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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
74/206

起こされた撃鉄

 日が昇ると、レオ達は支度をし、パーニズの門の外に立った。周りを見ると、大勢の兵士や数人の生徒が町を囲むように立っている。闇の渦は昨日より倍近く大きい。


「…………」

「…………」


 すると、パーニズの酒場から放送が流れた。受付嬢の声だ。


『ライトニングと人間の皆さん、各自、戦闘準備を行って下さい。拠点外にいる冒険者は、最寄の拠点付近で待機して下さい。レベルが30未満の人達は、今すぐ拠点内に入って下さい。』


「あの、すみません。この放送って、パーニズ以外の国にも届いてますか……?届いてないとダメな情報では……?」


 放送を聞いて、レオは隣に居た兵士に問いかけた。


「ん?あぁ、心配ない。世界中の拠点に指示がいくように、工夫はしてるさ。」

「そうですか。ありがとうございます。」


 兵士はレオに微笑むと、すぐに鋭い目つきで前を見た。


「よしっ!お前らよく聞けっ!!」


 エレナスが大勢の兵の前に立ち、大きな声で話し始めた。


「これより戦闘前の確認に入るっ!!まず、今回のクエストは、レベル条件付きのフルレイドだっ!!条件を満たしている者には出来る限り参加してもらうっ!!」


 エレナスの声を聞き、人々は真剣な眼差しを見せた。


「前衛部隊のお前らには、敵の前方勢力を抑えてもらうっ!!その後ろの狙撃部隊には、敵の中央勢力および後方勢力への攻撃を行ってもらうっ!!その後ろの魔法攻撃部隊には、狙撃部隊同様、中央勢力への攻撃をっ!!回復魔法部隊のお前らには、前衛部隊への回復魔法および町の防御壁の強化を頼むっ!!」


「「はいっ!!」」


 兵達が一斉に声をあげた。


「そして騎馬隊のお前らには、主に空中戦を担当してもらうっ!!こちらのペガサスはユニコーン系の一角獣、敵のペガサスは、18年前と同様にバイコーン系の二角獣だろうっ!!心して掛かれよっ!!」


「「おぉぉぉぉぉっ!!」」


 ペガサスに乗った兵達が腕を上げて大声を出した。


『作戦内の補助職の皆さんは、これより防御壁の作業に取り掛かって下さい。』


「……なぁレオ。」


 アランは前を見ながら口を開いた。


「何?アラン。」

「もしこの戦いで魔王を倒せたら、俺達……帰れるんだよな…………?」

「…………うん。」


アランは強く拳を握った。


「今思えば俺達、最初この世界に来た時より比べものにならねぇくらい強くなったよな。」

「うん。そうだね…………。お互い、…………死なないようにね。」

「フッ、何言ってんだレオ。パーティリーダーが勇者なら怖いモノ無しだ。頑張ろうぜ?」


 アランがレオの肩に手を置くと、レオは剣を強く握って微笑んだ。


「……距離、100mから500mほど……。矢の数は200本ほど…………。あとは集中力……。ふぅっ………」


 ドーマは弓を握り、深呼吸をした。


「ネネカちゃ〜んっ!」

「はっ、はいっ!」


 ネネカの背後からクレアが声をかけてきた。


「緊張してる?大丈夫。何かあったらギルドメンバーが守ってくれるから。」

「あ……ありがとうございますっ…………。」

「よしっ!頑張ろっ。」


 その時、薄く曇りがかった空の色がじわじわと禍々しくなった。雷の音が聞こえる。


「…………どうしたエルド。」

「……いえ、リュオンさん。何も。ただ、この空を見るたびに18年前を思い出しましてね。」


 空を見上げるエルドを見て、リュオンはタバコの煙を静かに吐いた。シルクハットに付けている青い羽が冷たい風で揺れる。


「シルバっ、ココっ、ライラっ、頑張ろっ!」

「あぁ、任せろマリス。ライラ、補助頼むな。」


 シルバは首を左右に曲げて鳴らし、刀に腕を掛けた。


「了解。ところでココ、今回は誰に変身するの?」

「臨機応変にってところだなっ。オイラの活躍、よく見ときなよっ!」


 ココがニヤけると、ライラはココの頭を撫でた。すると、渦の方からレオ達にとって覚えのある感覚が身体を包んだ。



“……………始まる。…………時が来た…………。時が戦えと囁いた。”



「っ……魔王かっ!!」

「この世界に来た時に聞いた声だ。」


 アランとレオが言うと、前に立つエレナスは背から大きな盾と身の丈ほどの大剣を取り出した。


「全兵っ!!武器を手に取れっ!!」


 エレナスの指示で全員が武器を手に取り構えた。



“…………面白い。………人間の力を加えたライトニングの力を……試させてもらおう…………”



 すると、渦の中から魔物達が次々と姿を現した。


「なっ…………なんだ……あの数っ…………」

「……ヤベェんじゃねぇのか…………これっ………」

「コイツら全部と戦えって……?マジかよ……」


 コルトとスフィルとカルマが目を大きく開いて息を呑んだ。武器を握る手が震えている。



“……心臓の鼓動が聞こえるぞ……。人間とは、所詮臆病者だったか…………。”



「僕達は臆病者なんかじゃないっ!!」


 レオは剣を強く握って叫ぶと、周辺の兵はレオに強い視線を送った。


「今日までで僕らは多くの命を失ったっ!!失いすぎたっ!!大切な仲間の死を見てきた僕達は強いはずだっ!!」



“フッ…人間か………ますます面白くなってきたぞ………………レオ・ディグランス・ストレンジャー。”



「……っ!!なぜ僕のっ…………!!」


 渦から現れた魔物達は、ライトニングの地に足をつけて立った。全ての魔物がこちらに強い殺意を向けている。


『グルルルッ!!』

『グゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

『ススススゥ…………』



“魔物達よ、…………時と血を味わえ。”



 すると、全ての魔物がパーニズの方へ勢いよく向かってきた。それを見たエレナスは、大剣を片手で上に上げて口を開いた。


「全兵っ!!攻撃を開始せよっ!!」

「みんなっ!!全力でいこうっ!!」

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