ガイアの指輪
「止まれぇぇぇっ!!」
シェウトが銅の拳でロックエイプの腹部を殴った。
『バウアァァッ!!』
ロックエイプは、シェウトに大きく腕を振ったがシェウトは地面を強く蹴って避けた。
「絶対に許さない!!」
ベリルは杖を構え、ロックエイプにフレアを放った。
「よせ!お前は…」
『バァァァウウ!!』
ロックエイプがベリルの放ったフレアを避け、ベリルを蹴り飛ばした。
「キャァァァァッ!!!」
「ベリル!!くそぉっ!!」
ユスーチはロックエイプに殴りかかった。が、その右腕を何かが掴んだ。
「なにっ!?……あ、ああ…」
「ユスーチ!!」
二頭目のロックエイプだ。その奥にもう一頭立っていた。
「くそっ!はなせ!!はなせ!!」
その時、二頭目のロックエイプがユスーチの右腕を捻りはじめた。
「うわぁぁぁっ!!」
ユスーチの右腕からはボキボキと音が鳴った。
「ああぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ブスゴリラ!その手をはなせぇ!!」
ドーマがライフルでロックエイプの腕を撃つと、ユスーチの腕をはなし、三頭目のロックエイプと共に逃げ出した。
「待てゴラァッ!!」
シェウトは二頭のロックエイプを追いかけた。
「おいシェウト!一人じゃ無理だ!!」
「ふ、アラン…貴様にはソイツを譲ってやる。ありがたく思え。」
『バァウアァァァァァァッ!!』
一頭目のロックエイプは大声を出し、両腕で胸を叩いた。
「くっ、たった一頭だ、早く倒して援護に向かおう。」
レオは剣を構えた。
「そうだな。よし、ベリルとユスーチは下がってろ。ここはアタシらが…」
ドーマはライフルをリロードして構えた。
「いくぞ!!!」
アランが両腕に銅の拳を使うと、レオと共にロックエイプに飛び掛かった。
「”回転斬り”!はぁぁぁっ!!」
レオの刃がロックエイプの横腹を二回斬った。
「ぞりゃぁぁっ!!」
アランの重たい拳がロックエイプの腹部を打った。
『バァァァァァッ!!』
「ドーマ、特技の集中をなるべく多く使って攻撃力と命中率を高めて!」
レオが大声で言うと、ロックエイプはレオ目掛けて殴りかかった。
「レオどいてろ!!」
アランがロックエイプの拳を殴るとロックエイプはバランスを崩すようにして怯んだ。
「OK!時間稼ぎは頼んだよ!」
ドーマはライフルを構え、目を閉じ、両脚を開いて、弓を射るかのような姿勢になった。
「ユスーチ!君はベリルを連れて逃げるんだ!」
レオは大きな声で言いながらロックエイプの脛を斬った。
「わ、わかった。…生きて帰ってこいよ。」
「ああ。」
ユスーチは骨の折れた右腕を揺らしながら、気絶しているベリルを担いで走り出した。
「くらえぇぇぇっ!!」
アランは地面を強く蹴って跳び、ロックエイプの左肩を殴った。
『バウバァァァッ!!』
「…!まずい、ドーマ!!」
その時、ロックエイプがドラミングで威嚇し、大きな岩を持ち上げた。
「………おい!!聞こえないのか!!死ぬぞドーマ!!」
アランが叫ぶと、ドーマはゆっくり目を開け、ライフルを構えた。
「レオ、アラン……………!下がってろ!」
ドーマはロックエイプの頭部に銃口を向け、トリガーを引いた。周辺に大きな銃声が響いた。ロックエイプは大きな音をたてて倒れた。弾は脳天を綺麗に貫いていた。
「ふぅ…」
ドーマはゆっくり息をはいた。
「やった…やった!ドーマ、やっぱりすごいよ!さすが弓道部だよ!」
「お、おぉぅ…」
ドーマの頬が少し赤くなった。
「お前ら、まだ終わってないぞ。」
「そうだね、シェウトの所へ行こう!」
三人はゴツゴツした道を走り出した。
「シェウトーッ!!僕たちも一緒…に………」
その時、三人はあるものを目にした。
「シェウト……嘘だろ………」
シェウトが一頭のロックエイプの頭に腰をかけていた。もう一頭のロックエイプの顔面は原型を止めていない。
「……来たか…待ちくたびれたぞ…」
「お前…一人で………なっ!?」
シェウトの背後には、首から上がないユスーチと、岩に潰されたベリルが倒れていた。
「…ふ、見ちゃった、か……お前らにはあまり見せたくなかったんだが………やらかしちまったよ。」
「レオさーーん!!」
背後からネネカが走ってきた。さっきまで白かったローブは血の色に染まっている。
「ごめんなさい……コラーグさんは………ダメでした……!!…………ユスーチさん、ベリルさん……」
ネネカが涙を流したと同時に曇った空から雨が降り始めた。
「…守れなかった……ふ、ダセェよな…俺。アイツら、最後まで逃げなかったぜ…」
「てめぇ!!何してんだよ!!なに三人も死人だしてんだよ!!おい!!!」
アランがシェウトの胸倉を掴んだ。
「わかってるさ、仲間が無様に死ぬ姿を見た俺も、人殺しと同じだってことを…」
シェウトはアランの手をはらい、レオの胸に握り拳を押しあてた。
「受け取れ、ゴリラが落とした秘宝だ。」
シェウトの手の中にはガイアの指輪が握られていた。レオが秘宝を受け取ると、シェウトは歩き始めた。
「じゃあな…俺は一人で生きていく。こんな姿、誰にも見せらんねぇからな…」
シェウトは右腕を上げ、四人の視線から姿を消した。




