戦いに備えて
エルドは落ち着いた表情で話し出した。
「それでは、今のダークネスの世界について話しましょう。まず、以前調査に行った時より魔物の力は遥かに上回っています。」
「原因は?」
リュオンはタバコの煙をはいて言った。
「まだ詳しくは分かりません。ただ、多くの魔物が新たに強い力を手にしたように感じました。」
「新たなる強い力………前まではなかったんだよな?」
シルバはエルドの紫色の瞳を見て問いかけた。
「はい。この世界に新しい種族、人間が現れてからだと思われます。」
「人間………俺たちのことだよな?」
「うん……………」
アランとレオは互いに向き合って言った。
「でも、人間が現れただけでダークネスの力が強くなるっていうのは繋がらないと思うけど…」
「人間とダークネスはまだ関わりが少なさそうだしね。」
ライラはグラスに入った茶を一口飲み、マリスは白衣のポケットに両手を入れた。
「……………そういえば、この前奇妙なことが………」
シルバが言うと、ココは何かを察したような眼をした。
「エンペラーグリズリーのやつか!」
「エンペラーグリズリーと言えば…………バーノンが死んじまった……な。」
ドーマが苦い顔をすると、ネネカは何かを思い出した。
「そういえば、遺体はどうなったのですか?……バーノンさん以外の墓には遺骨がありますが………」
「お、良いとこ気づいた。ソイツの遺体もそうだが、近くにいた熊ちゃんの内臓も綺麗さっぱり無くなってたぞ。」
シルバはネネカに向かって指を鳴らした。
「え?僕らが行く前にエンペラーグリズリーは誰かに討伐されてたんですか?」
レオはギルドの皆に問いかけた。
「そう。だからあの時、エンペラーグリズリーの子供が大量発生して、緊急クエストを出したんだ。」
「そうだったのか、ココ……エルドさん、他に情報はありますか?」
ドーマはエルドの方を見た。
「他ですか………………」
「フッ、そんなもんか。情報量が少なすぎるぞエルド。」
リュオンはゾロマスク越しにエルドを睨んだ。
「申し訳ございません。今言えることは、あちらの世界も早いペースで力を強めているということです。」
「ちょっと待てよ。まだ光の階段は闇の渦まで届いてないぞ。なんでダークネスの世界に行けたんだ?俺達にも、あっちの世界へ行く方法を教えてくれよ。」
アランはエルドに問いかけるが、エルドは横に首を振った。
「残念ながら、それは無理です。今のあなた達にダークネスの世界に行く方法を教えると、命の保証はありませんからね。」
「………そんなに強いのか?ダークネスの奴らは…………」
オーグルは表情を曇らせた。
「まぁ、決戦の時までに強くなればいい。」
シルバが言うと、レオ達はうなずき、ギルドの皆と別れた。
「決戦の時までに……か。じゃあ俺、コルトとスフィルのところに行くぞ。いろいろと、ありがとう。」
オーグルは病院のほうへ歩いて行った。
「なぁレオ、そろそろ装備を変えた方がいいんじゃねぇか?」
「うん。そうだね、ドーマ。じゃあ武具屋に行こうか。」
レオが言うと、四人は商店街へ向かった。
「ヘイらっしゃいっ!!」
「今日も良い品揃ってるよ!!」
「おぉ、そこのにいちゃん!寄っといで!!」
パーニズの商店街は、いつもと変わらず賑やかだ。レオ達は人々をかき分け、武具屋へ向かった。
「お、来たか!今日こそお前たちにとって良い装備を取り寄せたぞ!!」
武具屋がカウンターから身を乗り出して、レオ達に声をかけた。
「マジ!?何がある?」
アランはワクワクした表情を武具屋の男に見せている。
「おぉ、聞いて驚くなよ……ジャーン!鉄の鎧一式と、スパイクジャケット一式と、黒猫のコート一式と、白翼のローブ一式だ!!すごいだろ?」
「僕たちのために取り寄せてくれたんですか?」
レオは四つの装備と、ニヤニヤしている武具屋の顔を見て言った。
「おう、当たり前だぁっ!!買ってくれるか?」
「はい、もちろん。」
レオ達は四つの装備を購入し、装着した。
「おっと、武器も忘れるなよ。鉄の剣と、鉄のガントレットと、鉄の十字架。お前たちにおすすめの品はこれかな。買ってくれるか?」
「はい、買います。」
レオとアランとネネカは、それぞれの武器を購入し、装着した。
「おい、アタシには無いのかよ。」
「ごめんな、ねぇちゃん。代わりに、矢を無料で30本あげるからさ……」
武具屋の男は後ろに置いてある大きなタルから、矢を30本取り出し、ドーマに渡した。
「ありがとう!やっぱ優しいな、おっちゃん!!」
「おう!次来た時にはもっと良い物取り寄せるからな!」
レオとアランとドーマは酒場へ向かって歩き始めると、ネネカは「ありがとうございました。」と小さな声で言い、深く頭を下げ、三人を追いかけた。




