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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
63/206

朝日と石畳

 東に眩しい太陽が昇り、パーニズを眠りから覚ました。宿屋では、レオがベッドから降り、カーテンを開けると、薄暗い部屋に爽やかな光がさした。


「みんな、朝だよ。」


 レオが言うと、ネネカは目を擦りながらゆっくりと体を起こした。


「あ…レオさん…おはよう…ございます……。」


 一方、アランとドーマは布団から出てこない。特にドーマは繭に包まれたかのような姿をしている。


「…………二人、起きますかね……?」

「…はぁ〜っ……アラン、ドーマ、朝だよっ!!」


 レオは二人の布団を掴み、勢いよく上に上げた。


「うわっ、ちょ、まっ、お、おいっ!!」

「な、何すんだレオっ!!」


 アランとドーマは顔を揃えて怒鳴った。


「出かけるんじゃなかったの?」

「あぁん?出かける?知らないよアタシは。」

「……ドーマが言ったんじゃないか。忘れたの?」


 レオが言うと、ドーマは目をそらして下手な口笛を吹いた。


「まぁどちらにせよ、俺はまだ眠いんだ。ほらっ、布団返せ。」

「アランさん。ベッドから降りないと、眠いままですよ。」


 ネネカの一言でアランは口を閉じ、ゆっくりとベッドから降りた。


「さぁ、ドーマさんも…。」


 アランに続いて、ドーマもベッドから降りた。


「……なぁ、レオ。ネネカはいつから母ちゃんみたいになったんだ?」

「そう言うドーマは、いつまで子供なの?」


 レオは微笑みながらドーマの苦い顔を見た。その後、四人は外に出る準備をして、宿屋を出た。パーニズはいつもと変わらず、元気な人々の顔を見せてくれる。


「とりあえず、酒場で朝ごはんにしよう。」


 四人は少し歩き、酒場に入った。朝だからか、酒場は静かで、カウンターの前に立つ受付嬢もあくびをしている。四人は一つのテーブルを囲んで座ると、奥からデンテがメモと羽付きのペンを持って寄ってきた。


「お、朝メシか?暇だから何注文してもいいぞ。……っというか、むしろ仕事をくれ……。」

「おいデンテ、いくら友達だからと言って、店側の喋り方ってモンがあるんじゃねぇの?」


 アランは苦笑いをしながら、メニュー表を広げた。


「あれ、飲み物増えたんだ。」

「お、レオ気付いた?『も〜ニングミルク』、『クールライチサイダー』、『ストロングコーラ』、『フルーツのマイルドキメラ』。どれも15セリアだ。」

「すげぇな……ミルクに関しては、いかにも今飲めって感じだ……。」

「最後の飲み物、何て名前でしたっけ……?」


 四人はしばらくの間メニュー表を見つめた。


「……おい、…まだか……?あと十秒経ったら全員卵かけご飯とミルクにすっぞ?」

「じゃあ僕はそれで。」

「私も。」

「アタシも。」

「俺も。」

「いや良いんかい。」


 四人は食事を終えると、石畳の音を鳴らして商店街に入った。商店街はいつもと変わらず賑やかだ。商品を手に取り話したり、果物を詰めた大きな木の箱を持って歩いたり、子を連れて武具を見たり、多くの人々が賑わいを見せている。


「ちょっと、兄さん寄ってってぇ〜っ!!」

「ウチの道具は戦いで役に立つ物ばかり。見てってくれぇい!!」

「すごい元気だよな〜、この人たち。」


 ドーマが大声を出す商人を見つめて言った。


「ま、こっちも何か元気もらえるから、良いんじゃねぇの?」


 アランは頭の後ろで腕を組み、屋台一つ一つを見た。


「ところでレオさん、今からどちらへ…?」

「いつもの武具屋だよ。僕の鎧は損傷が激しくなってきたし、ネネカのローブも汚れてボロボロになってきているから。」

「アタシも、そろそろ替え時かな。」


 しばらく歩くと、四人は武具屋に着き、品を見始めた。


「お、来たか。聞いてるぜ、アンタらまた秘宝クエクリアしたんだってな。ま、それも俺のおかげってワケよぅ!ダハハハハッ!!」


 ご機嫌な様子の商人に対し、四人は少し冷静だった。


「お、おぉい…俺なんかマズい事言ったか……?」

「あ、い、いえ。失礼ですが、今日売られている武器や防具が、今の僕達の物より弱いなぁと思いまして……。」

「う〜ん…確かにそうだなぁ……正直なところ、売り物の中で、今のアンタらの装備より強い物はもうないんだ……。」


 商人は腕を組み、困った顔をした。


「そ、そうなのか……」

「では、これからどうすれば…………」


 苦い顔をした四人を前に、少し悔しくなった商人はある事を思い出した。


「そうだ!それなら、パーニズ相談事務所に行くと良い!!何か教えてくれるかもしれん!!」

「ギルドですか。良い考えですね。」


 レオは顔を上げた。


「おぅ、自分の道はギルドと共に切り拓けってなぁ!ダハハハハッ!!」

「行ってみようぜ。おっさん、ありがとな!」


 四人は武具屋を離れ、ギルド小屋へ向かった。

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