朝日と石畳
東に眩しい太陽が昇り、パーニズを眠りから覚ました。宿屋では、レオがベッドから降り、カーテンを開けると、薄暗い部屋に爽やかな光がさした。
「みんな、朝だよ。」
レオが言うと、ネネカは目を擦りながらゆっくりと体を起こした。
「あ…レオさん…おはよう…ございます……。」
一方、アランとドーマは布団から出てこない。特にドーマは繭に包まれたかのような姿をしている。
「…………二人、起きますかね……?」
「…はぁ〜っ……アラン、ドーマ、朝だよっ!!」
レオは二人の布団を掴み、勢いよく上に上げた。
「うわっ、ちょ、まっ、お、おいっ!!」
「な、何すんだレオっ!!」
アランとドーマは顔を揃えて怒鳴った。
「出かけるんじゃなかったの?」
「あぁん?出かける?知らないよアタシは。」
「……ドーマが言ったんじゃないか。忘れたの?」
レオが言うと、ドーマは目をそらして下手な口笛を吹いた。
「まぁどちらにせよ、俺はまだ眠いんだ。ほらっ、布団返せ。」
「アランさん。ベッドから降りないと、眠いままですよ。」
ネネカの一言でアランは口を閉じ、ゆっくりとベッドから降りた。
「さぁ、ドーマさんも…。」
アランに続いて、ドーマもベッドから降りた。
「……なぁ、レオ。ネネカはいつから母ちゃんみたいになったんだ?」
「そう言うドーマは、いつまで子供なの?」
レオは微笑みながらドーマの苦い顔を見た。その後、四人は外に出る準備をして、宿屋を出た。パーニズはいつもと変わらず、元気な人々の顔を見せてくれる。
「とりあえず、酒場で朝ごはんにしよう。」
四人は少し歩き、酒場に入った。朝だからか、酒場は静かで、カウンターの前に立つ受付嬢もあくびをしている。四人は一つのテーブルを囲んで座ると、奥からデンテがメモと羽付きのペンを持って寄ってきた。
「お、朝メシか?暇だから何注文してもいいぞ。……っというか、むしろ仕事をくれ……。」
「おいデンテ、いくら友達だからと言って、店側の喋り方ってモンがあるんじゃねぇの?」
アランは苦笑いをしながら、メニュー表を広げた。
「あれ、飲み物増えたんだ。」
「お、レオ気付いた?『も〜ニングミルク』、『クールライチサイダー』、『ストロングコーラ』、『フルーツのマイルドキメラ』。どれも15セリアだ。」
「すげぇな……ミルクに関しては、いかにも今飲めって感じだ……。」
「最後の飲み物、何て名前でしたっけ……?」
四人はしばらくの間メニュー表を見つめた。
「……おい、…まだか……?あと十秒経ったら全員卵かけご飯とミルクにすっぞ?」
「じゃあ僕はそれで。」
「私も。」
「アタシも。」
「俺も。」
「いや良いんかい。」
四人は食事を終えると、石畳の音を鳴らして商店街に入った。商店街はいつもと変わらず賑やかだ。商品を手に取り話したり、果物を詰めた大きな木の箱を持って歩いたり、子を連れて武具を見たり、多くの人々が賑わいを見せている。
「ちょっと、兄さん寄ってってぇ〜っ!!」
「ウチの道具は戦いで役に立つ物ばかり。見てってくれぇい!!」
「すごい元気だよな〜、この人たち。」
ドーマが大声を出す商人を見つめて言った。
「ま、こっちも何か元気もらえるから、良いんじゃねぇの?」
アランは頭の後ろで腕を組み、屋台一つ一つを見た。
「ところでレオさん、今からどちらへ…?」
「いつもの武具屋だよ。僕の鎧は損傷が激しくなってきたし、ネネカのローブも汚れてボロボロになってきているから。」
「アタシも、そろそろ替え時かな。」
しばらく歩くと、四人は武具屋に着き、品を見始めた。
「お、来たか。聞いてるぜ、アンタらまた秘宝クエクリアしたんだってな。ま、それも俺のおかげってワケよぅ!ダハハハハッ!!」
ご機嫌な様子の商人に対し、四人は少し冷静だった。
「お、おぉい…俺なんかマズい事言ったか……?」
「あ、い、いえ。失礼ですが、今日売られている武器や防具が、今の僕達の物より弱いなぁと思いまして……。」
「う〜ん…確かにそうだなぁ……正直なところ、売り物の中で、今のアンタらの装備より強い物はもうないんだ……。」
商人は腕を組み、困った顔をした。
「そ、そうなのか……」
「では、これからどうすれば…………」
苦い顔をした四人を前に、少し悔しくなった商人はある事を思い出した。
「そうだ!それなら、パーニズ相談事務所に行くと良い!!何か教えてくれるかもしれん!!」
「ギルドですか。良い考えですね。」
レオは顔を上げた。
「おぅ、自分の道はギルドと共に切り拓けってなぁ!ダハハハハッ!!」
「行ってみようぜ。おっさん、ありがとな!」
四人は武具屋を離れ、ギルド小屋へ向かった。




