友情の糸
「ふ~ん…サブ職か。」
レオが切符のような紙を持っている。紙には、〈サブ職・クラフター権〉と書かれている。
「エルドさんから聞くと、サブ職はいつでも変えることができるらしいし、普通の職業みたいに、レベルがあって、段階ごとに戦闘に役立つスキルが身につくらしい。」
ドーマがレオにペンを渡した。
「なんか、おもしろいですね。でも、クラフターになって何をするんですか?」
ネネカがドーマに問いかけた。
「ネネカ、さっきアタシ、殴られそうになっただろ。多分、このままじゃ皆、外に出なくなって現実の世界に帰るどころか、ダメになっちゃうんじゃねぇかなって。」
「それで、これを?」
「ああ。悪くねぇだろ。」
ドーマがニヤけた。そしてレオに口を開いた。
「……あ、そういえば、アイツは?」
「アイツ?………あ、あ~。アランのこと?さっき武具屋行くって言ってたよ。」
「アランさんにもサブ職のこと言いに行きましょう。」
三人は、商店街へ向かった。
「悪いねぇ、にいちゃん。今日は武闘家系の武器は仕入れてないんだよ。明日にしてくれないか?」
「なんだよ、つまんねぇな。もっとなんか無いのかよ。グローブとか、ツメとか…なんならガントレットでも…」
「にいちゃん…ガントレットはさすがに高すぎるぜぇ……」
「おーい、アラーン!!」
三人は武具屋にいたアランと合流した。
「おう、おめぇら。今日はいいもん売ってねぇわ。」
「おおおお!!おっちゃん、いいもん売ってんじゃん!!!」
ドーマが目を光らせた。
「お?ねぇちゃん、どれや?どれや?」
「それだよ、それ!その長い弓!!」
ドーマが指をさして言った。
「あぁ、緑樹の長弓か。730セリアだが、どうだ?」
「くれよ!ライフル売るからさ!」
「あいよ!…すまんなぁ、お前ら。明日はちゃんとしたヤツ仕入れてくるからよ。」
「ありがとう。じゃあ、行こうか。」
四人は商店街を歩きはじめた。
「ねぇ、アラン。一つ提案があるんだけど。」
レオが小さい紙を取り出した。
「どうした?」
「最近、生徒が旅に出てなくて、このままでは魔王倒せないんじゃないかなと思ってさ…」
レオがアランに紙を渡した。
「…サブ職?……クラフター?なんだこれ?」
「皆で温泉でもつくってみようかな…と思ったんだけど、やってみない?」
すると、アランがレオに紙を返した。
「おいおい、温泉?そんなことより、さっさとレベル上げて魔王倒したほうがいいんじゃねぇのか?」
「で…でも……皆が…」
「は?皆?皆って生徒のことか?お前、さっきのデンテとかの言動忘れたのか!?」
アランが怒りはじめた。
「待ってよ、僕の話を」
「もう他の生徒なんかどうでもいいんだよ!!今の俺たちには、のんびり温泉つくってる暇なんかねぇんだよ!!あと、死んだ奴らはどうなるんだ!?」
「アラン!!」
レオは我慢できず、アランを突き飛ばした。
「…ってぇっ!てめぇぇ!!」
アランがレオに殴りかえした。レオは倒れた。
「やめてくださいっ!」
「おいっ!アラン!!」
「…こいよ、レオ。俺に傷をつけねぇと気が済まねぇだろ?」
すると、レオはゆっくり立ち上がり、剣を握った。
「レオ!!お前ら、もうやめろ!!」
「はぁぁぁぁっ!!」
レオがアランに飛び掛かった。が、アランがレオの刃を銅の拳で受け止め、もう片方の手でレオを殴り飛ばした。
「ぐあぁぁっ!!!」
レオは倒れた。
「おい!アラン!!やっぱお前はそんなヤツだったんだな!!」
ドーマが弓を手に取った。
「ものづくりなら勝手にやってろ!!もう俺だけで行く。あのシェウトのようにな。」
アランは三人の前から姿を消した。ネネカはひどく落ち込んでいる。
「くっ……おい、レオ。大丈夫か?」
ドーマがレオに声をかけた。
「う…がはっ!…だ、大丈夫だ…………つくろう…みんなで…」
「……ああ。」
レオは、紙を拾い、ペンを持って名前を書いた。その瞬間、紙は燃え、その火はレオの胸に入っていった。