青い光
“…………めろ…………やめろ…………!!やめろぉぉぉぉぉっ!!!”
「…はぁぁっ!?」
仰向けの姿勢でアランは目を覚ました。頭痛が激しい。視界がぼやける。目を凝らすと、そこには苦しそうな顔をするレオがいた。手と膝を冷たい地につけて、何かから守っているように見えた。
「くっ…レオぉっ…!!レオっ!!おいっ!!」
レオの顔の色が青白く、普通ではない状態だということが理解できた。
「アッ……アラン………この敵っ…………血がっ……毒…だっ……」
「おっ…おいっ!!しっかりしろっ!!……はっ!!レオ!!後ろぉっ!!」
レオはゆっくり振り向くと、ポイズングロリアスの尾がレオの背に向かって斬りかかってきた。レオはすぐに剣を手に取って振り返り、尾の先の刃を受け止めた。
「うぅっ………っくぅっ……!!」
「お……おぃ………レオ………剣が……」
アランは指をさした。レオの握り締める剣は、ポイズングロリアスの血で赤く染まっており、尾の刃と交わっている所に小さな亀裂が入っていた。
「ぅぅっ…………ま…まずい…………アランっ……今のうちにっ……体勢をっ……!!」
レオは歯を食いしばりながらゆっくり立ち上がり、敵を押し返そうとした。
『シャァァァッ!!』
「…………っ!!」
その時、レオの剣は大きな音をたてて二つに折れた。敵の尾は剣を折った勢いでレオを飛ばした。
「レオぉぉぉっ!!」
飛ばされたレオはドーマとネネカの間の地面で体を叩きつけられ、仰向けに倒れた。ドーマとネネカはすぐにレオの方に走り出し、声をかけた。
「おい!大丈夫か!?」
「レオさんっ!しっかりっ!!」
「ぅぅっ……っく……!!」
レオの腹部の傷口からは赤い血が流れ、肌は死人のように青白かった。
「……毒です!ドーマさん!解毒剤を!!」
「あ、あぁ…」
ドーマはポーチから小さな瓶を取り出し、レオの体中にかけた。同時にネネカはレオの傷口に両手を置き、回復魔法を唱えた。
「おい!レオっ!!返事しろっ!!」
「う…うぅっ………アラン……は…?」
ドーマが大声で言うと、レオはゆっくり目と口を開いた。
「アランさんは今も戦っています。レオさんが守ったお陰で…………ぅぅっ……!!」
ネネカは涙を流してレオに抱きついた。
「ちょっ…ネネカっ……まだ戦ってる途中だから……」
「……剣…………折れちまったな……レオ、どうする……?」
ドーマはポイズングロリアスの方を見て小さい声で言った。
「…………ドーマ、あの技を使おう。……大きいダメージを与え、敵の血を浴びないようにするには、ドーマのあの技しかない。…なるべく時間を稼ぐから、その間に……」
レオはゆっくり立ち上がりドーマの目を見た。
「おい、アタシは別に問題ないけど、剣が使えないアンタがっ!!」
「このまま僕がここに居たらアランは死ぬよ!!」
「…!!」
三人はしばらく黙った。そして、戦っているアランを見て、レオは口を開いた。
「…ご、ごめん……簡単に、死ぬ…とか言っちゃって……………僕は、武器が無くても大丈夫だから、安心して。……じゃあ、ドーマ…頼んだよ。」
レオは握っていた剣の柄を捨て、ポイズングロリアスの方へ走り出した。続いてドーマは大きく息を吐き、脚を開いて弓を構えた。
「…くたばるなよ…………」
矢に青い粒子のような光が集まっていく。そんな幻想的な光景にネネカは息を呑んだ。
「チィッ!!ドラゴンみてぇなのに火とか出さねぇんだなお前っ!!」
アランは敵の攻撃を次々と回避しては、銀色に染めた両腕で受け止めていた。
『シャァァァァァッ!!』
ポイズングロリアスは鋭い牙を出し、アランの銀の腕に噛み付いた。
「ぅおっ!?…ぁっぶねぇ〜…………」
「アランっ!!」
すると、レオは敵の頭部に体当たりをし、怯ませた。
「お…おいっ!!武器無しで危ねぇって!!ここは俺がっ!!」
「アランっ!!ドーマにあの技を使わせる!!僕とアランで時間を稼ぐんだ!!」
体勢を立て直したポイズングロリアスは翼を大きく広げ、レオとアランを鋭い目で見た。
『シャァァァァァァァッ!!』
「……アランっ……僕、武器無いから………サポートよろしくっ!!」
「ちょっ!!おいっ!!」
敵が二人に牙を向けて飛び掛かると、転がるように回避して走り出した。
「……んで?その技ってどれくらいの時間が必要なんだ?」
「…分からない。」
「はっ…はぁぁっ!?…………ぅおっ!!」
レオの背後に殺意を感じたアランはすぐに拳を銀色に変え、レオの背後にまわり拳を突き上げた。
「“ライジングアッパー”ぁぁっ!!」
重く硬い拳を受けた敵は数本の牙を折り、上に押し上げられた。ポイズングロリアスは舌を噛み、口から血が流れ始めた。
「アランっ!!危ないっ!!血だっ!!」
「はいよっ!!“スクリュー・ストレート”ぉぉっ!!」
アランは空中で方向を変え、敵の腹部に竜巻きを纏わせた拳を突き出した。
『ァァァァァッ!!』
ポイズングロリアスは少し飛ばされ、大きな体を地面に叩きつけた。紫色の鱗は数カ所剥がれ、赤い血が流れている。アランは着地した。
「おっと……もう抱きつくことも出来ねぇな、ありゃぁ…全身毒塗れって感じだろ?」
「うん。………ありがとう。」
すると、ポイズングロリアスはゆっくりと状態を起こし、辺りを見回した。鋭い目には、青色に光り輝くドーマの姿が映った。
『………………シャァァァッ!!!』
「…!!やべぇっ!!ドーマぁぁぁぁっ!!!」
ポイズングロリアスは大きく翼を広げ、勢いよくドーマの方へ飛び出した。




