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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
32/206

友の思い

「ハァ…ハァ……くっ!!」

『グアァァァァッ!!』

「俺は…一人で……強くなるんだ!!うおおおおおおっ!!!」




「お〜い、レオ〜…大丈夫か〜?」

「………うぅ…ここは……城の…中…」


 ベッドで寝ていたレオは目を覚ました。最初に目に入ったのは黒い鎧を身に着けたエレナスの顔だった。


「僕は…何を……」

「なんだ?覚えてないのか。お前さんの友のドーマとネネカとコルトが、治療するよう知らせてくれたんだが、………何があったのかは俺が知りたいくらいだ。お前さん、頭から血を流していたし、まさか記憶まで失うとはな。」


 エレナスは顎のひげをなでるように触った。


「……そういえば、さっきアランと……」

「お、思い出したか。…アランと何があった?」


 エレナスが椅子に座った。


「喧嘩をしました…」

「なに?喧嘩!?……ハッハハハハ!!」


 エレナスは大きい口で笑った。それを見ているレオは、石のようにかたまっている。


「おお、すまんすまん。…そうか、お互いの話がかみ合わんかったのだな。」

「……はい。でも、なぜ分かったのです?エレナス兵長……」


 レオは、小さい声で言った。


「ん?そうだなぁ…俺の思う喧嘩の原因は、たった一つだからな。」

「一つ…ですか?」

「ああ。複数の思いが上手いこと重ならず、自分のことを理解してほしくなるということだ。」

「自分のこと……たしかに、そうかもしれません。」


 レオは少しずつ顔を上げた。


「そういえば、温泉は?」

「ああ、見るか?」


 エレナスは立ち上がり、カーテンを開いた。


「こ、これは…」

「ふっ、それでも、同じ思いを持った人は、自分が思った以上に多いんじゃないのかな?」


 窓に映ったのは、大きな煙突が立った建物だった。


「すごい……僕がいない間に、こんな…」

「あとは仕上げの作業だけらしい。人間という種族もたいしたモンだ。」

「レオさん!!」


 ネネカが部屋に入ってきた。


「ネネカ!」

「アンタ、無事だったか。心配したぞ。」


 ドーマも部屋に入ってきた。


「ドーマ、ネネカ…心配かけてごめん。」

「じゃ、俺は仕事に戻るぞ。」


 エレナスは右腕を上にあげながら、部屋を出た。


「……なぁ、レオ。兵長と何の話してたんだ?」


 ドーマが椅子に座った。


「あぁ……アランとのことを…」

「あ~、アイツのことか。あんな自分勝手なヤツなんか、ほっとけよ。」


 ドーマが苦笑いをした。


「…ドーマ、そのことなんだけど………アランに謝りたいんだ。」

「なっ……」


 ドーマは動きを止めた。


「でも、謝るのはアランさんのほうじゃ…?」

「ネネカ、ドーマ、わがまま言ってゴメン。さっきエレナス兵長と話した時、気付いたんだ。」


 レオは、窓の奥に映る、闇の渦を見て言った。


「アランも、皆のことを考えていたんだと思う。……アランのところに、一緒に来てほしいんだ。」

「はぁ……そうか。」


 ドーマがため息をついた。


「分かったよ。アンタ、このパーティのリーダーだしな。…しょうがねぇけど、ついて行ってやるよ。でも、アタシがアイツに謝る気持ちは、ゼロだからな。」

「うん。ありがとう。」

「私も行きます。」

「ありがとう。ドーマ、ネネカ……」


 三人は旅の支度をして、城を出た。

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