食材の力
“………ーマ……………ドーマ………………ドーマ!!…………………………誰だ……や…めろぉ……!!やめろぉぉっ!!!”
「ヌァッ!!……」
宿屋で寝ていたアランは、夢から覚めた。が、まだ外は暗く、満月が輝いている。
「………………またか……。…………最近、変な夢ばっか見るな………ッ、変な汗も出てきた…………」
アランはベッドから立ち上がり、机に置いてあったタオルで脂汗を拭き、寝ているドーマの顔を見た。
「………なんで夢にコイツが……………しかも、あんなカタチで…………何なんだ………?」
アランは頭を掻くと、コップ一杯の水を喉を鳴らして飲み、布団に入った。
日の光がパーニズを照らす頃、レオ達は朝食をとるため、宿屋を出て酒場に入った。
「朝は空いてるなぁ……あそこに座ろう。」
ドーマは一番奥のテーブルに指をさすと、レオ達はそのテーブルを囲んで座った。
「僕は何にしよっかな………」
「トロンコッカーの玉子かけご飯でよくねぇか?朝だぞ?」
「私は、デカハムのハンバーグ定食でいいですよ……」
レオとドーマとネネカがメニューを見ている中で、アランはドーマの顔を見たり、下を向いたりしていた。
「ア、アラン?どうしたの?」
「…!!お、おう………なんだ?」
レオが声をかけると、アランは目を大きく開いてレオのほうを見た。
「この前もそんなことあったよな?アタシをジロジロ見て………気持ち悪いからやめてくれ。」
「お前が気持ち悪いんだよ!!俺の夢の中に出やがって!!」
アランは怒鳴って立ち上がると、三人は首を傾げた。
「夢の中に………ですか?」
「…………それ、アタシが悪いのか?」
「…………………やっぱ、何でもねぇよ。忘れてくれ。」
アランは腕を組み、黙って座った。
「ドーマさん、夢に出てきたってことは…………」
「ちょ、ネネカ。絶対違うからやめろ。」
ドーマがネネカの肩に手を置くと、カウンターの奥の調理場からデンテが歩いてきた。
「朝っぱらからうるさいなぁ……何食べたいの?決まった?ん?」
「おぉ、デンテ。サブ職のほうはどう?上手くいってる?」
アランは腰に手をあてているデンテを見た。デンテは以前とは違って、料理人の服を着ていた。
「ん?あぁ、ボチボチ………わからねぇところは教えてもらえるし、ミスっても優しくしてくれるし、環境としては良い方かな。んで、何食いてぇんだよ?ん?」
「僕はトロンコッカーの玉子かけご飯で。」
「俺も。」
「アタシも。」
「私は……デカハムのハンバーグ定食で…………」
四人が言うと、デンテはカウンターの方を見た。しかし、デンテは再び四人の方を見て話しだした。
「なぁお前ら、ちょっと頼みがあるんだ。」
「なに?デンテ。」
レオはデンテの目を見て問いかけた。
「俺、この世界で料理の力を身につけたいと思っているんだ。その一歩として、食材が欲しい。ここで一緒に働いている人に聞いたんだが、昔、パーニズでは変わった栽培が行われていたらしい。植物系の魔物を使った栽培方だ。ソイツの背中に生える ルビーキャベツ はとても美味しかったとか………だが、18年前に起きたダークネスの襲撃の影響で、その魔物は城下町から姿を消したらしい。」
「ふ~ん………………で、ソイツの名は?特徴は?今どこに?」
ドーマは腕を組んで問いかけた。
「名はバインダイル、ドラゴンのような体をしているが、敵からルビーキャベツを守るために根や葉でドラゴンの体をつくっている。植物とはいえ、奴には手足のような無数の根があり、移動が可能だ。聞いた話だが、ソイツは今、パーニズの北の方に根をはって寝ているらしい。パーニズの北っていうのは、北海道のところだ。」
「じゃあ、そのバインダイルをここまで連れて来れば良いってことだな。」
アランはデンデの鋭い目を見つめた。
「そうだ。ちなみに、この依頼はパーニズ相談事務所のクレアさんと契約している。何かあったら何とかしてくれるだろう。報酬は1035セリアだ。………………やってくれるか?」
「当たり前だデンテ。………………そんなことより、アタシ達の飯は?」




