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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
45/206

美しき翅

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 アランはキャリオンクローラーの繭に銅の拳を突き出した。しかし繭は鉄のように固く、アランの拳では歯が立たなかった。


「チィッ、固すぎだろ………」

「アラン、無駄に体力を使うだけだ。止めとけ。」


 ドーマは瓦礫に腰を掛け、薬草ジュースを飲んでいる。


「そうだよ。今は戦いに備えたほうがいい。」


 レオはネネカの首に手を添えて言った。


「……分かった。……………それにしても、だいぶ静かになったな…ワームもどこへ行ったのやら……」


 アランは拳を元に戻し、辺りを見回した。


「おいレオ、ネネカは大丈夫か?」

「うん。まだ気を失ってるけど、息はしている。ドーマは大丈夫なの?その肩……」


 ドーマは瓶を置いて、右肩を抑えた。


「あぁ。少し痛いが、ちゃんと弓は使える。……………お前らはいいよな。」

「え、何が?」


 ドーマはジュースを一口飲み、ニヤニヤしはじめた。


「本当のこと言えよ。付き合ってんだろ?ネネカと…。アタシなんか、好きな男もいねぇっつうの。」

「ドーマ?僕、付き合ってないよ…?」


 レオは首を傾げて言うと、ドーマは疑うような眼をして笑顔を見せた。


「へぇ~…本当かなぁ~?ねぇアンタ、ネネカと何か約束とかしてるんじゃないの?コッソリと……」

「…約束かぁ……。そう言えば、この前ネネカを病院へ迎えに行った時、絶対に一人にしないでって言われたっけ…………」


 レオはそう言って黒く曇った空を見上げると、ドーマはレオに詰め寄ってきた。


「やっぱそういう関係なんじゃん?ん?どうなのどうなの?」

「いやぁ……僕、そういうのよく分かんないからなぁ………」


 レオが言うと、ドーマは仰向けに倒れた。


「レオ、アンタ鈍感すぎんだろ~………だから彼女できないんだぞ。って言うか、ネネカそんな事言ったのかよ。ほぼ告ったのと一緒じゃん………」


 その時、巨大な繭が割れ始めた。


「来るよ!アラン、ドーマ、戦闘態勢にはいって!!」

「来たか、イモムシの時の姿よりマシなら良いんだがな。」


 レオは剣を鞘から抜き、アランは両手を前に構え、ドーマは立ち上がって弓を構えた。三人が見つめる繭からは、ゆっくりと綺麗な翅が出てきて、同時に無数のワームが瓦礫から顔を出した。


「やっぱり、イモムシは蝶になるんだな……見た目はマシかもな。」


 ドーマが言うと、蝶になったキャリオンクローラーが繭を全て破り、姿を現した。名はスカイクローラー、四枚の美しい翅を持ち、首のあたりには大きな綿のようなものがあるが、全て触手だ。手の部分は人間のように指がある。


「アラン、ドーマ、行こう!!」


 三人はスカイクローラーの方へと走り出した。

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