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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
71/206

青い光

“…………めろ…………やめろ…………!!やめろぉぉぉぉぉっ!!!”



「…はぁぁっ!?」


 仰向けの姿勢でアランは目を覚ました。頭痛が激しい。視界がぼやける。目を凝らすと、そこには苦しそうな顔をするレオがいた。手と膝を冷たい地につけて、何かから守っているように見えた。


「くっ…レオぉっ…!!レオっ!!おいっ!!」


 レオの顔の色が青白く、普通ではない状態だということが理解できた。


「アッ……アラン………この敵っ…………血がっ……毒…だっ……」

「おっ…おいっ!!しっかりしろっ!!……はっ!!レオ!!後ろぉっ!!」


 レオはゆっくり振り向くと、ポイズングロリアスの尾がレオの背に向かって斬りかかってきた。レオはすぐに剣を手に取って振り返り、尾の先の刃を受け止めた。


「うぅっ………っくぅっ……!!」

「お……おぃ………レオ………剣が……」


 アランは指をさした。レオの握り締める剣は、ポイズングロリアスの血で赤く染まっており、尾の刃と交わっている所に小さな亀裂が入っていた。


「ぅぅっ…………ま…まずい…………アランっ……今のうちにっ……体勢をっ……!!」


 レオは歯を食いしばりながらゆっくり立ち上がり、敵を押し返そうとした。


『シャァァァッ!!』

「…………っ!!」


 その時、レオの剣は大きな音をたてて二つに折れた。敵の尾は剣を折った勢いでレオを飛ばした。


「レオぉぉぉっ!!」


 飛ばされたレオはドーマとネネカの間の地面で体を叩きつけられ、仰向けに倒れた。ドーマとネネカはすぐにレオの方に走り出し、声をかけた。


「おい!大丈夫か!?」

「レオさんっ!しっかりっ!!」

「ぅぅっ……っく……!!」


 レオの腹部の傷口からは赤い血が流れ、肌は死人のように青白かった。


「……毒です!ドーマさん!解毒剤を!!」

「あ、あぁ…」


 ドーマはポーチから小さな瓶を取り出し、レオの体中にかけた。同時にネネカはレオの傷口に両手を置き、回復魔法を唱えた。


「おい!レオっ!!返事しろっ!!」

「う…うぅっ………アラン……は…?」


 ドーマが大声で言うと、レオはゆっくり目と口を開いた。


「アランさんは今も戦っています。レオさんが守ったお陰で…………ぅぅっ……!!」


 ネネカは涙を流してレオに抱きついた。


「ちょっ…ネネカっ……まだ戦ってる途中だから……」

「……剣…………折れちまったな……レオ、どうする……?」


 ドーマはポイズングロリアスの方を見て小さい声で言った。


「…………ドーマ、あの技を使おう。……大きいダメージを与え、敵の血を浴びないようにするには、ドーマのあの技しかない。…なるべく時間を稼ぐから、その間に……」


 レオはゆっくり立ち上がりドーマの目を見た。


「おい、アタシは別に問題ないけど、剣が使えないアンタがっ!!」

「このまま僕がここに居たらアランは死ぬよ!!」

「…!!」


 三人はしばらく黙った。そして、戦っているアランを見て、レオは口を開いた。


「…ご、ごめん……簡単に、死ぬ…とか言っちゃって……………僕は、武器が無くても大丈夫だから、安心して。……じゃあ、ドーマ…頼んだよ。」


 レオは握っていた剣の柄を捨て、ポイズングロリアスの方へ走り出した。続いてドーマは大きく息を吐き、脚を開いて弓を構えた。


「…くたばるなよ…………」


 矢に青い粒子のような光が集まっていく。そんな幻想的な光景にネネカは息を呑んだ。




「チィッ!!ドラゴンみてぇなのに火とか出さねぇんだなお前っ!!」


 アランは敵の攻撃を次々と回避しては、銀色に染めた両腕で受け止めていた。


『シャァァァァァッ!!』


 ポイズングロリアスは鋭い牙を出し、アランの銀の腕に噛み付いた。


「ぅおっ!?…ぁっぶねぇ〜…………」

「アランっ!!」


 すると、レオは敵の頭部に体当たりをし、怯ませた。


「お…おいっ!!武器無しで危ねぇって!!ここは俺がっ!!」

「アランっ!!ドーマにあの技を使わせる!!僕とアランで時間を稼ぐんだ!!」


 体勢を立て直したポイズングロリアスは翼を大きく広げ、レオとアランを鋭い目で見た。


『シャァァァァァァァッ!!』

「……アランっ……僕、武器無いから………サポートよろしくっ!!」

「ちょっ!!おいっ!!」


 敵が二人に牙を向けて飛び掛かると、転がるように回避して走り出した。


「……んで?その技ってどれくらいの時間が必要なんだ?」

「…分からない。」

「はっ…はぁぁっ!?…………ぅおっ!!」


 レオの背後に殺意を感じたアランはすぐに拳を銀色に変え、レオの背後にまわり拳を突き上げた。


「“ライジングアッパー”ぁぁっ!!」


 重く硬い拳を受けた敵は数本の牙を折り、上に押し上げられた。ポイズングロリアスは舌を噛み、口から血が流れ始めた。


「アランっ!!危ないっ!!血だっ!!」

「はいよっ!!“スクリュー・ストレート”ぉぉっ!!」


 アランは空中で方向を変え、敵の腹部に竜巻きを纏わせた拳を突き出した。


『ァァァァァッ!!』


 ポイズングロリアスは少し飛ばされ、大きな体を地面に叩きつけた。紫色の鱗は数カ所剥がれ、赤い血が流れている。アランは着地した。


「おっと……もう抱きつくことも出来ねぇな、ありゃぁ…全身毒塗れって感じだろ?」

「うん。………ありがとう。」


 すると、ポイズングロリアスはゆっくりと状態を起こし、辺りを見回した。鋭い目には、青色に光り輝くドーマの姿が映った。


『………………シャァァァッ!!!』

「…!!やべぇっ!!ドーマぁぁぁぁっ!!!」


 ポイズングロリアスは大きく翼を広げ、勢いよくドーマの方へ飛び出した。

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