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ティア・イリュージョン  作者: おおまめ だいず
秘宝編
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介入

 車の自動運転が社会で当たり前になってから約80年、人々は更なる技術を求め、技術と共に進化し続けていった。ロボットとの共存、空を飛ぶ車、住めるようになった月へと繋がるエレベーター式ロケット。そして、これらと肩を並べるように話題となったのが、ゲームの進化だ。自らがゲームの世界に入りプレイするのは、革命と言っても過言ではなかった。時代は第7次産業革命を迎えたのだ。しかし、進化したのは人間だけではないということを、人類はまだ知らなかった。




 彼の名はレオ・ディグランス・ストレンジャー、中学3年生だ。皆からはレオと呼ばれている。

彼らは、ある少しの出来事で、最悪な出来事にあってしまった。…そう、この事がなければ…。この事さえ無ければ…。




 それは彼らの中学生としての生活の最後と言える、卒業式の日のことだった。式も終わり、体育館には3年生とその親、数人の教師が残っていた。いつもより綺麗な制服に身を包んだ生徒達は、記念撮影の準備まで友達と話している。


「なあレオ、お前さぁ、ここ卒業したらどこ(こう)に行くんだったけ?」


 レオの幼馴染みの友達、ガルア・ラウン(アラン)が話してきた。彼はボクシングを独学するほど運動が得意で、体育の成績は学年トップになった事も少なくない。


「ん〜、ナイショ…かな。」

「ふ〜ん…あっ!!もしかしてお前、例の彼女と同じにする気だなぁ?」


 アランはレオの腹を、肘で軽く突いた。


「そんなことないよ。っていうか、彼女なんてまだいないし。」


 そんな話をしていると、少し遠くで2人の女子生徒がそれを盗み聞きしていた。


「ねぇネネカ、せっかくの卒業式なんだから、レオに告っちゃいなよ。」


 少し気の強い女、マァド・リリーマ(ドーマ)がクナシア・ネネカ(ネネカ)に言った。弓道部だったドーマは面倒見が良く、内気なネネカとはよく絡んでいた。


「そ、そそそそそそそそんなぁぁぁ!!」


 ネネカが顔を赤くして言った。レオとネネカは保育園でのある出来事のせいか、両思いなどという噂が学校中に広まっている。

 

「お〜い、お前らぁ。卒業写真撮る準備できたからステージに並べよ〜。」


 レオのクラス担任のデルト先生だ。英語担当の先生で、馴染みやすい人気の教師だった。生徒がステージに並ぶと、デルト先生はカメラを構えた。


「はい、笑って~。」


 その声の後に、カメラの音が体育館中に響いた。写真を撮り終え、デルト先生が隅に行くと、校長先生が、何かを隠すように生徒達の前に現れた。


「え~、コホン、3年生のみんな、卒業おめでとう。実は~、君たちにプレゼントがあってな。」


 3年生の皆が小さな声で隣の人と喋り始めた。とても楽しみにしているような顔だ。


「え~、少し静かに、私は、君たちがこの中学校に来る前から、一生懸命作ったプレゼントがあるんだよ、どうか受け取ってほしい。」


 そう言って、校長先生が、パソコンを開いた。


「どうせ、スクリーンに映しだして写真や映像でも流すんだろ。」


 アランだけは表情が冷めていた。しかし、彼がそう言った次の瞬間、3年生の皆はパソコンの画面から放たれた強い光に吸い込まれていった。生徒達は思わず目を閉じた。




 目を開けると、周囲には草原が広がっていた。目を凝らすと、1人1人の頭上にゲームのステータスのようなものが映し出される。そこはロールプレイングゲームの世界だったのだ。


『どうかね、これこそ、私が作った新体感型ゲームの世界じゃ。』


 校長の声が校内放送のように聞こえてきた。


「すげぇ、ここ、本当にゲームの世界なのか?」

「こんなの作るなんて校長すごい!!」


『すごいだろう?じゃあ、1時間の間、この世界で楽しんでくれたまえ。』


「なんかよくわかんねぇけど、ありがとう!校長先生!!」


 その時だった。何か邪悪な気配が生徒達を包み込んだ。彼らは、その不気味な感覚にさえ胸を躍らせていた。


「な、なんだ?あ、わかった!校長先生、これも先生がプログラムしたやつですよね?」

「やっぱ校長すげぇわ。」

「私、この学校でよかった!」


『…いや、…違う!こんなもの、知らない!!』

「え?」


 その時、邪悪な声がゲームの世界に響いた。




“貴様らか。ライトニングでもなく、ダークネスでもない。新しい種族…人間とやらは。”




「先生!どういうことだよ!!何で先生が知らないんだよ!!」


『…ちょっと待っておくれ。嘘だろ…嘘だろ…』


 そう言って校長先生は、脂汗を流しながらパソコンの画面を見つめ、プログラムを確認し始めた。


『こ、これは…』


「何です?先生!何かあったんですか!?」


『みんな、落ち着いて聞いてくれっ!このプログラムは、私が作ったものではない!』


「何だって!?」

「企画外ってことか!?」


 生徒はパニック状態になりはじめた。


『ああ…調べたところ、君達はこのゲームの魔王を倒さないと、元の世界には戻れない!!』


「それじゃあ、しばらくの間っ、家に帰れないの!?」

「ふ〜ん、倒せば良いのか…やってやるぜ!!」


 アランだけは何かとワクワクしているようだ。


『ただ、それだけじゃない!!…この世界で死んでしまったら、その人は本当に帰ってこられなくなる!!』


「おいっ、嘘だろ!?ゲームなら命は無限なんじゃぁ!?」






“さぁ、我らダークネスへの挑戦を…待っているぞ。精々この世界の歴史に呑まれない事だな。”






 闇の気配が消えた。周りには、帰りたいと言って泣く生徒がたくさんいる。するとアランがレオに言った。


「なあ、レオ、どうするよ?」

「そんなの、決まってるよ。…魔王を倒すんだ!皆の力を合わせて!!」


 これが、彼らの物語の始まりとなった。

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