道
ロールプレイングゲームの世界に飛ばされ、魔王の存在を知ったレオ達は、草原に立ち、辺りを見回した。辺りには30cmくらいの二足歩行のハムスターが歩いている。魔物のようだ。後ろを向くと、大きな城が建つ町があった。
「みんな、一旦あの町に行こう。」
「でも、これからどうするんだよ。」
キュレスが心配そうに言った。するとアランは彼女に口を開いた。
「なぁに、手はあるさ!ついて来いっ!」
そしてレオ達は町に入ることにした。門を潜ると、町の人々は生徒の制服姿をジロジロと見てくる。
「なんだ、コイツら?見掛けねぇ顔だなぁ。」
タバコを咥える男がそう言ったが、アランは気にする事なく、こちらを見つめる人々や並ぶ建物に目を光らせていた。
「すげぇ、人も建物もリアルだ…これも校長が…」
「ねぇアラン、手はあるって何なのよ?」
ハンシュがアランに怒ったように言った。
「あ?そうだな、この町には城がある。まぁRPGの基本のことをするんだ。知ってるだろ。謁見とチュートリアルさ。」
「はぁ?そんなの私が知ってるわけ無いでしょ?私はゲームなんてしないのっ。」
「あ〜っ、うるせぇな。黙ってついて来いって。」(…はぁ、だから生意気な女は嫌いなんだよな。)
そんな言い争いをしている間に、町の城に着いた。城に入ろうとすると、見張り番の兵士が話してきた。
「なんだお前達は?…はっ!!まさか!!」
兵士は槍を強く握ったものの、何かに気付いた途端にそう言って城の門を開いた。
「ど、どうぞお入り下さい。」
レオ達は王の部屋へ進んだ。緑の広がる庭、先に伸びる赤いカーペットと吊り下げられたシャンデリアが彼らを奥へと誘う。そして、ついに王の部屋の前にたどり着いた。
「さぁ入れ。」
黒い鎧の男の太い声がした。レオ達は、王の部屋に入った。そこには、赤いマントに身を包んだ茶色い髭の王がいた。その隣には、派手に着飾った髪の薄い男が立っている。大臣か貴族か、位の高い人物だろう。両手の指を奇妙に絡めているのは癖だろうか。すると、王が彼らに口を開いた。
「おう、お前達か。もう話は聞いておる。お前達が共に戦ってくれる新しい種族、人間だね。」
「あの、僕達は…」
「おうおう、大丈夫だ。ワシはお前達がこの世界を救ってくれることを信じておるからの。…そうじゃ、歓迎の印としてじゃが、500セリアでも受け取ってもらおうかのぉ。」
王がそう言うと、周辺に立っていた兵士達が生徒皆に数枚の金貨が入った小さな袋を渡した。どうやらこの世界の通貨のようだ。1枚1枚に亀のような絵が彫られている。
「お前達の活躍に期待しておるぞ。よし、もう下がってよい。おっと、エレナス兵長、この者達にこの町の事や、魔物との戦い方について教えてやってくれ。」
「はっ!かしこまりました。」
すると、先程の黒い鎧の男が姿勢を正して敬礼をした。その後レオ達はエレナスについて行き、城を出て商店街に入った。そこはとても賑わっており、石畳からは弾む音が聞こえる。
「よし、まずは商店街だ。あそこの武具屋では武器や防具を購入できる。他にも道具屋などがある。金が貯まった時に少し立ち寄ると良い。」
一行は商店街を通り過ぎると、先程城へ向かう時に歩いた住宅街に出た。町の門の近くに宿がある。
「次は宿屋だ。ここではベッドで休んで体力を回復することができるぞ。朝や昼も泊まれるから安心して利用できる。ちなみに、一泊100セリアだ。」
その後、宿屋を左に通り過ぎ、エレナスは少し大きな建物に指をさした。
「あれが病院だ。ここでは毒の治療や麻痺の治療、石化の治療ができる。毒の治療は30セリア、麻痺の治療は50セリア、石化の治療は70セリアだ。」
そこから少し歩くと、ステンドグラスと鐘が輝きを放つ教会が建っていた。その奥には、翼の生えた数頭の馬を囲む柵があった。
「次は教会だ。ここでは呪いを解いたり、神に向かって祈ると、精神を整えることができるぞ。呪いを解くのは一回500セリアだ。お前らみたいな新米には少し高いんだよ。そして、奥に見えるのがペガサス貸し出し場だ。目的地までの移動に使うと良い。」
すると、来た道を少し戻り、再び門の近くに出た。目の前に酒場がある。中は多くの人々で賑わっていた。
「ここは酒場だ。ここは冒険者の本拠点とも言われるほど利用する人が多い。自分の職業を決めたり、冒険メンバーを集めたり、クエストボードで世界中の人々の依頼を受けることができるぞ。あと、ここは食堂としても評判が高い。よし、町のことについてはここまでだ。」