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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
44/206

捕食と成長

「…チィッ、デカすぎるだろ……何でこんな奴と戦わなけりゃいけねぇんだ…………?」

「知らないよ。って言うか、何でアタシと同じ所に隠れるんだよ…」


 アランとドーマはビルの陰に身を潜め、キャリオンクローラーを見ていた。


「しょうがねぇだろ。……………んで?いつまで隠れる気だ?」

「フン、さあねぇ……そう言っているアンタはどうなんだ?アラン。」


 アランとドーマは鋭い目付きで睨み合い、互いの胸倉を掴んだ。


「お前が戦いに行けよ!!」

「はぁ!?アンタが行けよ!!怖がってんのか!?」

「お前が言えることかソレ!?あのイモムシに食べられて来いよ!!!」


 その時、二人の周りに十匹ほどのワームが現れた。


「お、おおおおおい!!アラン!!何とかしろ!!!」

「チィッ、囲まれたか………しょうがねぇ、新しい技を見せてやる!!」


 アランは腰を低くして構えた。


「ドーマ、離れろ!!!」


 アランが大声で言うと、ドーマは走って距離をとった。ドーマが離れたことを確認したアランは真上に高く跳び上がり、右足を突き出した。


「”メガ・クラッシャー”!!!!」


 アランが右足で力強く地面を踏んだ途端、周りの地面が揺れだし、二人を囲んでいたワームは空高く打ち上げられ、地面に体を強く打たれて倒れた。


「ふぅ……これで何とか………」

「あ、あぶねぇじゃねぇか!!……助かったけどよぉ…………」


 ドーマが言ったその時、二人の間からキャリオンクローラーが顔を出し、無数の赤い眼で二人を見つめた。


「え……………」

「えぇ…………………………」


 キャリオンクローラーは無数の触手をアランとドーマに向かって伸ばした。


「に、逃げろぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「“回転斬り”っ!!」


 その時、キャリオンクローラーの上からレオが飛び込んで来て、二人に向かって伸びた触手を剣と自分の体を回転させて斬り落した。


「アラン、ドーマ、大丈夫?」

「あ、あぁ……助かったよ…………」


 すると、キャリオンクローラーは切断された触手を見つめ、切断された部分から緑色の粘液を出して元に戻した。


「さ、再生!?」

「そうなんだよドーマ…さっきから何度も斬っているけど、粘液を出して再生するんだ……」

「お前、よく斬れるな………」


 アランが言うと、キャリオンクローラーは再び動き始めた。


「おい!来るぞ!!」

「アラン、ドーマ、とりあえず距離をとるんだ!!」


 三人は一斉に走り出した。キャリオンクローラーは重い体をゆっくりと動かして三人を追いかけた。


「そういえば、ネネカは?」

「あぁ、ネネカなら今、ビルの中に避難している人たちを回復させているよ。」

「やっぱネネカは優しいな…………」


 すると、三人を目掛けて五匹のワームが飛び込んできた。三人は立ち止まり、レオは剣を横に振って二匹のワームを斬り落とし、アランは両腕に銅を纏わせて二匹のワームを殴った。ドーマは弓を構えて矢を放ち、一匹のワームに命中させると、三人は再び走り出した。


「んで、奴を倒す方法はないのか?早く倒さないと厄介になるって言われただろ?」

「………いくら再生するとは言っても、完全に回復するってことじゃないんじゃ……?」

「どういうことだ?レオ……………」


 アランはレオに問いかけた。


「再生する生物は、自分の力で再生する。つまり、再生したところで体には負担がかかっているはずだから、ダメージははいっている。……………僕の仮説だけどね。」

「……………よく分かんねぇけど、このまま戦えばいいんだな?」

「うん。じゃあ距離もとれたと思うから、そろそろ戦闘態勢にはいろう。」


 三人は走るのを止め、後ろに振り向くと、荒廃した高いビルにキャリオンクローラーが巻き付いていた。ビルの窓に触手を入れている。


「…………何してんだアイツ?」


 ドーマが言ったその時、キャリオンクローラーの触手に巻かれた人が、窓から出てくるのが見えた。


「ちょ……まさか……」

「ヤバいやつじゃ……………」


 キャリオンクローラーは、人を掴んだ触手を口に運んだ。


「おいレオ!食べられたぞ!!」

「このままじゃ…………アラン、ドーマ、急ごう!」


 レオが言うと、三人はキャリオンクローラーの方へ走り始めた。


「おい、ネネカはビルの中にいるんだよな?危なくねぇか?」

「そうだねドーマ…」


 その時、一匹のワームがドーマを目掛けて飛び込み、ドーマの右肩を噛んだ。


「うぐっ!!」

「ドーマ!!大丈夫!?」

「レオ!アラン!先に行け!!」


 ドーマは立ち止まり、ワームを払い始めた。レオとアランは止まることなく、キャリオンクローラーの方へ走っている。


「キャリオンクローラー……あんな捕食方法じゃあ逃げ場なんて無いじゃねぇか…………」

「ネネカは大丈夫だろうか………」


 レオとアランはキャリオンクローラーの下に着いたその時、上の窓から触手に巻かれたネネカが現れた。


「ネネカ!!」

「レオさん!!アランさん!!助けてください!!」


 ネネカが大声で言うと、キャリオンクローラーはネネカの首に一本の触手を伸ばし、棘を刺した。


「ネネカ!!おいレオ、マズいぞ!!」

「分かってる!!くっ……………どうしたら………………」


 キャリオンクローラーは、麻痺して動かなくなったネネカを口に運ぼうとしたその時、一本の矢がキャリオンクローラーの赤い眼に命中した。キャリオンクローラーはもがき始め、ネネカを触手から放すと、レオは落ちてきたネネカを受け止めた。アランは後ろを見ると、右肩から血を流しながら弓を構えているドーマがいた。


「ナイス、ドーマ!」


 アランはドーマに大きい声で言うと、ドーマは頬を少し赤くして目を逸らした。


「アラン、とりあえず距離をとろう。」

「えぇ…また走るのかよ……」


 ネネカを抱えたレオとアランはドーマの方へ走り出すと、キャリオンクローラーは荒廃した建物や瓦礫に白い糸を吐き、自分の体にも糸を巻き付け、蛹の様に動きを止めた。


「遅かったか……………」

「仕方ない。今のうちに準備をしよう。」

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