表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
61/206

柔らかな光

 日が少し傾き始めた頃、レオとネネカは、アランとドーマを迎えに行くために四頭のペガサスを連れてギルシェに飛んだ。下の海は一つ一つの波を光らせていた。


「……あの、…レオ…さん。」

「ん?どうしたの?」

「あの……レオさんって、志望校…すごいところでしたよね……?」


 ネネカの小さい声が風と混じって聞こえる。


「…う、うん。レベルは高いほうだったかな。そう言うネネカもレベルが高い高校目指してたんじゃないの?」

「え、えぇ……っとぉ〜……」


 ネネカの頬を流れる風が擽った。


「ハハ、……本来なら、僕たちは今頃、高校で楽しく過ごしてるんだろうけどね……。」

「そう……ですね……。お父さんとお母さん、あと、妹の事も心配になってきました……」

「うん……僕たちの事、ニュースになってるんだろうなぁ……。」


 気がつけば、二人の瞳には下で光る海が映っていた。


「…………ん?ネネカって妹いたんだね。」




 その頃、ギルシェの病院では。


「…………スゥ……スゥ………………」

「………………ぅ、……ぅぅっ…………。」


 アランはゆっくりと目を開けた。まず病室の天井に吊り下げられたランプが目に映った。少し頭が痛い。右を見ると、半開きになったカーテンの隙間から傾いた太陽が顔を出していた。


「…………っ、眩しいな…………」

「………スゥ……スゥ…………」


 左を見ると、椅子に座り、下を向いているドーマがいた。寝ている。


「…ぉ、ぉ〜ぃ……っ、起きねぇな……。」


 ドーマの赤い髪に太陽の柔らかな光が当たり、どこか気持ち良さそうだ。いつもうるさいと思っていたドーマのこの姿を見ていると、先程までの頭痛を忘れてしまう。


「…………ん、…………ふぁぁ〜〜っ……お、起きたか。」


 ドーマが目を覚ますと、アランはすぐに天井を見た。


「……あぁ……。」

「あ〜れ、………レオとネネカまだかよ……。」

「…………どこ行ったんだ?」

「ぁん?秘宝クエだよ。安心しな、アイツらは死なねぇ。」


 窓の外で薄い砂埃が舞った。


「…………フッ、アイツらが強いこと、知らねぇとでも?」

「あぁ、スゲェ勢いで頭ブったんだ。記憶の一つくらい消えてると思ってな。」

「……一応言っとくけど、俺怪我人な。言葉選べよ。」


 アランは微かな頭痛を感じ、窓に映る眩しい空を見た。しばらくすると、純白の大きな翼が目に飛び込んできた。


「ん?なんだ?」

「お、ペガサスか。レオとネネカかもな。」

「…………ドーマ。……その…なんだ……心配…かけた……な。」


 アランは小さい声で言った。


「フッ、今さら何言ってんだ。アンタの夢の話聞いた時から、ほっとけねぇんだよ。」


 ドーマは天井に吊り下げられたランプを見上げた。ランプの火がいつもより柔らかく見えた。


「なんだよ、急にコクハクか?お前こそ頭ブったんじゃねぇのか。」

「……勘違いは御免だ。」


 すると、部屋の入り口からノックが聞こえた。


「入るよ。」


 扉が開いた。そこには、鎧や服を泥で汚したレオとネネカがいた。


「よ、レオ。ネネカ。」

「うん、ドーマ。アランは起きた?」


 レオはそう言うと、ベッドを覗くようにして見た。


「あぁ、思ったより元気だ。」

「おぅレオ、ネネカ。すまねぇな。油断した。」


 アランは体を起こし、レオとネネカに笑顔を見せた。


「アランさん、大丈夫ですよ。元気になって何よりです。」

「それで、もう病院からは出れる?」

「あぁ。ちょっと頭いてぇが、問題ねぇ。」


 アランはベッドから降りると、同時にドーマが立ち上がった。


「んじゃ、帰るか。ネネカ、何か奢ってやるよ。」

「あ、ありがとうございます。ドーマさん。」

「おい、普通奢るなら退院後の俺だろ。」


 窓に映る空は、日が沈みかけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ