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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
20/206

ざわめく森

「ほう、イルアの森に?」

「はい。たった今、三人の若者が。」


 ギルドの小屋の中で、エルドとパーニズ城の一般兵が話している。


「それで、その一人の若者を襲った魔物とは?」


 エルドがワイングラスを拭きながら言った。


「はい。おそらく、エンペラーグリズリーかと。」


 兵士の焦った声でランプの火が揺れる。


「そうですか。親熊の場合レベル50ほどで倒せますが、最近は子連れが多いですから厄介ですよ。」


 エルドは自分の白いひげをさわりながら、呆れたような口調で言った。


「それでしたら、レイドクエストが良いかと。」


 兵士がそう言うと、エルドはワイングラスを拭く手を止め、少し間をおいて口を開いた。


「…ならば、パーニズギルダーズから何名かイルアへ調査に行かせるのはどうでしょう。こういうのに私共のギルドは黙りませんからねぇ。それで、もしイルアの森が大変なことになってましたら、クエストを出すことにしましょう。」


 すると、シルバとココがエルドと兵士の話に入ってきた。


「それなら、俺が行こうか?」

「オイラも行くぞ!」


 シルバとココがそう言うと、エルドは兵士に「ほらね。」と言いながら、ワイングラスを棚に置いた。


「シルバ。」


 マリスがシルバのほうへ寄ってきた。


「……………気を付けて。」

「大丈夫、兄を見つけるまで俺は死なないさ…………じゃ、行って来る。」


 シルバはマリスにそう言うと、ココと共にイルアへ向かった。




「バーノン……………………」


 レオ、ネネカ、アラン、ドーマ、トキアの五人は、教会の椅子に座って下を見ている。


「ごめん、僕には何も出来なかった………………」


 レオは小さい声で言った。


「…お前のせいじゃないさ。…………………はぁ…」


 ドーマはレオの肩に手をのせて言った。


「まさか、あんな事になるとは、思いもしなかったよ……………………」


 トキアは背中を丸めて言った。




 その頃、ペガサスに乗ったシルバとココはイルアの森に到着していた。


「さてと、どこだ?例の熊ちゃんは。」


 シルバがそう言うと、ココは奥のほうを見つめた。


「あ!シルバ、あそこ!」

「ん?」


 シルバはココの見ている方を見た。すると、そこにはエンペラーグリズリーの死体がころがっていた。シルバとココは死体の方へ向かった。


「どういう事だ?死体が無ければ、熊の内臓は綺麗にえぐり取られている。…ん?」


 シルバは森のもっと奥を見つめた。


「おっと、予想通りの光景だな。」


 シルバの見ている先には、エンペラーグリズリーの子どもが群れとなって集まっている。


「なぁシルバ、今は戻った方がいいんじゃないのか?」


 ココが言うと、二人はペガサスに乗ってパーニズへと飛んだ。


「ココ、なんで熊が集まっているか、分かるよな。」


 シルバは下を見ながら言った。


「おぅ、アイツらは自分の親を殺したヤツを探しているのだろう。……かなり怒っていた。……でも、あのデカブツ、誰が……」

「……そうだな。」


 シルバとココは急いでパーニズへ向かった。




 数分してシルバとココが帰ると、すぐにエルドと兵士に知らせた。


「何、エンペラーグリズリーの子供が!?……やはり、そうであったか。」


 兵士が一滴の汗を垂らした。


「そうですか。では兵士さん、酒場へこのクエストを出しに行ってください。」


 エルドが皿を拭きながら落ち着いた口調で言った。


「了解です。」


 兵士が扉を開くと、エルドが兵士に声をかけた。


「あ、それから、放送で言ってほしいことがあります。……………」




 そしてレオ達は、教会で何十分も座っていた。


「………いったい、なんなんだよ…この世界は……」


 アランが息をつまらせながら口を開いた。


「これでもう五人は死んでいる……魔王を倒すまでに全滅しないだろうか………」


 トキアが頭を両手でかかえて言った。


「でも、ここで諦めちゃだめだ。僕達だけでも現実の世界に帰らなきゃ。」


 レオが少しだけ頭をあげ、奥にたつ大きな十字架を見つめた。ネネカは涙でぬれた瞳を輝かせながら、ただただ黙っている。


『皆に報告する。』


 酒場からの放送がかかった。


『これより、緊急クエストを出す。現在、イルアの森に多くの魔物が出現している。早いうちに、この魔物の全滅を期待する。そして、今パーニズにいる人間という種族の皆はパーニズ城の地下室へ集まるように。………以上。』


 放送が終わった。レオ達はパーニズ城の地下室へ向かった。




「何だ?こんな時に……」


 五人が地下室に入ると、生徒のほとんどが椅子に座っていた。薄暗い部屋の壁には、松明が辺りを照らすようにかけてある。


「来たか、待っていたぞ。」


 部屋の奥には、エレナスが立っている。


「えっと、兵長……これは……」


 レオが辺りを見回しながら言った。


「あぁ。今から、お前たちに大きな仕事を与えてやる。この緊急クエストに誰が出るかを決めてもらうぞ。司会は……お前だ。」


 エレナスはレオに指をさした。


「ぼ、僕が?」

「出来るよな?じゃ、頼んだぞ。」


 エレナスはそう言うと、レオの肩に手をのせ、部屋を出た。


「……何だったんだ?それよりレオ、お前出来るのか?」


 ドーマがレオのほうを見て言った。


「……やるよ。僕が皆をまとめるよ。」

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