踊りと酒
「いいぞー!!イケてるねぇ!!」
「ヒューヒューッ!!」
空が夕日の色に染まるころ、パーニズの酒場では、大勢の人が集い、酒に酔いながら大きな声をあげていた。
「次は誰が出るんだ~?」
「おい、お前行ってこいよ、得意だろ?ダンス。」
「ふぅ……はいよ、人間代表として、ライトニングのみんなにホンモノを見せてやるよ。まぁ見てな。」
男は肩を回して言うと、人々は男を囲んだ。
「お、あんた人間か!」
「期待してるぜ、若いの!!」
「お名前ど〜ぞぉ!!」
その声を聞いて、男は鋭い目で前を向き、名乗った。
「カルマだ。ヒロナギ・カルマ。」
その時レオとネネカは、ペガサスに乗り、パーニズの町に向かってチャナ近くの空を飛んでいた。
「もう夕方か……。アランは大丈夫かな……?」
「………そう…ですね………でも、ドーマさんがついていますから…………」
空の夕日が半分海に浸かり、反対の藍色の空には小さな星々が煌めいていた。しばらく空を飛んでいると、二人の目にパーニズの酒場から漏れた、薄く色とりどりの光がうつり始めた。
「……なんだろう、酒場が騒がしいね。」
「そう…ですね。何か、……楽しそうな声が聞こえてきます。」
二人は、パーニズの光に吸い込まれるかのようにペガサスを走らせた。
「おぉっ!?すげぇなアンタ!!どこで覚えたんだそのダンス!!」
酒場の真ん中で大勢の人に囲まれて、カルマは得意のブレイクダンスを披露していた。ライトニングの人々は特に彼のダンスに驚き、歓声をあげていた。するとカウンター越しに、太ったライトニングの男が親しげにデンテに問いかけた。
「なぁ、人間ってのは、踊るのが上手い種族なのか?……アンタもできる?」
「あ~……特定の人物だけだ。期待しないでくれ。」
デンテはそう言って、カウンターの上に鉄でできたビールジョッキを六杯置いた。
「おぅ、サンキュー!」
太った男はジョッキを一杯手に取り、少しだけ人が少ない入口付近に歩いて行った。
「ふふ~んふ~ん…おぉっと!!」
「あぁっ!!」
すると、太った男はパーニズに到着したレオとぶつかり、ジョッキを落としてしまった。レオは黄金に輝いていたビールを頭から浴びた。
「レオさん!大丈夫ですか!?」
「あ…す、すまねぇ…にいちゃん、ぶっかけちまったな……」
太った男はすぐにアイテムポーチから布を取り出し、レオの鎧を拭きはじめた。
「あ、すみません…僕、よそ見してました……あの~、これは何をやっているんですか?」
「あぁ、これか?俺たちがちょっと遊びだしたら、ダンス大会始まってよぉ…。ま、受付のねぇちゃんとかクッカーさん達もノリノリだからよぉ、多分一晩騒がしくなるぜこれ。」
男はレオの鎧を拭きながら、少し笑顔を見せて言った。
「そ、そうなんですか…」
「ところで、にいちゃん。アンタ踊れるか?」
男はカルマのダンスを見て言うと、レオとネネカは苦笑いをした。
「ちょっとだけ……かな~……」
「そうかぁ~。ちなみに、あのカルマっていうやつ、知ってっか?」
「あ、はい。友達です。小さいころからダンス習ってて今ではもうあんなに上手になってるんです。」
「へぇ~…良い友を持ったもんだ。じゃあ、すまねぇな。俺行くわ。」
男は二人と別れた。すると、カルマはポーズをきめ、清々しい顔で人々を見た。歓声はカルマを激しく包んだ。その後、カルマは入口に立つレオを見つけ、駆け寄った。
「よ、レオ。」
「やぁカルマ。すごいね、みんな楽しんでた。」
「あぁ、ガキの頃からず~っと踊ってりゃあ余裕ですわな。んで、アランとドーマは?どうした?」
カルマは額の汗を気にしながらレオに言った。
「アランとドーマは、遠くの国の病院にいるよ。ちょっとクエストで……」
「なるほどねぇ~…それで、二人でなぜパーニズに?まぁお前らのことだから……察しはつくが。」
「うん。明日の朝、クエストに出るつもりなんだ。そのメンバー探しで。」
レオが言うと、カルマは小刻みに頷いた。
「OK、分かった。一緒に行くよ。」




