友の思い
「ハァ…ハァ……くっ!!」
『グアァァァァッ!!』
「俺は…一人で……強くなるんだ!!うおおおおおおっ!!!」
「お〜い、レオ〜…大丈夫か〜?」
「………うぅ…ここは……城の…中…」
ベッドで寝ていたレオは目を覚ました。最初に目に入ったのは黒い鎧を身に着けたエレナスの顔だった。
「僕は…何を……」
「なんだ?覚えてないのか。お前さんの友のドーマとネネカとコルトが、治療するよう知らせてくれたんだが、………何があったのかは俺が知りたいくらいだ。お前さん、頭から血を流していたし、まさか記憶まで失うとはな。」
エレナスは顎のひげをなでるように触った。
「……そういえば、さっきアランと……」
「お、思い出したか。…アランと何があった?」
エレナスが椅子に座った。
「喧嘩をしました…」
「なに?喧嘩!?……ハッハハハハ!!」
エレナスは大きい口で笑った。それを見ているレオは、石のようにかたまっている。
「おお、すまんすまん。…そうか、お互いの話がかみ合わんかったのだな。」
「……はい。でも、なぜ分かったのです?エレナス兵長……」
レオは、小さい声で言った。
「ん?そうだなぁ…俺の思う喧嘩の原因は、たった一つだからな。」
「一つ…ですか?」
「ああ。複数の思いが上手いこと重ならず、自分のことを理解してほしくなるということだ。」
「自分のこと……たしかに、そうかもしれません。」
レオは少しずつ顔を上げた。
「そういえば、温泉は?」
「ああ、見るか?」
エレナスは立ち上がり、カーテンを開いた。
「こ、これは…」
「ふっ、それでも、同じ思いを持った人は、自分が思った以上に多いんじゃないのかな?」
窓に映ったのは、大きな煙突が立った建物だった。
「すごい……僕がいない間に、こんな…」
「あとは仕上げの作業だけらしい。人間という種族もたいしたモンだ。」
「レオさん!!」
ネネカが部屋に入ってきた。
「ネネカ!」
「アンタ、無事だったか。心配したぞ。」
ドーマも部屋に入ってきた。
「ドーマ、ネネカ…心配かけてごめん。」
「じゃ、俺は仕事に戻るぞ。」
エレナスは右腕を上にあげながら、部屋を出た。
「……なぁ、レオ。兵長と何の話してたんだ?」
ドーマが椅子に座った。
「あぁ……アランとのことを…」
「あ~、アイツのことか。あんな自分勝手なヤツなんか、ほっとけよ。」
ドーマが苦笑いをした。
「…ドーマ、そのことなんだけど………アランに謝りたいんだ。」
「なっ……」
ドーマは動きを止めた。
「でも、謝るのはアランさんのほうじゃ…?」
「ネネカ、ドーマ、わがまま言ってゴメン。さっきエレナス兵長と話した時、気付いたんだ。」
レオは、窓の奥に映る、闇の渦を見て言った。
「アランも、皆のことを考えていたんだと思う。……アランのところに、一緒に来てほしいんだ。」
「はぁ……そうか。」
ドーマがため息をついた。
「分かったよ。アンタ、このパーティのリーダーだしな。…しょうがねぇけど、ついて行ってやるよ。でも、アタシがアイツに謝る気持ちは、ゼロだからな。」
「うん。ありがとう。」
「私も行きます。」
「ありがとう。ドーマ、ネネカ……」
三人は旅の支度をして、城を出た。




