女怪鳥の髪飾り
「殺す!!殺してやる!!ヒト!!」
「クソォ、はなせっ!!」
ハーピーはアランを足で掴み、砂埃が舞う空へ飛び始めた。レオとドーマは、必死になって体を揺さぶるアランを地上から焦った顔で見つめていた。
「チィッ、イチかバチか……」
ドーマは背中の矢筒から一本の矢を取り出し、弓を上に向けて構えた。太陽の光が眩しいからか、ドーマは目を細めている。
「だめだドーマ!気持ちは分かる。でも、もしアランに当たったら………」
「うるさいよレオ!!安心しな。アタシはそこらの素人とは違う。なぁに、確実に当ててみせるさ。」
ドーマはレオの方を見ることなく、上に弓矢を向けてハーピーに狙いを定めていた。
「ヒト、嫌いだ!!ヒト、大っ嫌いだぁ!!」
「くっ、どこまで高く飛ぶ気なんだ!?はなしやがれ!!おい!!」(…!!早くしねぇと…)
アランが体を揺さぶっていると、ハーピーに掴まれていた右腕が、ハーピーの足からはなれた。アランは、右腕に銅を纏わせ、ハーピーの足を殴り始めた。
「でいっ!!でやぁっ!!ぞいりゃぁっ!!」
「くぅっ、コイツ………攻撃力が高いっ…………そんなに逃がしてほしいなら、もっと高い所へ連れてって落としてやる!!無事には済まさんぞぉ………」
下を見ると、レオ達の姿が少しずつ小さくなっているのが見えた。
(早いうちに落ちねぇと、死ぬかもしれねぇ……ん?あれは…)
アランが目を凝らして下を見ると、こちらに弓を構えるドーマがいた。
(…………ハーピーごと落とす気か。ふっ、それしか手段ねぇもんなぁ…)
「ドーマ、アランにあてないようにね…」
「安心しなよ、レオ。」(悪いねアラン…これしか方法が見つからなかったんだ……いくよ……?)
すると、ドーマの指から矢が離れた。矢は吸い込まれるかのようにハーピーとアランの方へ飛び、ハーピーの首に刺さった。
「うっ!!…………あ、あぁ…ぁがっぁ………」
ハーピーはアランを離すと、アランと共に地面に向かって真っ逆さまに落ちた。
「アラン!!ハーピーに掴まって!!着地の時のクッションがわりにするんだ!!そのまま落ちると死ぬよ!!」
「くっ、…レオの指示に従うか……………!!」
アランがハーピーの翼を掴んだその時、アランとハーピーは固く乾いた地面に体を叩きつけられた。
「アラン!!」
レオとドーマは、倒れたアランの方へ駆け出した。首から真紅の血を流すハーピーの横には、全身を震わせて白い目をしたアランがいた。
「おい!アラン!!しっかりしろ!!」
ドーマがアランの体を揺さぶり、右手をアランの頭の後ろに入れると、生温い何かに触れた。手を見ると、アランの血で赤く染まっていた。
「やばいな……」
その時、ネネカが一人の泣いている幼児を背負って走ってきた。
「男の子は無事でした。……アランさん…………?」
「ネネカ、よかった…回復魔法をアランにかけてほしい。」
「あっ……はい。……“レッシュ”……」
レオは驚いた顔のネネカを見て言うと、ネネカはアランに緑色の優しい光を放った。
「ありがとうネネカ。急いで病院に行こう。」
レオ達はハーピーが頭につけている秘宝、女怪鳥の髪飾り を手に入れ、気絶したアランと幼児を連れて町に向かった。




