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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
50/206

星々の夢

 夜空の星々が静かに輝き、町が松明の優しい光に照らされる頃、無事バインダイルの捕獲に成功したレオ達は、酒場の大きなテーブルを囲んでシルバとライラとクレアと話していた。入口には、シルバやクレアを一目見ようと大勢の人が詰めかけている。


「みんなお疲れ様!!」


 クレアは笑顔で杯を挙げた。


「それにしても、多いですね。ファン……」

「「キャァァァァァァッ!!シルバ様ぁーーーっ!!」」

「「うおぉぉぉぉぉぉっ!!クレア様ぁーーーっ!!」」

「あそこにいる女性は全員シルバのファン、残りの男性は全員クレアのファンだよ。」


 ライラは苦笑いをしながら入口にいる人々を見た。


「っていうかクレアさん。あの時は焦りましたよぉ…。バインダイルを眠らせる予定なのに、あんな歌を歌うから……」

「ごめんねアラン君。私、元気な曲しか歌わないんだ。」

「ま、良かったんじゃない?ルビーキャベツが栽培できるようになって、パーニズのクッカー達も喜んでいるし。」


 ドーマは安心した顔で水を飲んだ。


「おいジャマだ!どけやお前ら!!」


 すると、一人の男が入口に詰めかけた人を押しのけてレオ達の方に歩いてきた。バルゼフだ。


「何しに来た、バルゼフ。」

「なんだ、お前のパーティか、レオ。俺はそこのギター持ってる女に文句を言いに来たんだ。」


 バルゼフが言うと、入口に立つ人々はバルゼフに大声で言葉を投げた。


「なんだテメェ!!」

「クレア様に文句を言う奴なんてライトニングから出ていけ!!」

「お前ごときがクレア様に近づくな!!」


「うるせぇ!!キモオタどもぉっ!!!」


 バルゼフは振り返って怒鳴った。


「バルゼフさん、何かあったのですか?」


 ネネカが問いかけると、バルゼフは近くのカウンター席に手をかけて話し出した。


「昼、俺は宿屋にいた。そしたら、でけぇ音の音楽が聞こえてきて、外を見るとそこの女がギター弾いて歌ってたんだよ。そのせいで寝ることもできなかったんだよ!!謝ってもらおうか!?あぁっ!?」

「ふっ、寝れなかった…ってお前はバインダイルか?安心しろ、バインダイルも寝ることができなかったんだよ。」


 ドーマは席を立ち、バルゼフを上から見た。


「ほぅ…またお前か、ドーマ。今日お前は何をした?」

「走った。お前はどうなんだバルゼフ。」


 ドーマが腕を組んで言うと、バルゼフは睨みながらドーマに近づいた。


「さっきも言っただろ?お前は人の話も覚えれないお馬鹿さんなんですかぁ?宿屋にいたんだよ!!」

「お馬鹿さんは貴様だバルゼフ!!」


 アランはテーブルを殴って立ち上がった。


「お前、この前シルバさんに助けられた時、何を学んだんだ!?」

「何を学んだ?あぁ?」


 バルゼフはアランに言いながら、テーブルに顎をのせて寝ているシルバの顔を見た。顔はまるで猫のようだ。


「……寝てんじゃねぇかよ!!何も学ばねぇよ。」

「シルバさんが寝ているとかはどうでも良いんだよ!!レベルは3、装備は全て毛皮、何の進歩もねぇじゃねぇか!!」


 アランはバルゼフの胸倉を掴んで怒鳴った。


「今日の昼は宿屋にいたって言ったけど、毎日だろ?」


 ドーマは胸倉を掴まれたバルゼフの顔を見た。


「まぁその手を離せよアラン。お前らだけ勝手に、馬鹿みてぇな夢を見て馬鹿みてぇに命を棒に振ればいいだろう?俺たちはこの世界から出られない運命さだめなんだよ。」


 バルゼフはアランの手を払い、酒場を出た。


「ったく……クレアさん、ごめんなさい………あんな奴が文句言って…………」

「大丈夫だよドーマちゃん。今度はあの子にも私の音楽が届くように、精一杯がんばるから!君たちも、これからがんばってね!じゃ、シルバ君、ライラ君、帰ろっか。」


 クレアは笑顔で言い席を立つと、ライラはシルバの肩を揺さぶって起こした。


「おい、シルバ。帰るぞ。何寝てんだよ。」

「むにゃむにゃ…………ん?おぅ、今起きた今起きた…何かあった?」

「お前の話をしてたんだよ!!行くぞ。」

「うぇい。」


 三人は酒場を出た。




 その後、酒場で食事を済ませたレオ達は、酒場を出て宿屋に入った。レオとネネカが眠りについた時、ドーマはベッドに腰を掛けてアランに声をかけた。


「なぁ、アラン。」

「な、なんだよ。ドーマ。」

「……………お前の夢にアタシが出てきたんだよな……」

「………………あ、あぁ。」

「……聞かせてくれないか……………」

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