戦線
兵士と魔物達の雄叫びとともに戦いが始まった。前衛部隊の人々は武器を構え、一直線に走り出した。奇妙に曇りがかった空を騎馬隊のペガサスや火の玉、素早い矢などが大きな音を立てて魔物達の方へ飛んで行く。
『ウオォォォォッ!!』
前方に3m程の緑の肌をした鬼の群れが現れた。両手に斧を持ち、肉体はゴツゴツしている。オークだ。
「敵の前衛はオークだっ!!怯まず蹴散らせぇっ!!」
「「ぅおおおおぉぉぉぉっ!!」」
先頭を走るエレナスが言うと、味方の兵士達は大声を出して攻撃を開始した。レオとアランも兵士達に紛れながら、オークに飛び掛かった。
「“スクリュー・ストレート”っ!!」
「“連続斬り”っ!!はぁぁぁぁっ!!」
オークの赤い血飛沫が顔や鎧に降りかかる。しかし、兵士達はオークの獣臭さなど気にせず、バタバタと倒していく。
「うわぁぁっ!!」
「しまっ……あぁぁっ!!」
2人の兵士の叫び声が聞こえた。斧で裂かれた痛みが声となって、生々しく感じられる。
「どうしたぁっ!?」
「兵長っ!!ネビィとカーダロイがやられましたっ!!」
「チィッ!!やるじゃねぇか……全兵、俺から離れろっ!!」
エレナスが身の丈程の黒い大剣を構えると、兵士達はエレナスから離れつつ、周りのオークを攻撃した。
「2人分……いや、100人分の痛みをくれてやるっ!!」
そうエレナスが言うと、黒い鎧と大剣の複数の筋を炎のように赤く光らせ、火炎と共に大剣の刃を回るように走らせた。
「燃えろっ!!“炎王っ大っ回転斬り”ぃっ!!!」
エレナスの周辺にいたオーク達は叩き斬られた胴体を地に落とし、灰になるまで燃えた。
「全兵っ!!進めぇぇっ!!」
「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」
エレナスの大剣と鎧の光が消えると、兵士達と共に再び走り出した。町の門の前に立つクレアは周辺にギターの音を響かせた。
「“フォルティッシモ”!!私たちの力、見せてやりなさいっ!!」
ギターの音を聞いた兵士達の攻撃力は膨れ上がった。
「せりゃぁぁっ!!」
『ウボォォッ!!』
ペガサスに乗った兵士達は、空から敵に攻撃を放っていた。すると闇の渦から、大勢の空飛ぶ馬のような魔物が現れた。漆黒の肌に竜のような翼、額には二本の角。バイコーンだ。背には肌に血を塗ったゴブリンを乗せている。
『ヒィィィィンッ!!』
「かかって来いっ!!」
1頭のバイコーンが兵士のペガサスを目掛けて矢のように飛んで来た。兵士達は弓や銃を構え、バイコーンの翼や喉に攻撃した。
「よしっ!!1頭撃破っ!!」
「トネスっ!!避けろぉぉっ!!」
「!?」
その兵士が気付いた頃には、自分のペガサスの喉は他のバイコーンの角で串刺しにされており、純白の翼は動かなくなっていた。
「そっ……そんなっ…………嘘っ………」
ペガサスは兵士を下にして真っ逆さまに落ちていった。
「うわぁぁぁぁぁっ!!…………うっ!!」
兵士は首の骨を折り、ペガサスの下で動かなくなった。
「トネスっ!!………テメェェッ!!」
兵士は剣を強く握り、角を赤く染めたバイコーンを目掛けて飛んだ。
「仇ぃぃぃぃっ!!……うっ!!がはぁぁっ!!」
兵士の胸にゴブリンの放った矢が潜るように刺さり、彼は血を吐きながらゆっくりと地に落ちた。
「おいっ!!レオっ!!どこだっ!!」
血飛沫が舞い狂う戦場の中、アランは魔物を重い拳で殴りながら、レオを大声で呼んだ。
「ここだよアランっ!!大丈夫っ!?」
「俺は平気だっ!!でもやべぇぞっ!!こっちの兵士がもう何人もやられちまっているっ!!」
その時、1頭の巨大なロックエイプがアランを踏み潰そうと足を上げた。
「アランっ!!危ないっ!!」
「やべぇっ!!」
「沈め。」
聞き覚えのある声の後に、大きな銃声が響き、ロックエイプが倒れた。
「フゥッ………何してんだ。戦闘中にお喋りとは、かなり自信のある賭けじゃねぇか。え?」
「リュオンさんっ!すみません。」
リュオンは銃口から出る一筋の煙に息を吹き、ゾロマスク越しに2人を見た。シルクハットに付いた青い羽が揺れている。
「まぁ、そんな勝負師、嫌いじゃぁねぇけどな。」
リュオンは2人にそんな言葉を残し、黄金のハンドガンを片手に魔物の群れに飛び込んだ。
「…………んまぁ、とにかく…死ぬんじゃねぇぞ……レオ。」
「う……うん。」
「全兵っ!!防御ぉっ!!」
その時、渦の方向から禍々しい強風が押し出すように吹いて来た。
「うわぁぁぁっ!!」
「なっ何だっ!?何がっ!!」
「しまったっ…!!」
上空の騎馬隊も強風に耐えきれず、町の防御壁に叩きつけられ、その勢いのまま防御壁を破壊した。
「まずいっ!!防御壁がっ!!」
「すぐに直せっ!!町がやられるぞっ!!」
「はいっ!!」
町の周辺に立つ僧侶達に紛れて、ネネカも防御壁を張り直した。
「お……おい…………なんだありゃ……」
ネネカの近くに居たドーマが大きく目を開いて渦の方を見ていた。ドーマが弓矢を下ろしているのを見たネネカはゆっくりとドーマの視線の先を見た。
「…………人……?」
“…………見つけた……”
「……!!うぅっ!!」
その時、ネネカは頭を押さえて倒れ込んだ。
「おっ……おいっ!!ネネカっ!!しっかりしろっ!!……うっ!!……ぁぁぁっ!!」
ドーマも頭を押さえて倒れ込んだ。2人の頭に、激しい痛みが走った。痛みに耐える事に精一杯で、周りの音が聞こえない。
「チッ、何なんだ?さっきの風は……!!ぅあぁぁっ!!」
「…!!アランっ!!しっかりっ!!……うっ!!」
レオとアランも激しい頭痛に耐えられず、倒れ込んだ。今までに感じた事のない頭痛だ。4人の視界は次第にはっきりしなくなってきた。
「あぁっ!!……ぅあぁぁぁぁぁぁっ!!……」
気付いた頃には、4人の頭痛は消えていた。4人はゆっくりと目を開き、立ち上がった。
「……うっ…………!!みんなっ……大丈夫!?」
レオは周りにいたアランとドーマとネネカに言った。辺りを見回すと、この4人以外、誰も居ない。目が覚めた途端に、4人は同時に3つの疑問を抱いた。
なぜ、辺りにはこの4人以外誰も居ないのか…………
あの頭痛は何だったのか…………
そして、
ここはどこなのか…………………………




