそんな言葉を残し、黄金のハンドガンを片手に魔物の群れに飛び込んだ。


「…………んまぁ、とにかく…死ぬんじゃねぇぞ……レオ。」

「う……うん。」

「全兵っ!!防御ぉっ!!」


 その時、渦の方向から禍々しい強風が押し出すように吹いて来た。


「うわぁぁぁっ!!」

「なっ何だっ!?何がっ!!」

「しまったっ…!!」


 上空の騎馬隊も強風に耐えきれず、町の防御壁に叩きつけられ、その勢いのまま防御壁を破壊した。


「まずいっ!!防御壁がっ!!」

「すぐに直せっ!!町がやられるぞっ!!」

「はいっ!!」


 町の周辺に立つ僧侶達に紛れて、ネネカも防御壁を張り直した。


「お……おい…………なんだありゃ……」


 ネネカの近くに居たドーマが大きく目を開いて渦の方を見ていた。ドーマが弓矢を下ろしているのを見たネネカはゆっくりとドーマの視線の先を見た。


「…………人……?」




“…………見つけた……”




「……!!うぅっ!!」


 その時、ネネカは頭を押さえて倒れ込んだ。


「おっ……おいっ!!ネネカっ!!しっかりしろっ!!……うっ!!……ぁぁぁっ!!」


 ドーマも頭を押さえて倒れ込んだ。2人の頭に、激しい痛みが走った。痛みに耐える事に精一杯で、周りの音が聞こえない。


「チッ、何なんだ?さっきの風は……!!ぅあぁぁっ!!」

「…!!アランっ!!しっかりっ!!……うっ!!」


 レオとアランも激しい頭痛に耐えられず、倒れ込んだ。今までに感じた事のない頭痛だ。4人の視界は次第にはっきりしなくなってきた。


「あぁっ!!……ぅあぁぁぁぁぁぁっ!!……」






 気付いた頃には、4人の頭痛は消えていた。4人はゆっくりと目を開き、立ち上がった。


「……うっ…………!!みんなっ……大丈夫!?」


 レオは周りにいたアランとドーマとネネカに言った。辺りを見回すと、この4人以外、誰も居ない。目が覚めた途端に、4人は同時に3つの疑問を抱いた。


 なぜ、辺りにはこの4人以外誰も居ないのか…………


 あの頭痛は何だったのか…………


 そして、





 ここはどこなのか…………………………

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