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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
53/206

空を飛ぶ女

「誰かぁぁぁっ!!助けてぇぇぇっ!!」

「フフッ…………静かにしていなさい。」


 荒廃した神殿の上には、泣き叫ぶ少年を翼で優しく包むハーピーがいた。


「お母さんに会わせてよぉっ!!僕、嫌だよぉぉぉぉっ!!」

「フフッ、まだ黙らない。元気ねぇ…人肉でも食べさせれば落ち着くかしらねぇ………」


 ハーピーは、自分の翼の中で泣く少年を優しい顔で見つめた。


「助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

「………元気な子。本当は十分に育てた後、食べるつもりだったけど…こんなに叫ぶのなら、早いところ黙らせようかしら。」


 ハーピーはそう言うと、少年に鋭い目つきと、牙を向けた。


「安心しなさい。もう大声を出さなくてもいいようにするから。」


 涙でぬれた少年の顔にハーピーがよだれを垂らしたその時、ハーピーの翼に一本の矢が刺さった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!だ、誰だぁっ!?」

「その子を返してもらおうか。逆らうのなら、お前の息の根が止まるまで矢を放ってやる。」


 ハーピーの視線の先には、弓を構えるドーマと、睨みつけるレオとアランとネネカがいた。


「…んだよ。上半身は女性って聞いたけど、四五十代くらいのオバさんじゃねぇか…しかも、デケェし…」

「アラン……本当に期待してたんだ………」


 レオは苦笑いをしながら剣を構えた。


「フンッ!!人間かっ!!貴様らまとめて食ってやるっ!!」

「かかってこい!!人外ババァッ!!」


 ハーピーが大きく翼を広げて四人の方へ突進すると、レオ達は横に転がって回避した。


「チィッ…空を飛べても、大きい体は的になることを知れっ!!」

「ネネカ、上の男の子を助けに行って!どこかに階段があるはずだ!!」


 レオはネネカに言うと、アランと共に、空を飛ぶハーピーを追いかけ始めた。


「あ…はい!!」

「くっ、子を奪い返す気か!!そうはさせんぞぉぉぉっ!!」


 ハーピーは飛ぶ方向を変え、ネネカの方へと突進しはじめた。


「その子供は私のものだぁぁぁぁっ!!」

「させるかっ!!」


 ドーマはハーピーに弓を構え、矢を放った。矢はハーピーに吸い込まれるかのように飛び、胴体に刺さった。


「ぎゃぁぁぁっ!!」


 ハーピーは血を流しながら落下した。レオとアランは落下して倒れているハーピーに飛び掛かり、攻撃し始めた。


「今だ!”連続斬り”!!」

「”銅の拳”!!喰らえ!!」


 レオとアランは、返り血を浴びながらハーピーに攻撃をし続けた。その時、ハーピーがアランの胴体を足で掴み、翼を大きく広げた。


「しまったっ!!」

「許さん……許さんぞムシケラどもぉぉぉぉぉっ!!」


 ハーピーはアランを掴みながら飛んだ。


「アラン!!」

「まずいぞ、何をする気だ!?」

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