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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
72/206

黒い夢と赤い指輪

『シャァァァッ!!』


 ポイズングロリアスは身体中の傷から血を流しながら、青く光る粒子に包まれて弓矢の先に集中力を込めるドーマを目掛けて、翼を広げて飛んだ。


「ドーマぁぁっ!!逃げろぉぉっ!!」

「はっ…早いっ………そして…ドーマは今動けない………どうすれば…………っ!!」


 アランが大声で叫ぶ中、レオはあることを思いついた。


「アラン!!僕に向かってメガ・クラッシャーを使って!!」

「なっ…はぁっ!?何で!?」

「アランが僕を蹴った瞬間にカウンターを使ってアランを弾き飛ばす!!敵に追いつくか分からないけど」

「それじゃあお前が危ねぇよっ!!」

「早くやるんだっ!!」


 レオが大声で言うと、アランは少し躊躇して構えた。


「怪我しても…知らねぇからなっ!!」


 アランは上に跳び、空中で仰向けになると、レオの胴体に向かって片足を突き出して蹴った。


「“メガ・クラッシャー”ぁぁぁっ!!」

「“カウンター”っ!!」


 レオは腕を交差し、アランの重い蹴りを全力で受け止め、アランを敵の方へ弾き飛ばした。レオは勢いに耐えきれず後ろに飛ばされたものの、アランは敵の方へ弾丸のような速さで飛んだ。


「うわぁっ!!」

「ドーーーマぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 アランがポイズングロリアスの真下を通る瞬間、拳を上に構え、竜巻を纏わせて突き出した。


「“スクリュー・ストレート”ぉぉぉぉっ!!」


 アランの拳は敵の腹部を刺す勢いで命中し、敵は叫び怯んだ。


「ドーマっ!!今だっ!!…うぅっ!!」

「ドーマさん!!」


 アランが地面を滑るように着地すると同時に、ネネカがドーマの隣で言うと、ドーマは鷹のような鋭い目になり、青く光る一本の矢を敵に走らせた。


「“シューティングスター”……」


 青い光は敵の胸に大きな穴を開けて貫き、静かに消えた。ポイズングロリアスは強く地面に体を叩きつけて倒れた。


「……ふぅ。アラン……助かったぞ………」

「…………やったのか………!!レオっ!!」


 アランは立ち上がり、遠くで倒れるレオの方へ走り出した。


「おいレオっ!!しっかりしろっ!!おいっ!!」


 レオを前にすると、アランはレオを何度も揺さぶった。しばらくすると、レオはゆっくりと目を開いた。


「ぅ……ぅぅっ…………ヤ…ツは………っ…」

「やったぞっ!ドーマが倒した!!お前が体張ったお陰だ!!」

「……そ…そうか………悪いけどっ………立たせてくれない……?」

「あっ、あぁ。」


 アランはレオの腕を肩に掛けて立たせた。冷たい風が吹くたび、ポイズングロリアスは少しずつ散るとともに、光る物を残した。剣だ。アランとレオは剣の方へ歩いた。剣を前にすると、アランは剣を手に取り、見つめた。


「……秘宝………?武器が出るのは初めてだな……。レオ。お前、剣折ったんだから、こいつ使えよ。」


 アランは弱ったレオの腰に縛られた鞘に剣を入れ、ドーマとネネカの方へと歩き出した。


「レオさんっ!!」

「すまねぇネネカ、コイツに回復魔法を…」


 アランが言うと、ネネカは両手から柔らかい光を出して、その光でレオを包んだ。


「……ありがとう。ネネカ。…………帰ろうか。」


 曇り空の下で、四人は静かに微笑んだ。だがこの時、空の表情が狂い始めている事を、四人は知らなかった。




『ガルルルルゥゥッ!!』

「もうすぐ…………」

『ススススゥッ……』

「始まる……」

『グルルルッ…!!』

「今日という日が沈み、また日が昇る…………」

『ウゥゥゥゥゥッ…………』

「日が昇ると共に攻撃を開始する。皆よ、ライトニングの愚かさと血を、己の刃に……刻め。」




「…………マスター、ダークネスの殺意が感じられます。明日には来そうです。」

「……そうかエルド。………しかし急だな……。」

「はい。狙いは恐らく人間…………ところでマスター、あの人達は大丈夫でしょうか………?」

「心配いらねぇと思うぞ。アイツらの眼差しがな、…欲しいものは自分の手で掴みたい…ってよ。何が目的で共に戦ってくれるかは分からんが、いつかはアイツらも目的を果たすだろう。期待してんだ……俺…。」




 その頃、レオ達はペガサスに乗ってパーニズへ飛んでいた。空が少しずつ暗くなってきている。冷たい風が頬に流れるたび、先程までの戦いを少しずつだが忘れてしまう。


「……な、なぁ…ドーマ……。」


 アランはペガサスをドーマに近づけた。ドーマは静かにアランを見た。


「さっき、戦ってる時……夢を見た…………」

「…………あの夢か……?」

「……あ…あぁ………」


 アランはドーマの顔を見る事なく、小さい声で返事をした。


「…………何か……気持ち悪いよな……俺っ………」

「……知らねぇよ。夢くらい誰でも見る。……ただ、……アンタには、礼をしなきゃだな…………」


 ドーマはそう言って、ポーチに手を入れた。


「れっ…礼って…………んだよ……」

「うるせぇ…………手ェ出せ。…ほら…早く……」


 ドーマは何かを掴んだ手をアランの方に伸ばした。アランはドーマの握る物を受け取り、見つめた。


「………なんだ…?これ…………」

「レッドソウルリング………指輪さ…………商店街で買ったんだ。……綺麗だろ?」

「…………くれるのか?」


 アランは指輪を握り、ドーマの瞳を見つめた。


「あぁ。…………アンタが見るその夢、正夢になったら…………って思ってな。…………いらねぇなら捨てても良いぞ。」

「……なんだそれ。…………ドラマみたいなこと言いやがって…………まさか、告——」

「うっ…うるせぇよ……。勘違いすんな……………ただ………アタシをこんなに心配する人…………いなかったから……よ……。さっきの戦いだって……アンタいなかったら…………」


 ドーマの潤んだ瞳を見て、アランは赤く光る指輪をポーチに優しく入れた。

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